電車が止まる。しょっちゅう止まる。

今日はケーブルが燃えて山手線がストップしました。
昨日は大雨で外房線が午前中ストップで、おとといはシステムトラブルで東横線が数時間ストップしましたし、台風の影響で九州では新幹線も在来線も始発から全部がストップしました。
この間は青梅線が通信ケーブル火災で午後から終電まで止まりましたし、そのすぐ後には中央線でも同じことがありました。
先ほども人身事故で止まっている区間があると、携帯のメールが教えてくれましたが、このところ本当によく電車が止まります。
電車が止まるのはいろいろな理由があって、気象条件だったり、電気系統やシステムトラブルだったり、はたまた人為的なものだったりするわけですが、以前に比べて違うなあと思うことが2つあります。
その1つは、雨量計や風速計などの性能が向上し、コンピューター化されていて、自動的に規定値に達するとシステムが教えてくれるので、現場で「あと少し大丈夫だろう。」とか「まだいいか。」などという裁量を入れる余地がない。
つまり NO is NO  ということで、絶対的に止めなければならなくなること。
先日のいすみ鉄道でもそうですが、例えば雨量計の数値が規定値に達することがあります。
単位時間当たりの雨量がオーバーする場合もあるし、降り始めからの総雨量値がオーバーする場合もありますが、規定値をオーバーした場合は列車を止めなければなりません。
土砂崩れや路盤崩壊などの発生リスクが高まるのがその理由です。
雨量計の規定値に引っかかった場合は、まず、雨がやむまでは運転再開はできません。
雨がやむか、明らかに小降りになると、運転再開の準備に取り掛かります。
ところがこの運転再開の準備というのがなかなか厄介で、なぜかというと、係員が線路を歩いて、または軌道検査の車両を使って、目視で点検するからです。
いすみ鉄道の場合は、軌道バイクと呼ばれるエンジン付きの小さな車で線路を点検します。
大多喜から2手にわかれて、大原方面と上総中野方面と手分けして点検していきます。
どちらも列車で走ると20分ほどの距離ですが、軌道バイクのような車両で線路や倒木などを目視点検し、問題がないと結論を出すまでには、まず1時間は必要です。
軌道バイクなら大原に到着したら2人掛りで線路から降ろして、保線区長が異常なしの報告をすれば運転再開となりますが、小型の保線車両のような車両で点検する場合は、その車両を所定の格納場所まで戻さなければ、運転再開できません。
新幹線だと一駅何十キロもありますから、保線車両が入って低速で点検して、異常がないことを確認して、運転再開の決定ができるまでに3~4時間はかかるでしょう。
その間に、待機していた乗務員を招集して、列車がどこで止まっているかを確認して、その位置関係を判断し、時刻表上のダイヤを整理して、どの部分から運転再開するか、どの列車を運休するかなどを計画し、それを駅に伝達して、お客様への案内をするわけです。
おとといの九州の台風のように、お昼ごろには通り過ぎてしまい、晴れ間が見えるようになっても、それから列車が走るまでに数時間かかるのはこのためで、一度列車を停めてしまうと、安全点検のためにとても時間がかかるのが現状で、それは自然災害だけじゃなくて、他の理由でも同じです。
もう1つの理由は、電車の運転距離が長くなっていることです。
おとといの東横線の場合は、東横線から副都心線、そして東武東上線や西武池袋線まで列車が乗り入れ直通運転をしていますから、全部の区間のダイヤが乱れます。
総武快速線と横須賀線が昭和50年代に直通運転を始めたのを皮切りに、東海道線から東北線、横須賀線から高崎線など、いろいろな電車が複雑に乗り入れをしているのが今の運行形態ですから、何もなければとても便利だけれど、何かあったら手も足も出なくなる。こういう状況が、首都圏の電車のあちらこちらで一般的に見られますから、例えば横須賀線で電車が止まると、常磐線や高崎線も止まるなんてことが日常茶飯事で、昔に比べて電車が止まることが多くなっているとは、こういうことが原因なんだと思います。
先日の京浜東北線のように、駅間で電車が止まってしまうと、空調も停止して、車内は蒸しぶろ状態になりますから、下手すればお客様の生命にかかわる事態にもなりかねませんが、そうじゃなくて、駅へ着いて電車が止まっている場合は、スマホや携帯の端末で迂回ルートを検索するなど、利用者は自分で対応策を考えて、自分で行動するようになってきました。
つまり、現代の都市生活者は、ある意味とても賢くなっていて、いちいち途方に暮れるなんてことはなくなってきている感じがありますが、利用者の皆様方にお願いしたいのは、どんな時でも冷静に判断して対策を探せば必ず解決策はありますので、駅員さんや乗務員さんなど、現場で頑張っている職員の人たちに罵声を浴びせたりしないでいただきたい。これが私のお願いです。
彼らは、きちんとした使命感で輸送事業に従事しているのですから、何の責任もないところで責めるようなことはしてほしくありません。
そして、冷静になって、どうするべきかを考えるのが正しいのではないでしょうか。
例えば、青梅線が終電まで動きそうもないという時に、バス乗り場やタクシー乗り場に長蛇の列ができていました。
どう見ても、朝までかかっても運びきれないぐらいの列ですから、私だったら早々に諦めてホテルを探します。
それも、今混乱が起きている駅前のホテルはすぐにいっぱいになるだろうから、動いている路線で2~3駅移動したところにあるホテルをチェックします。
目の前で長蛇の列で並んでいる人たち全員を収容できる部屋数は無いかもしれませんが、早い時間なら、まだ部屋が取れる可能性がありますね。
私の友人の沢渡あまねさんという方(オフィスコミュニケーション改善士)は、都内のたくさんの場所から羽田空港行のバスが出ていますから、そのバスを利用して一旦羽田空港を経由すれば、たいていの所へは行けますよとおっしゃっています。
例えば町田で電車が動かなくなって、大宮へ行きたい時などは、町田-羽田空港-大宮と行けば、多少遠回りになっても行かれるわけで、羽田空港は航空路線網のハブだけじゃなくて、バス路線網のハブにもなっているんですね。
こういうことは、おそらく現時点でのルート検索サイトでは表示されないでしょうから、自分の固定観念を拭い去る努力をする癖をつけてないと太刀打ちできないことなのかもしれませんが、誰にでもできることと言えば、お財布の中に1万円札を2~3枚予備で入れておくことでしょうか。
あくまでも予備ですから使ってはいけませんし、ふだんはその存在を忘れるぐらいの方が良いのですが、そういうことができれば、心の余裕が違ってくると思います。
混乱時のホテルなどは、数が限られていますからすぐにいっぱいになってしまいます。「どうしようかなあ」と考えている間にチャンスを失うことになります。
サバイバルできるかどうかという分岐点は、一瞬で判断できるかどうかということですから、お財布の中に予備の1万円札があるかないかが大きな分かれ道になるのです。
私などは、日本中いろいろなところに出かけますから、行った先で財布を落としてしまっても日本全国どこからでも家に帰ることができるために数枚の1万円札を常にある場所に所持していますが、いつもはその存在すら忘れています。
直観力や予知能力がなくても、これだけでもずいぶん違うのではないでしょうかね。
そして、鉄道利用者が常に自分自身でサバイバル術を考えて、電車が止まった時の対応が個人でできるような時代になってくると、一番気を付けなければいけないのが鉄道事業者の態度です。
つまり、国民にとってなくてはならない存在ではなくなってきたということですから。
昔、国鉄職員が、「自分たちは国民にとって必要な存在だ。国鉄が動かなくなったら、国民生活はたいへんなことになる」と言って、国民をタテに政府に詰め寄ってストライキをしたことがありましたが、その時国民は自衛して、大した影響はありませんでした。
通勤するお父さんたちは会社へ泊りこみ、生鮮食料品は高速道路で運ばれてきたからですが、これだけしょっちゅう電車が止まることが、そのうち大きな問題でもなくなってくるとしたら、これは鉄道会社にとってはゆゆしき問題なのであり、そうなる前に、会社の幹部はリーダーシップを発揮して、正しい方向性を示さなければならないと私は思います。
でも、電車を動かすよりも、駅ナカで商売をする方が儲かると思っているようですから、どうなることやら。
だから、国民は自衛して対策を立てて、いちいち鉄道会社に「何とかしろ」などと言わなくなって、誰も期待しなくなる日が来るのもそう遠い日のことではありません。
イギリスの会社にいて、その後ローカル線から都会を見ていると、そういうことが良くわかるんですね。
なぜなら、ロンドンでは地下鉄や郊外鉄道に対してほとんどの国民は多くを期待していませんから、「Delay」とか「Cancel」という文字が運行表示板に並んでも、利用者はさっさと自分でサバイバルし始めますし、ローカル線というのは、輸送需要そのものを自分たちで作り出していかない限り、「べつにバスで良いんじゃないの?」と二言目には言われる存在だからなのです。
ということで、都市交通に従事する職員の皆様。本日もお仕事ご苦労様です。
会社の経営方針はどうであれ、皆様は尊いお仕事を日夜頑張っていらっしゃる。
私はいつもそう思っております。