現代航空旅行用心集 1

昨日のブログでは、たとえローカル線の小旅行といえども、自分から積極的に情報をつかんでサバイバルしていくことがトラブル防止につながると書きましたが、今回は間もなくやってくるゴールデンウィークを前に、なかなか情報の事前入手が難しい国際線でよく発生するトラブルと、それに対しての対応術をご紹介させていただきたいと思います。
私の前職は成田空港での航空会社の旅客運航の管理者。
成田では20年過ごしましたので、その間に経験したことを、このブログをお読みの皆様にご紹介して、航空機ご利用の際のサバイバル術を身に付けていただきたいと思います。
まず第1回目の今日はオーバーブッキングについて。
ご存知かとは思いますが、航空会社が飛行機の座席以上に予約を取ることをオーバーブッキングといいます。
オーバーブッキングはあらかじめキャンセルを見越して、供給できるサービス以上の予約を取ることで航空会社のみならず、ホテルなどでも行われています。
「座席」は航空会社が販売する商品ですが、時間になって飛行機が出発すると、商品価値がなくなってしまいます。つまり、売りたくてももう売ることができない状態です。
また、暇な時期にたくさん仕入れて在庫にしておいて、お客様のピークの時期にそれを売ることもできません。
ここが一般商品の販売と違うところですが、この特性のある商品を販売する一つの方法としてオーバーブッキングは、航空会社に営業規則上、全世界で認められている行為です。
たまに、「オーバーブッキングはけしからん!」とクレームされる方も見受けますが、お気持ちはわかりますが、どこの航空会社も、ポリシーとして率の違いはあれ、多かれ少なかれオーバーブッキングをさせています。
これがイヤと言う人は飛行機での旅行ができないことになってしまいます。
ここでは、そのことをご理解いただいたうえで、お客様としての対処法を伝授いたしたいと思います。
まもなくゴールデンウィークがまいりますが、出発のピークといわれる日は、成田発のどの会社も予約で満席の状態です。
満席というのは、つまり、300席の飛行機に300の予約が入っているということではなく、320とか330人、あるいはそれ以上の予約が入っているということです。
そこで、皆様に知っていただきたいことがいくつかあります。
【その1】
のんびりしていたら席が無くなる、ということ。
予約しているから安心と思って、出発時刻ぎりぎりに行ったら、乗れない可能性があります。
チェックインが始まると、徐々に座席が埋まっていきます。
300席の座席に320人の予約が入っていたら、キャンセルが出なければ20人乗れない計算です。
空港へはできるだけ早めに着くように出かけましょう。特にピークのときにエコノミークラスの格安航空券をご利用の方は遅くても出発時刻の3時間前までには着く心積もりが必要です。なぜなら、格安航空券では座席の事前指定ができないからで、同じエコノミーでも、事前座席指定を持っている人のほうが、優先順位が高くなるからです。
【実際にあった例】
・途中、高速道路が事故で渋滞して、間に合わない。
・成田エクスプレスが止まってしまい、2時間余計にかかった。
・成田までの国内線が遅延して接続できなかった。
このような例は、特別な場合を除いて、すべて自己責任として処理されます。
空港には時間までにいらっしゃること、というのは基本中の基本ですから。
特別な場合とは、20人も30人もが途中で引っ掛かって立ち往生している時などで、そのような場合どうするかを決めるのが私の仕事でした。
【その2】
アップグレードを利用する。
例えばエコノミークラスがオーバーブッキングしていても、上のビジネスクラスに空席がある場合があります。エコノミーは20席オーバーしていても、ビジネスに20席空席があれば、プラマイで0。
ちょうどうまく収まる計算です。
その場合は、エコノミークラスのお客様の中から、何名かビジネスに移動していただく方法を取ります。これをアップグレードと言います。
どうやってアップグレードするお客様を抽出するかは後日別の機会にお話いたしますが、ビジネス需要の少ない観光旅行シーズンにはありがちなことです。
チェックインカウンターで「アップグレードする方法はありますか?」と聞いてみることです。
航空会社の都合で誰かふさわしいお客様を探しているときなどは、通常より安い破格の差額でビジネスクラスに乗れるかもしれません。
ただし、「タダでビジネスに・・・」なんて魂胆が見えるようだと相手にされませんから、あくまでも自分はお金を払うつもりがあるという態度が大切です。
その会社の発行する上級のカードでも持っていない限り、「タダ」は難しいですね。
【その3】
トラブルを起こさない。
予約変更したけど変更料金が高いと文句を言う人がいます。
規定以上に荷物が重いのに、超過料金を払いたくないとゴネる人がいます。
こういう方々は、チェックインをしてもらえません。
オーバーブッキングで座席が不足しているのですから、規定に従わない、または規定を無視するような態度をかたくなに取ると、前職の私のようなマネージャーが出てきて、「ダメです」と乗せてもらえない可能性があります。
足元が広めの座席を欲しいあまりに、「自分は具合が余りよくないので、ゆったりとした席を」という人もいますが、たとえ「振り」であっても病気と思われたら乗せてもらえませんので言わないほうが良いと思います。
どうしても自分は通路側が欲しい、とゴネる人などの場合、
「それでは次の便で通路側をご用意いたします」なんて言われかねません。
また、オーバーブッキングしているときは航空会社は時間で搭乗手続きを締め切ります。国際線の締切時間は早いですから、要注意です。
会社によって異なりますが、だいたい出発時刻の60分~40分前ですから、空港で航空券を受け取る予定の人や、宅配便で荷物を送っている人などは、とにかく気をつけて下さい。
【その4】
できるだけ早く飛行機に乗って座席に座ること。
何を言っているのか? という方もいらっしゃるでしょうが、意外に大事なことです。
のんびり買い物をしていたら出国手続きが長蛇の列。誰も迎えに来てくれず、ゲートにたどり着いたら飛行機はすでに出発済み。なんて人は、毎日何人もいます。
オーバーブッキングの時には、座席をもらえずに搭乗口でスタンバイしている人もいます。
決められた時刻までに搭乗をしなければ、理由は何であれ、その人の座席は、搭乗口でスタンバイしている人に取られてしまうのです。
また、飛行機に乗ったら何かの手違いで1つの座席に2人のお客様がいた、てなことも考えられます。
運悪く満席だったら、最初に座ってベルトを締めている人に軍配が上がりそうです。
以上、ちょっと生々しいお話ですが、ピーク時に座席をGETするためのサバイバル術として、知識をお持ちいただければ、皆様のスムーズで快適な航空旅行の一助となると思います。