デコイチという国民的蒸気機関車があります。
戦前の国鉄を代表とする貨物用機関車で、1115両も作られました。
今は500番台とか1000番台とか、いろいろありますから、例えばEF65-510といっても、通算で510両目というわけではありませんが、D51の場合は、一部欠番があるものの510番と言ったら510両目ということですから、1100両以上作られたということは、いかに大所帯だったかということがわかるというものです。
そんな大所帯のD51ですが、初期型は当時流行っていた半流線型のナメクジと呼ばれるスタイルで、その後、大多数を占めるのが標準型。そして物資が不足する時代に作られたのが戦時型と、いろいろな呼ばれ方をしています。
途中でいろいろ設計変更されたわけですが、その中で大多数を占めるから、たぶんあとから標準型と呼ばれることになったと思うのですが、一度標準型と呼ばれてしまうと、半流のナメクジやカマボコドームの戦時型は、なんとなく異端のような感じを受けるのは私だけでしょうか。
昭和の電車にも、例えば20メートル4扉車が通勤形の標準スタイルで、18メートル3扉車は私鉄標準スタイルなどと呼ばれています。
そう言われてみると、昭和の電車は確かにそういう設計の車両が多かったのですが、標準型という呼び方をしてしまうと、それ以外の形が何だか異端のように私は感じてしまうのです。
子供の頃、よくテレビなどで、「夫婦に子供二人の標準的家庭」というような表現がありました。
イラストなどで示される場合、お父さんとお母さん、そして男の子と女の子が描かれていることが多かったのですが、それが標準的家庭と言われていました。
私の家は父母と妹でしたから、まさしくこの標準的家庭でしたが、クラスの中には一人っ子もいれば3人兄弟もいるし、片親の家庭もあるわけで、そんな中で自分のところが標準的家庭だとすると、そうでない家は異端というか、少し違っていると思えてしまうわけです。
子供は正直ですから、自分の家が当たり前で、そうでない家は「標準ではない」と思っていた時期もあって、片親だったり、一人っ子だったりすると、「可愛そうだね。」などと感じる友達から見たらいやな奴だったと思います。
英語を勉強するようになると、標準というのは「Standard」であったり「Basic」であったりするわけで、ということは一番下に位置する基本的な部分という意味もありますから、そうなってくると自分の家族が標準的ということは、Basicということですから、今度は一人っ子や、3人兄弟、片親の家というのが、「自分にはないもの」という、逆にうらやましい気持ちになりまして、50を過ぎて気が付いてみれば、我が家は子供5人に恵まれて、ネコ7匹が同居する「標準的家庭」になっているのでした。
今夜は私は何が言いたいのかというと、「標準的」という言葉は、実は大変危険であって、物事を決めつけて良し悪しを判断してしまうことになるのではないかということで、つまり、標準的家庭ということは「普通の家庭」ということでありますが、それは何が普通かというと、外から見てどうのこうのと判断される物差しの話ではなくて、自分の内面で普通であれば、それは人から見たらどうであれ、その人にとって見れば大切であり、当たり前でありますから、気にすることはないのではないかと考えるのです。
例えば、普通に考えれば、家の中お母さんに自治権を握られて、いつもビクビクしているお父さんは普通ではないかもしれませんが、でもそれでその夫婦が仲良く暮らしているとすれば、それがその家にとっての普通の夫婦であり、標準的家庭であると私は考えるわけです。
私はいろいろなところへ出張に出かけます。
たいていはビジネスホテルにちょっと毛が生えた程度のホテルに泊まります。
ネット環境があって、部屋にシャワートイレがあって、朝ご飯が食べられれば、私はそれで満足です。
昔は高級ホテルを選んで泊まっていましたが、例えば30年ぐらい前に高級ホテルと呼ばれていたところは、今では結構年季が入って来ていて、あこがれの対象でもなくなりましたし、50も半ばを過ぎると、そろそろ質素な生活に戻さないと、リタイア後の人生に響きますから、特別にお安く泊まれるチャンスでもない限りは、1泊2万円以上する部屋は選択肢には入っておりません。
先日も、あるホテルに泊まったのですが、シングルルームの料金でツインのお部屋に泊めていただきました。
いわゆるルームアップグレードというやつで、ビジネス客が多い時期などではツインの部屋が埋まらないのでしょう。有名な旅行代理店のサイトを利用するなど、予約の入れ方によっては、時々そういうこともあるのです。
部屋に入ってみて気が付いたのですが、ツインルームというのは、バスルームに置いてある歯ブラシなどのキットが2人分あるのは当然として、剃刀は1個、ヘアバントやシャワーキャップは1個となっているんですね。考えてみたら、たいていのホテルはそうなっている。つまり、ツインルームというのは、男女一組で同じ部屋に宿泊するのがある意味で「標準」になっているんですね。
別に性的思考の話をしているのではありませんから誤解の無いように。(笑)
1泊1万円前後のホテルって、場所にもよりますが、結構ビジネスのお客さんが泊まっていると思うんです。
私も若いころに経験がありますが、例えばシングルで7000円、ツインで10000円という価格構成だとすると、若いビジネスマンの場合、会社から2人一部屋にしなさいと言われることもあるわけで、同僚と同じ部屋に泊まったりしますから、必ずしも同じ部屋で男女というわけではないと思うんですが、一般的にはツインルームは男女で泊まるものという設定になっている。
これがもう少し高級なホテルになって、そうですねえ、1泊2万円以上の部屋になると、ツインルームでも、男性用と女性用のキットが2組ずつ置いてあって、男女、男男、女女という組み合わせに対応できるようになっている。値段の高いホテルはコストの弾力性があるから、そのように余分に備えることができるのでしょうが、そういう高級なホテルの場合はツインルームはたいてい男女で泊まるでしょうから、あまり意味がないような気もするのです。
(もちろん追加を頼めば大概のところでは用意してくれますけどね。)
私は自分でホテルの予約を入れる場合、たいていはダブルの部屋かセミダブルの部屋を予約することにしています。その理由は、万一現地で行きづりの関係になる可能性に期待するわけでもなく、スリムな体型だからダブルベッドが欲しいわけでもありません。
私は寝るとき枕を2つ使いたいのですが、安いホテルの場合はシングルでは枕が一つしかないからなんです。
外国のホテルの場合はたいていシングルでも枕は2つありますし、ダブルベッドの部屋に泊まると枕だけで4つあるのが当たり前なのですが、日本ではたいていシングルルームに枕はひとつ。これも日本的標準なのでしょうか。
そう考えるとどうもしっくりこないんですね。
でもって、そのお部屋にサービスで備え付けてあるキットの話なんですが、男性の皆様はお分かりいただけると思いますが、髭剃り用の剃刀ってたいていクリームと一緒になっていますよね。
この間泊まったホテルで髭を剃ろうとして気づいたんです。
実は剃刀と一緒になっているクリームが、「ひげそりあと用」だったんです。
髭剃りって、髭を剃る時にクリームを塗らないと、ジョリジョリして引っかかって痛くなるということは女性の皆様でも想像できると思います。だからふつうは「ひげそりまえ」にクリームを使うと思うのですが、同梱のクリームが「ひげそりあと」というのはどういうことなのでしょうか。
この剃刀を作った会社としては標準的に「ひげそりまえ」よりも「ひげそりあと」にクリームが必要と考えているのでしょうか。
それとも、同梱のクリームが「まえ」と「あと」の2種類あって、このホテルがお客様用に仕入れたものが「あと」用ということなのでしょうか。
こういうことも私にとっては不思議な世界なんです。
だって、ひげそりまえにクリームは必要ないのでしょうか。
クリームなしでどうやって髭を剃れというのでしょうか。
もちろんコストの関係もあるでしょうが、どちらか一つだけつけるとすれば、やっぱりひげそり前でしょう。
そのひげそり前のクリームがないということは、どうしろというのでしょうか。
石鹸で泡立ててクリーム代わりにしろということでしょうか。
石鹸などで代用したら、私の場合、肌荒れを起こしそうです。
そうしたらこの「ひげそりあと用」のクリームを使えということなのでしょうか。
だったら最初からひげそりまえ用のクリームを同封しておけば、肌荒れも起きずに良いと思いませんか。
おそらくいろいろなところで「標準」というのがあると思うのですが、私には理解できない標準ばかりで、いったい世の中ってどうなっているのでしょうか、と考えるのであります。
まあ、くだらない話ですが、時にはこういうくだらないことを考えるのも良いのではということで、世の中の「当り前」に疑問を持ってみることも、発想の転換にはなるのではないかと考えるのであります。
長々と失礼いたしました。
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