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いすみ鉄道を応援していただいている船橋の川村高志さんのFacebookにこんな写真が掲載されていました。
昭和40年代の御宿駅です。
入ってくる列車は上りの「急行」でしょうか。
海水浴シーズンの臨時急行だと思います。
これぞ房総の遜色急行。
いろいろな車両を寄せ集めて、とにかく夏の海水浴客をさばかなければなりませんでしたから、前の2両は急行形ですが、その後に連なるのは車両規格の小さいキハ17が数両と、その後にはキハ35系ですね。
キハ17は各駅停車用でキハ35は通勤用。
ひどい編成ですね。
なぜひどいかというと、これで急行料金を取っていたから。
国鉄の書き入れ時ですからね。
1両目はキハ28ですが、2両目はキハ58。
勾配線区用の2エンジン車両のキハ58は、もともと房総半島には縁がない形式ですが、夏の海水浴臨時列車用にどこからか集められたんでしょうね。
いすみ鉄道で今活躍しているキハ28-2346も、昭和39年に房総で活躍した経歴がありますから、まさにこの時代から今日まで頑張ってくれている車両ということになります。
さて、皆様方にお考えいただきたいのですが、海水浴の帰りに乗車券のほかに急行券を買って、御宿駅のホームで上り列車を待っていたら、こんな列車が入ってきました。
皆さんならどの車両に乗りますか?
私はこの写真の頃は小学生でしたが、確かにこういう列車が走っていたのは覚えています。
その時、入ってきた列車を見て、迷わず乗車したのは急行形のキハ28です。
間違ってもキハ17やキハ35には乗りたくなかった。
でも、今、駅で待っていてこの列車が入ってきたとしたら、迷わずキハ17に乗車します。
これが時代とともに私の中で変化した価値観です。
つまり、モノの価値というのは、個人個人で違うのはもちろんですが、同じ人間でも時代とともに変わるものなのです。
ローカル線の価値というのもまさしく同じで、30年、40年前は、赤字を垂れ流す「劣等生」だったのが、今では地域の広告塔になっている。これは、日本人が変わったということで、当時は右肩上がりの時代でしたから、新しくて速くて便利で快適なものが最高とされていましたが、世の中が行きつくところまで行きついた感じがある現在では、古くて遅くて不便で大変な思いをするようなローカル線が、その価値をご理解いただける存在になっている。つまり、国民の文化度が成熟してきたと私は考えています。
私たちの世代よりも上の年代の人たちは、旅行と言えば有名な観光地を巡ることであって、一生懸命お金をためて、できるだけ遠くへ出かけ、できるだけ高級なホテルに泊まって、できるだけ上等な料理を食べることが旅行でした。
そういう時代にはできるだけ新しくて、速くて、快適な列車が最高だったわけですが、今の若い人たちの旅行というのは、遠くへ行くことでもなければ、豪華なホテルに泊まることでもなく、上等な料理を食べることでもありません。
今の若い人たちの旅行は、非日常体験、脱日常体験ができれば、それが旅行ですから、ほんのちょっとしたところにも楽しみが見つけられる。
私たちのようなバブル経験世代から比べたら、はるかに精神的に優れた世代だと私は考えております。
だから、日帰りできる房総半島を走るオンボロのディーゼルカーの中で、駅弁を食べるのが「旅」であり、そういう人たちから見たら、ローカル線は最高の観光地だということになるのだと思います。
私も、今なら絶対にキハ17に乗る。
旧型客車に乗るし、窓が開く急行電車に乗る。
でもね、もうできないんですよ。
だってみんな無くなっちゃったから。
でも、私より10歳ぐらい若い人たちにしてみたら、キハ52やキハ28は、私の世代のキハ17であり、旧型客車であり、10系寝台車なんだろうなあ。
いすみ鉄道はモノの価値がわかる人たちにとって見たら、きっと、最高な場所なのです。
その証拠に、大晦日から元旦にかけての夜行初詣列車ですが、ボチボチ埋まってきています。
プランによってはすでに満席をいただいております。
モノの価値がわかる皆様。
年末年始もいすみ鉄道でお待ちしております。
ちなみに、撮影された川村さんによると、前の2両のキハ28・58は「指定席」だったそうですから、国鉄もちゃんと考えていたということになりますね。
いすみ鉄道でもキハ28は指定席扱いですから、そんなところも「国鉄時代」なのであります。
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