2万円の昼ごはん

レストラン列車を企画して、1万円も2万円もするような食事を提供しているいすみ鉄道ですが、皆様ご存知のようにこれはすべて私が企画しております。

 

いすみ鉄道沿線の人たちは、伊勢海老などは特別の食べ物ではありませんから、1万円も2万円も出して伊勢海老を食べる人はいません。そりゃそうですよね。特別なものではないけれど、それなりの値段はしますから、伊勢海老にお金を出すぐらいなら他のものを食べましょうということになりますし、なにせ、魚も肉も野菜も米も、安くておいしいものがいっぱいある地域ですから、もっと他のものにお金を出しましょうということになります。ということは、東京からわざわざやってくるお客様の顧客心理というものが理解できないんですね。

 

こういう高額商品を企画するような人は、大きな会社だとサラリーマンの皆さんです。

そのサラリーマンの皆さんは、ふだん新橋のガード下で発泡酒を飲んでいるような生活をしていますから、そういう人たちも、お客様がなぜ1万円も2万円も出しておいしいお料理を召し上がるのかがわかりません。同じように、顧客心理がわからないのです。

 

でも、私は、その商品を買っていただくためにはお客様が何を望んで、何を考えて、何を根拠に意思決定して、「よし、買おう!」と思うのかがとても気になっていて、つまりは顧客心理をきちんと理解しないとお客様が満足するような商品なんてできるわけありませんから、物本来の価値にどうやって付加価値を付けるかということを考えるためには、自分もそういう体験をしてみようと常日頃から考えているのであります。

 

かく言う私もふだんは焼酎をチビチビやりながら閉店間際のスーパーで買ってきた半額の刺身を食べるのが至福の時間という生活を送っているのですが、時には、本当の価値のものをいただいてみたいと考えておりまして、清水の舞台ならぬ東尋坊の断崖絶壁から飛び降りる覚悟で、本日は2万円のお昼ご飯を頂いてみました。

 

私の仲良しのお友達で温泉研究家の石井宏子さんが、この間、 「NIKKEI STYLE」というコラム で、「人生観が変わりそう」なほどおいしいという越前蟹の食レポを書かれていまして、「鳥塚さん、死ぬまでに一度はこういうものを食べなくちゃ。」とメッセージをくれたものですから、それ以来頭の中から越前蟹のことが離れなくなりまして、この冬は悶々とした日々を過ごしておりましたが、なんだかんだで3月も下旬ですから、「ああ、今年のシーズンも終わってしまう。早くしないと。来シーズンまで生きてるかどうかも分からないし。」と思って、意を決しで出かけてきたのです。

 

どこへって、もちろん越前ですよ。越前。

えちぜん鉄道に乗ってやってきました三国港(みくにみなと)。

 

 

三国港駅に到着すると、駅のすぐ隣にお店が見えます。

 

いかにもの越前蟹のお店です。

 

お店の中は意外と簡素な造りで、お席もカウンター席。

 

メニューを開くと、さすが、良いお値段です。

 

 

 

お一人様蟹満足フルコース というのがありましたので、右端の一番安いコースにしました。

それでも19500円。

いくら東尋坊の断崖絶壁から飛び降りる覚悟とはいえ、このあたりが限界でしょう。

 

 

 

まずはスターター。

お造りです。

 

わが家の家訓は「午前中はお酒を飲むな。」でありますが、本日は少しだけフライングです。

 

ももえ蟹、

じゃなくて、せいこ蟹、の甲羅盛り。

ももえもせいこも、どちらも好きですが、ここはひとつ、せいこで行きましょう。

 

せいこちゃんでもう一つ。

せいこ蟹のグラタンです。これはコース外の別オーダーです。

 

 

さてさて、蟹刺しの登場。

いやいや、これはこれは。

 

 

つづいて蟹の甲羅焼き。

レモンを絞っていただきます。

ここで、熱燗を注文。

 

 

来ましたよ。

 

アッチッチ。

 

甲羅に熱燗を入れて、綺麗にいただきました。

 

と、ここで、いよいよ。

 

 

ジャ~ン!

主役の登場です。

 

 

ターヘルアナトミア。

味噌も内子もぎっしりです。

いやいや、これだけ大きいと、食べているうちにだんだん疲れてくるものです。

 

 

でも、ハイ、完食。

蟹さん、ありがとうございました。

 

 

最後は蟹ごはんで締め。

 

いやはや、おいしかったなあ。

 

 

ということでBILL。

 

トータルでこのお値段でした。

 

えっ? 誰と行ったかって?

1人に決まってるじゃないですか。

安月給でも一応社長ですから、誰かと行ったら私が払わなければなりませんから。

こういうおいしいものは、1人でいただくのです。

 

でもね、研究開発費で落とすようなことはできませんよ。

そんな余裕がある会社ではありませんから。

まあ、会社に余裕があるとか無いとかの問題ではなくて、こういう体験というのは自分で払ってこそなんです。

 

経費で落とそうとか、人に御馳走になっているようではダメなんです。

 

自分で払ってみてこそ、Value for money. 、払うだけの価値があるか、ということがわかるのです。

 

今日は東京では雪が降ったようですが、越前は雨。

でも、私のお財布の中はかなり寒くなりました。

 

Value for Money.

 

その点では素晴らしいお金の使い方でしたよ。

 

明日からしばらくはカツカツ生活となりますけど。