計画から50年近くたってやっとできるわけですから、そりゃあ地域にとっては悲願でしょうね。
そもそも、北海道と本州をトンネルで結びたいというのは、そこに横たわる津軽海峡というのがとても大きな存在で、元をたどれば昭和29年(1954年)に台風で青函連絡船「洞爺丸」が沈没し、1000人以上の人命が失われるという悲劇に端を発していると考えられます。
つまり、海を船で渡ることがなくなれば、こんな悲劇は起こらないということで、その思いが青函トンネルを完成させ、今回の北海道新幹線となるわけですが、それは宇高連絡船も同じで、昭和30年(1955年)に「紫雲丸」が沈没し、修学旅行生を含む多数の人命が失われて、やはり海を渡ることを何とかしなければならないということで、こちらは瀬戸大橋という形になったわけです。
それにしても40年も50年も前の計画を粛々と行っていくことに対する議論というのは、一体どうなっているのだろうかと思うのは私だけではないはずで、東京―函館の輸送はどう考えてみても飛行機に軍配が上がるのは目に言えているわけで、ダブルでインフラ投資する価値があるのかといえば、現在の国の財政状況を見れば、明らかに無駄遣いと言われても仕方ないのではないでしょうか。
昨年の北陸新幹線開業の時にもやりましたが、今回もこんなことを調べてみましたのでご覧ください。
▲新幹線開業前日と開業直後の日本航空のネットの予約状況です。
(クリックすると拡大します。)
▲こちらは同じ条件の全日空の予約状況です。
ご覧いただきたいのは空席状況ではなくて、運賃の差です。
普通運賃やビジネス切符などの正規運賃は変更ありませんが、特割や早割のような割引運賃には開業前後のわずか数日で明らかに差が出ています。
便によっても異なりますが、普通席で3000円から4000円程度、新幹線開業後は安くなっています。
航空会社というのは、これだけ敏感に運賃で対応してきている、つまり新幹線の開業を意識して身構えているのがお分かりいただけると思います。
「安くなるなら結構じゃないか。」と言われる人もいるかと思いますが、そういう考えはデフレマインドから脱却していない証拠で、航空会社はどう考えるかというと、まず、運賃を割り引いて対抗します。
次に、使用する飛行機を小型化していきます。
東京―函館線は基本的にはワイドボディー機が就航していますが、乗客数が減ってくると、徐々にB737にしていくでしょう。そして、最後に減便です。
なぜ最後に減便かといえば、それは羽田空港の発着枠があるからで、やたらに減便をすることができないというお家事情があります。
でも、逆に考えれば、その発着枠を他の路線に割り当てた方が有効に使えるということもあるわけで、そういう場合は減便して一旦機材を大型化するということも考えられます。
事実、それまでB767・787などのワイドボディー機が就航していた東京―富山路線は新幹線開業後に順次機材を小型化し、現在は1日6便すべてがB737で運航されています。それでも新幹線開業から1年を経て、まだ1日6便をキープしているのは良い方だと思います。
つまり、航空会社はそれだけ細かく対応することができるということなのですね。
私が何を言いたいのかというと、新幹線が開業したばかりに飛行機が小型化されたり減便され対するとしたら、それは函館の人たちにとって大きな脅威になるということで、実際のところ、東京からの観光客の殆どは函館空港に降り立っているわけですから、そのことを中心に考えざるを得ないということだと思います。
例えば、帰京前に駅前の朝市によってお土産物を購入するとしましょう。毛ガニなどの海産物が発泡スチロールの箱に入れられて売られています。新幹線で帰る場合、東京に着いてから満員電車で最寄駅まで行くわけですから、できるだけコンパクトにしたい。だから発泡スチロールの箱をチョイスする気にはなれないと思います。
でも、飛行機で帰るならば、函館空港で預けて羽田空港から高速バスで最寄駅まで行けば、荷物は大して苦になりませんし、函館空港で預けた荷物をそのまま自宅まで宅配してくれるサービスもありますから、「それじゃあ、発泡スチロールの箱を2つ買いましょう。」なんて気にもなると思います。
毎日商売をしている地元の方は、こういうところにも当然敏感になっているわけですから、今後に対する不安要素にもなりうるわけです。
では飛行機は万能かというと、確かに新幹線に比べれば天候に左右されやすいという弱点があります。でも、飛行機の場合は羽田空港と函館空港の周辺地域の天候が飛行可能な状況であれば飛べるのですが、新幹線の場合、延々900㎞にもわたる沿線のすべての地域の天候に左右されることになるわけで、つまり、途中1か所でも電車の運行に適さない天候があれば、東京と函館がどんなに良い天気であっても電車は動かなくなるわけですし、それは何も天候だけじゃなくて、飛んできたビニールシートが架線に絡まっただけで、あるいは、運転されている全列車のうちのどれか一つにトラブルが発生しただけで全線で運転できなくなることは昨年も実証済みなのです。
だとすれば、いい加減役割分担をして、飛行機が得意な区間と新幹線が得意な区間というのを、この際しっかりと把握するべきだと思いますし、同時に新幹線が得意な区間であっても、何かトラブルが起きた時のためにキチンと在来線にも役割ができるような態勢を取るというのが、今やらなければならない交通政策なのではないでしょうか。
新幹線が止まってしまったら、代替輸送機関として在来線が全く使い物にならないような状況は、危機管理的に見ても非常にお寒いというのが、今の日本の政策だということで、そう考えると、台湾の鉄道政策は、新幹線、在来線ともにきちんと補完し合っていますから、私は彼らの方が長けていると思います。
技術だけを輸出するのではなくて、しっかりと使い方も輸出するべきだと思います。じゃないと、笑われてしまいますよね。
ということで、函館まで新幹線が開通するということに対して、「あいつはまた批判している。」と短絡的な人は思われるかもしれませんが、実は私は函館が大好きな内地人の一人でありまして、今回の新幹線函館開業は、本当にうれしく思います。
つまり、青函連絡船に乗って何度も訪れたことがあるその函館に、新幹線が通るわけですから、私の内面に於いての悲願達成であるということなのです。
函館の皆さん、おめでとうございます。
あとは使い方ということですね。
▲37年前、函館の街を歩く。
写っているのは・・・・私です。
ねっ、昔から函館が好きでよく行ってるわけですよ。
ジャニーズ系だった当時からね。
キャー!
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