この土日はさんざんなお天気でしたね。
都内でも桜が満開で、お花見にはもってこいの週末だったんですが、この悪天候じゃあどうしょうもありませんね。
いすみ鉄道のような日帰り観光地にとって最大の弱点というのはお天気なんです。
つまり、雨が降ったらお客様が来ない。
北海道や沖縄のような観光地なら、大雪だろうが台風だろうが、とりあえず飛行場へ行って、飛行機が飛ぶ限りは何とか行こうとしますが、日帰り観光地は雨が降ったら客足がぐっと鈍ります。
その理由は、「予約が要らないから。」
北海道や沖縄のような遠方であれば予約してますし、飛行機代もホテル代もツアー代金も支払済みですから、皆さん飛行機が飛ぶ限り、あるいは新幹線が走る限りは何とか行こうとしますからね。
だから、私がいすみ鉄道でやっていることの一つが予約を受けて商品を提供するサービス。
例えば、レストラン列車もそうですが、ご予約いただいて、お支払いいただいていれば、雨だろうがなんだろうが、お客様は必ずいらしていただけます。この季節の団体ツアーなどもそうですね。観光バスのお客様は雨でも必ずいらしていただけます。
昨日も今日も、レストランのお客様も団体バスツアーのお客様も皆さんちゃんといらしていただけました。
▲本日は私の地元の板橋区の皆様方がバスツアーでご乗車いただきました。
雨の中お越しいただきましてありがとうございました。
雨の日でもお客様にいらしていただくためのもう一つの工夫として、本日の表題の「雨の日スペシャル」があります。
これは、キハの急行列車に取り付けているヘッドマークが、雨の日にはいつもと違うものを取り付けて走るという作戦です。
土休日に運転しているキハの急行列車のヘッドマークは、通常、
土曜日:夷隅
日曜日:そと房
祝日および平日の臨時運転:ヘッドマークなし
という法則で取り付けて走っていますが、土日に雨が降ると、いつもと違うヘッドマークを取り付けて運転するのです。
これは、私が考え出した作戦で、そうすると、朝起きて雨が降っていると、鉄道ファンの皆さんは、「よし、いすみへ行くぞ。」という気持ちになるのです。何しろ、いつもと違う列車になるわけですから、いつもと違う写真が撮れるからです。
これが国鉄形の強みで、何しろ全国区ですから、ヘッドマークを取り付けただけで、すでに廃止されて久しい国鉄時代の急行列車が全国区でよみがえるという仕組みなのです。
そして、社長である私が運転士やアテンダントの乗務員スタッフに話しているのは、「雨の日は自分の好きなヘッドマークを付けて走って良いですよ。」ということだけ。あとは、その日の担当乗務員が、自分が乗務する列車に好きなヘッドマークを取り付けて走るというのがいすみ鉄道の「雨の日スペシャル」なのです。
乗務員によってはブログやFacebook、Twitterなどをやっている人もいますので、自分のお気に入りのヘッドマークを取り付けて、パチリと写真を撮って、「今日はこれで行きます。」と情報発信する。
そうすると、その乗務員にもフォロワーがいて、「おお、それじゃあ今から行きます。」となる。
そして、東京から1時間圏内のいすみ鉄道では、「今から行きます。」と言って、すぐに来れるわけですから、雨の日は駅や沿線にカメラを持ったファンがたくさん集まるという仕組みなんです。
おそらく大手の鉄道会社で、乗務員が「今日はこれで行きます。」などと言ってネットで発信したら首になるかもしれませんが、いすみ鉄道では社長である私が「やれ」と言っているわけですからね。
本日はこちらでした。
木更津出身の運転士さんとしてはやっぱり「うち房」でしょう。
アテンダントは四国大好き人間ですしね。
▲雨の中、桜の下を走る急行「うち房」
▲こちらは昨日。急行「水郷」。
毎日いすみ鉄道を記録していただいている上総中野の渡辺新悟さんの作品です。
▲こちらは雨の日の急行「そとうみ」。昭和でしょう。
そういう仕掛けや仕組みを作ることで、いすみ鉄道は雨が降ってもこれだけたくさんのお客様にお越しいただいているのです。
地域の皆様方の中には、いすみ鉄道がこれだけ賑わうのを「奇跡だ。」と言われる方もいらっしゃいますが、決して奇跡でも偶然でもありませんよ。きちんとした戦略に基づいて行っているわけです。
なぜならば、観光というのは「遊び」ではなくて「産業」でありますから、きちんとした戦略でやらなければならないからで、片手間やついでにやるようなものではないのです。なめてはいけないのですよ。
でもね、雨の日だけじゃないんですよ。
お天気の日だって、ホラ!
この日は土曜日で「夷隅」の日でしたが、同じ「夷隅」でも2種類あるのです。
そして、どちらを取り付けて走るかは、やはりその日の乗務員に任せているのです。
(上の小型のヘッドマークは昭和45年以降に見られたタイプ。下の羽根つき大型マークは昭和45年以前のもの。同じヘッドマークでも年代によってデザインが違っていたということをきちんと再現しております。)
いすみ鉄道の乗務員は、自分の運転する列車に自分が好きなヘッドマークを取り付けて走るのです。
それを、沿線で皆様がカメラを構えて撮影してくれるわけですから、達成感あるでしょうし、運転士冥利に尽きるのではないでしょうか。
だから、きちんとした仕事をしてくれるんだと私は考えています。
そして、そういう場を作る仕組みを考えるのが社長である私の仕事なのです。
だって、私が運転するわけでも乗務するわけでもありませんからね。
運転士やアテンダントなどカスタマーフロントのスタッフがだいぶ育ってきてくれて、私が考えていることをきちんと理解して、きちんと実行してくれるようになりました。この春はそのことを肌感覚として感じています。
だから私は本当にうれしく思っているのです。
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