国際線の航空機を利用して旅行する場合、いろいろな落とし穴というかクリアしなくてはならない点がありますが、ご存じない方も多くいらっしゃると思います。
私が前職の成田空港時代に体験した出来事、経験談から、皆様に知っておいてもらいたいことをお話しするのがこの 「現代航空旅行用心集」。
前回は、予約をしているにもかかわらずオーバーブッキングで搭乗手続きを行ってもらえないことがあるとお伝えしました。
今回は第2回目として、飛行機に乗せてもらえない理由のうち、前回お話しした 「お客様側の理由で飛行機に乗せてもらえない」 ということを、具体的に搭乗を拒否される事例とそんな時のお客様の対処法についてお話させていただきます。
【搭乗拒否理由 その1】
空港への到着が遅れ搭乗手続き締め切りに間に合わない。
よくある話ですが、成田エクスプレスが遅れた、交通渋滞に巻き込まれた、など、お客様にとってほとんど不可抗力と思われるような原因でも、航空会社は面倒を見てくれません。
自分が寝坊したならば納得できますが、電車が人身事故で止まってしまったなど、なかなかご納得いただけないお客様もいらっしゃいます。
でも、20人も30人もが乗り遅れるならともかく、たいていはぎりぎりに空港に到着する電車に乗っていてのこと。もう少し早めに空港に着くように準備していたら避けられた状況が見えます。
特に地方から国内線で羽田や成田にやってきて乗り継がれる方は、国内線の会社は自社の責任による遅れでも、国際線への接続補償はしてくれませんので、できるだけ成田近辺に前泊をお勧めいたします。(そのために空港近辺にはたくさんのホテルがあるのです。)
【こんなときの対処法】
まず、乗っていた電車やバスが途中で止まってしまったら、乗務員さんに運転再開の見通しをたずね、航空会社に連絡を入れてもらいましょう。国内線の飛行機も同じです。
土日など航空会社の電話窓口が閉まっている場合はNAA(成田空港会社)に連絡をすれば航空会社のカウンターには伝わります。航空会社間ではテレックスという手段もあります。
だからといって搭乗予定の飛行機は基本的には待ってくれませんが、事前連絡をいただいているのと、いないのとでは、私たち働いている職員の心積もりも違ってきますので、ご連絡は必須です。
そして、運転再開の見通しが立たないときには、列車ならばそこから脱出することを試みます。
成田エクスプレスは途中駅で停車しませんが、運良く途中の駅で止まっていたので、列車から降りてタクシーに乗って間に合った。という方も実際にいらっしゃいます。
また、空港に着いた時にはすでに飛行機が出たあと、といった場合は、代替便に振り替えてもらえるかどうかをお願いしてください。
ビジネス、エコノミーともに他社変更が効かない航空券が多いのが現状ですが、自社便の次便に空席がある場合は、たいていの航空会社では振り替えてくれるのが普通です。
その際、規定の変更手数料を請求されると思いますが、買いなおしになるよりは安いはずです。
もし「航空券面記載便以外には有効でないので変更は効きません」とかたくなに突っぱねる航空会社があるとすれば、新しい航空券を買いなおす前に購入した旅行会社に相談するのがいいでしょう。不可抗力での遅れに対しては何らかの手配をしてくれるはずです。
【搭乗拒否理由 その2】
旅券、ビザなど渡航に必要な書類に不備がある。
【搭乗拒否理由 その3】
予約及び航空券に不備がある。
2~3の場合はどうしようもありません。
具体的にはパスポートの期限切れ、ビザの取り忘れなどですが、こういう場合は出直すしかありません。
グループで旅行する場合は、メンバーの中に日本在住の外国人がいるときは要注意です。
旅行先の国によってはその人だけビザが必要な場合があります。
旅行会社で申し込んだツアーなら事前に教えてくれますが、インターネットで自分たちが航空券のみを購入するなどの場合は特に注意してください。
インターネットでは、意識していなくても、購入の際に条件に「同意する」と選択しているはずですから、要注意です。
あと多いのが新婚旅行。これも航空券を新姓で手配し、パスポートは旧姓のままなど、意外な落とし穴があります。(パスポートの名前と航空券の名前が同一でないと国際線では搭乗手続きをしてもらえません。)
また、日本人はビザなしで渡航できる国が多くありますが、どの国もたいていは帰りの航空券を所持していることがビザなし渡航の条件となりますので、片道航空券で乗ろうとすると搭乗を拒否されます。
インターネットの場合は、本人が予約してつもりでも、航空券の購入手続きが完了してなかったり、キャンセルされていたり、出発日が今日でなかったりと、いろいろな理由があるようです。
【こんなときの対処法】
渡航書類の不備では、とにかく乗れません。そうすると次に問題になるのが航空券。たいていの場合、お持ちの航空券は日付変更ができないものがほとんどだと思いますが、そのままあきらめたらせっかく買った航空券がただの紙切れになってしまいます。
自分たちの非を認めたら、何とか渡航書類がそろったときに、またこの切符を使えないか頼んでみたらいいです。
私が勤務していた会社では、規定の変更料金はいただきますが、お客様の事情を考慮して、できるだけフレキシブルに対応するように職員に指導しています。
ただし、運悪くフレキシブルでない会社に当たってしまったら、その会社には2度と乗らないと決心すると同時に、ご購入の旅行会社に相談してみてください。
そこでもどうにもしてくれない場合は、その旅行会社も2度と使わないことですね。
代理店というのはトラブルがあったときに頼りになるのが条件だと私は思います。
ただし、あらかじめ代理店に渡航書類に関しては自己責任を持つと同意している場合がありますので、そこにも注意が必要です。特にインターネットなどでは本人が自覚して無くても同意しています。
それと、大切なことは、丁寧にお願いすることです。たとえ年下のアルバイトのような職員でも、相手はプロですし同じ人間です。ナイスに振舞って損することはありません。
「お前の所など、2度と使わねえぞ!」と捨てゼリフをはくような人は、だれからも相手にされなくなりますから。
【搭乗拒否理由 その4】
お客様の健康状態が航空旅行に耐えられないと判断した場合。
熱がある人はまずダメです。それを隠して搭乗して、離陸後飛行機がリターンしたら必ず損害賠償を請求されます。赤ちゃんや子供連れでは特にご注意ください。
お腹が痛い人。外国旅行ではよくあります。多少なら行けるかもしれませんが、伝染病がうたわがれる場合は当然のことながら乗れません。
精神状態が不安定な人ももちろんダメです。
病気でなくても、旅行に対する不安から、精神状態が不安定になる場合もあります。
手術をしてから2週間経たない人もダメ。大きな手術でなくても傷口を縫っていればダメという会社もあります。飛行区間や利用会社にもよりますが、無理しないほうがいいです。
腰痛の人。座席に座ることが前提の航空旅行では、離着陸時にきちんと着席できない人は搭乗できません。あらかじめコルセットなどを準備されるのが良いでしょう。
妊婦さん。妊娠第28週ぐらいまでで安定していればOKですが、それを過ぎると診断書が必要です。
帰りの便が28週を越える人は現地で搭乗拒否される場合がありますから注意してください。
身体が不自由な方。車椅子を使用される方は事前に旅行会社へご相談ください。
たいていの場合はOKですが、座席にきちんと座れない場合はお乗りいただけないことがあります。
また、会社によっては1機あたりの車椅子乗客数に制限がありますので、障害者の団体旅行の場合は便を振り分ける必要性が出てくることがあります。
搭乗できるかどうかの判断基準は身の回りのことがきちんとできれば単独旅行がOK。
食事やトイレなどケアが必要な方は付き添い者同行が条件になります。
クルーは特定のお客様を機内でケアすることはありません。
医者や看護士の同行が求められる場合もあります。
酸素ボンベなどを使用している方は、ご自身のボンベは持ち込めませんので、航空会社が自社で事前手配が必要になります。必ずご予約時にお申し出ください。
糖尿病の方はそれを示すカードを所持していれば専用注射器を持ち込むことができます。
意外なのがギブスをしている人。骨折でギブスをしている人は航空会社では拒否されることがあります。
皆様も経験があると思いますが、長時間飛行で靴を脱いでいたら到着前に足がむくんで靴が履けなくなることがあります。ギブスをしている人がこうなるとうっ血して危険なため、取り外し式でない限り、ギブスでは搭乗できません。特に足のギブスはご注意ください。
特殊な例ですが、怪我などの病人輸送は別の基準がありますので、旅行会社、航空会社にご相談ください。海外で怪我をされたときなど、機内に仮設の寝台を設置して、本国に帰国するなんてケースもあります。ただしヨーロッパから寝台輸送で帰国すると軽く200万はかかりますので、旅行保険へのご加入をお忘れなくご準備ください。
【搭乗拒否理由 その5】
他のお客様に迷惑をかける危険性があると判断した場合
【搭乗拒否理由 その6】
航空会社職員の指示に従わない場合
この2つは特に言うまでも無いことだとは思いますが、大声でどなる、酔っ払っているなど、よくあるケースでも適用になる場合がありますのでご注意ください。
また、機内持込手荷物が異常に多い、なんていうのも該当しますのでご注意いただきたい事項です。
以上、搭乗拒否などのトラブル事例をご紹介いたしました。
皆様のご旅行が楽しい旅になることをお祈りいたしております。
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