テレビや新聞で、よく「経済効果」という言葉を耳にします。
オリンピックを招致できれば、とか、新幹線が開通すれば、とか。
それだけでいかにもお金が回ってくるような錯覚にとらわれます。
以前にもお話ししましたが、房総半島の海岸沿いの町の商店主の集まりでのこと。
「サーファーはいっぱい来るけど、経済効果はないからなあ。」
こういう意見で盛り上がっていました。
確かに長年海水浴客を相手にしてきた海辺の町では、サーファーは新しいタイプのお客様ですから、今までの商売のやり方の延長線上では、サーファーはお客様にはならないわけですが、だからと言って、「経済効果がない」というのはあまりにも即決すぎますね。
商売というのは時代が変わればお客様が変わる。お客様が変わればやり方も変わるわけです。
簡単な話、昔は観光地の駅前は一等地だった。
みんな列車に乗って帰る前にお土産を買っていたから、一番商売がやりやすかったわけですが、人の流れが変わってしまった今では、大体どこの観光地でも、新幹線の駅以外は、駅前はひっそりとしているわけです。
駅前商店街で食堂をやっていたお店は、街道沿いにドライブインやお土産物屋をやって何とか息を継いでいるところは良い方で、だいたい代が変わると同時に店じまいというパターンが全国どこでも見られる現象です。
つまり、サーファーは経済効果がないのではなくて、自分たちがサーファーをお客様にすることができないだけのことなのです。
そういう商店のおやじさんたちが集まって、喧々諤々の会議をやったところで、状況を脱出することは不可能なことは目に見えているのですが、人はこと自分たちのことになると客観的に見えなくなる性質がありますから、はたから見たら滑稽に見えることを何度も繰り返し繰り返しやっていて、そうしている間に、どんどん深みにはまっていくわけです。
そういう状況を打開するのに一番効果的な方法は、よく言われることですが、「よそ者」の力を借りること。
他の地域で鍛えられた人たちの力を借りれば、いとも簡単に解決することが世の中にはたくさんあるのですから。
でも、深みにはまっている人たちは、深みにはまった理由があるわけで、深みから出られない理由もあるのです。
その理由の一つが、人の話を聞かない、特に、見知らぬ人の話など聞く耳を持たないということも、全国津々浦々でごくごく当たり前にみられる現象なのです。
かつて繁栄を極めた地域が、今、見るも無残なことろが全国各地にあります。
例えば、炭鉱があったところなどは、その炭鉱が廃鉱になったというようなはっきりした理由がありますが、そういうはっきりとした理由がないところもどんどん廃れている。
それは、なぜかというと、「そこにその人たちが住んできたから」だと私は考えることにしています。
廃れてしまった商店街は、そこで30年も40年も商売をやってきた人たちが、何ら有効な対策をとってこなかったからだ、と考えるのが一番理にかなっているのです。
だから、1日も早くメンバーチェンジをして、人を入れ替えないとだめなのですが、それができない。
40過ぎて都会の会社に勤めていれば「長」がつく職に就いている年齢になった自分の息子にすら道を譲ることができない人たちは、せっかくこの町が気に入って、やってきたよそ者を排除するような動きにも出るんですね。
そんなところに、経済効果などあるわけがないのです。
これから日本は人口減少期に入ります。
人口が減るということは、商売でいえばお客様が減るということ。
お客様が減れば、お店が成り立たなくなるように、人口が減れば、町や村そのものが成り立たなくなるわけです。
だから、1日も早くそのことに気づいて、動き出さなければ、20年後には消えてなくなる運命が待っているのです。
同じような条件の町でも、すでに乗り越えて以前よりもずっと活発になっている町が日本にはいくつもあるのですから。
できない理由を探しているようではダメなのです。
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