おととい佐原でお寿司屋さんに入りました。
カウンターに座って、「まずは一杯」とお酒を注文すると1枚の色紙が目に止まりました。
「お寿司屋さんのカウンターに座るとき、日本人に生まれてよかったなあと思う。」
地井武男さんが色紙に描かれた絵手紙です。
地井さんは残念ながら先年お亡くなりになられてしまいましたが、日本人の心を感じるたくさんの絵手紙を残されています。
私も日本人に生まれてきてよかったなあ、と思う瞬間があります。
それは、ローカル線の駅に降り立ち、走り去る汽車を見えなくなるまで見ているとき。
駅で待っていると、はるかかなたから汽笛が聞こえてきて、やがてカーブを曲がって列車がこちらに向かってやってくる。
そんなシーンを見ると日本人に生まれてよかったなあ、と思うわけです。
だから、自分で鉄道のDVDなどを作っているのです。
そして私の作っている前面展望というDVDは、始発駅から終着駅まで、ノーカットで全部の駅を収録しています。
どうしてかわかりますか?
鉄道映像や旅番組ではハイライトシーンや景色が良いところだけを編集で集めて作品化しています。
ノーカット何て退屈かもしれません。
でも、私は思うのです。
すべての駅に、その駅を故郷に思う人がいると。
別に海岸線や渓谷沿いじゃないからといって、カットすることはしたくない。
なぜなら、その何の変哲もない風景をふるさとの風景と思う人が必ずいるはずだから。
いつもそんなことを考えて撮影しています。
小さな無人駅や何の変哲もない田園風景。ローカル線を取り巻くそんな何気ない風景を、次の世代に繋いでいくこと。
次の世代の人たちが、ローカル線の駅に降り立ったとき、「日本はいいなあ。」 「日本人に生まれてよかったなあ。」と思えるように、たとえ今の生活ではほとんど使わなくなったかもしれないけれど、私たちの親の代から受け継いだものを、次の代の人たちへきちっと繋いでいくこと。
これが、私たちの務めなんだなあ。
今日は建国記念日。
って訳じゃないけれど、そんなことを考えて見た次第です。
皆さんは、日本人に生まれてよかったなあ、と思う瞬間はどんな時ですか?
なんともったいないことでしょうか。
廃止してしまったら2度と手に入らないふるさとの風景。私はローカル線が走る風景は日本人の心の支えだと思うのです。
(島原鉄道 加津佐―白浜海水浴場前 2008年3月31日廃止)
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