455の塗色変更について

先日は「雪月花」について書きました。
「雪月花」は第3セクター鉄道の中ではピカイチの観光列車です。
車両はもちろん素敵ですが、アテンダントの皆さんなど雪月花を支えるチームが、一種懸命に創意工夫して、とても良い企画を出してきて、さらにきめ細やかなサービスをしていますから、大手の観光列車とは比べ物にならないと私は思いますし、その証拠に、軽井沢や金沢への乗り入れなど、昨今では大躍進しています。

というようなお話をしましたら、多くの方から「455の塗色変更についてはどう思うか?」とご意見をいただきました。

ので、今夜はその話をさせていただこうと思います。

455・413の新北陸色。
結論から申し上げて、私はアリだと思います。

こういう車両をなぜ走らせるかと言えば、地域輸送用という用途は臨時以外にはほとんどなくて、観光用として観光客にいらしていただくためです。

普通の鉄道は目的地へ行くために乗ります。
これに対し観光列車、観光鉄道は「乗ることそのものが目的」です。
だから、乗ってみたいなあ、おもしろそうだなあというような列車を走らせれば、その地域に用はなくても人はやってきます。

田舎の町の観光協会が、お城だとか戦国武将だとか、一生懸命に自分の町をPRしていますが、そんなことをするよりも「乗ってみたいなあ」と思えるような列車を走らせれば観光客はやってきます。
もちろん、お城や戦国武将で来る人は来ますが、新しいお客様の層を開拓できるのです。

「雪月花」がそのいい例で、「雪月花」のお客様は「ちょっと糸魚川へ用事があるんだけど、ちょうどいい時間に雪月花があるから、それに乗っていこう。」という人は一人もいません。
糸魚川にも直江津にも妙高高原にも全く用事がない人たちが、「雪月花」に乗ることを目的に沿線にやってくるわけで、お一人様3万円ものお金を払って地域の特産品をお召し上がりいただくのですから、私はそこに会社だけでなく、地域にとっても大きなチャンスがあると考えています。

ところが、田舎の町の長老たちは補助金で支えてやっているようなローカル鉄道がお客様を呼んできているなんてことは考えたくないわけで、自分たちの町はお城や戦国武将で観光客が来ていると信じて疑いませんから、まぁ、そういうところで全国共通の落とし穴があって、全国共通でその落とし穴にはまっているというのが私の分析ですが、今日の所はその話は置いといて。

455の電車も、何のために走らせているかと言えば、観光客にいらしていただいて鉄道会社の収益性を高めるためであり、そのついでに地域にお金を落としていっていただければ、地域にとっても貢献できますから、車社会の地元の人たちにとっても、鉄道がありがたい存在になれますよ。
というのが、人口減少が続く地域での観光鉄道、観光列車としてのひとつの生きる道なのです。

だから、455だってそのために走っているのですから、新しい色に塗り替えることで、またまたたくさんのお客様が乗りに来ていただけるのであれば、私はアリだと考えております。

さて、ここで私が国鉄色に塗り替えた理由を申し上げますが、その理由は懐かしいとか、いろいろありますが、やはりJRのお古はそれなりに塗装が痛んでいたので、何か色を塗らなければならなかったからです。

こんな車両をもらってきて、そのままの色で走らせるわけにはいきませんよね。
だから、私としては、どうせ塗るのであれば国鉄時代の色合いに塗った方が観光客が来ると思ったのです。

国鉄形の強みというのは全国区であるということです。
キハだったら北海道から九州まで、日本全国で走っていました。
455の交直両用急行色は北は盛岡から南は鹿児島まで走っていました。
つまり、北海道で生まれ育った人も、東北で生まれ育った人も、九州で生まれ育った人も、国鉄時代の電車の色を見たら、はじめて千葉や新潟へ来た人たちだって「あっ、この車両昔乗ってた。懐かしいなあ」と思ってもらえるわけで、はじめて来た土地に懐かしさを感じてもらえれば、その地域がその人の中で特別なものになるでしょう。
国鉄形車両の国鉄色というのは、そういう力があると私は考えましたから、どうせ何か色を塗らなければならないのであれば、国鉄色に塗るのが地域が引き立つし、わざわざ全国各地から乗りに来てくれるかなあと思ったのです。

で、今まではそれでうまくいってきていました。

ただ、時代は進んでいます。
いつまでも国鉄色というだけではお客様も離れていくでしょう。
トキ鉄のスタッフも30代、40代が中心になってきましたから、いつまでも60過ぎの爺さんが「国鉄色」と声を高らかにする時代でもないでしょう。
若い人たちにとって見たら、JRになってからの色の方が懐かしいと思うでしょうし、そこに商機を見出しているのであれば、それはアリなんですよね。

私に「455の塗色変更はどう思いますか?」と意見を求めている人たちの真意は、多分私に「国鉄色を変えるのはけしからん!」と言ってほしいのかもしれませんが、私はキハをタラコ色に塗った人間ですし、黒くて勇ましい蒸気機関車を赤や青に塗って顔をつけて走らせている会社の社長ですからね。
色を塗り替えることに関しては「面白そうだな」と思いますし、塗装が痛んできて塗り替える必要性が出てきてるのであれば、若い人たちが喜ぶような色に塗ってみるのは楽しいことだと思います。

ただし、観光用の電車を走らせる目的を忘れてはいけません。
その目的は「地域に用事はないけど、わざわざ乗りに来ていただくこと」でありまして、会社ですから当然事業計画があり、売上目標があり、それを追求しなければなりません。

その点では全国区だった国鉄色を捨てて、北陸地方だけで走っていた色に塗り替えた電車にどれだけの需要があるかということは私には予測ができません。
でも、塗り替えを決める時点では当然その辺りの事業目論見ができているはずですから、私には見えない需要というのが見えているのだと思います。

私は今まで3つの鉄道会社をやって来て、それぞれに国鉄形を導入してきました。

私のやってきていることは皆さん方から見たら多分簡単そうに見えるのでしょう。

「国鉄形を走らせれば鉄オタホイホイだ」

と悪口を言う人もいるようですが、簡単そうに見えるかもしれませんが、多分簡単じゃないと思います。
なぜなら、そこには私なりのリサーチがあり、ノウハウがあり、商品の作り方があるからです。
私はそういった自分なりのノウハウで国鉄形という商品を作り出していますし、今、私がやっている12系の導入も、今までやってきたことの横展開ですから私にとってはそれほど冒険でもありませんが、一見簡単そうに見える国鉄形ビジネスも知識やノウハウが伴わなければ続けることができません。

その点では、何も私が展開してきた国鉄形の世界を踏襲しなくても、新しい人たちが新しい感性で新しい商品を作り出していくことは喜ばしいことだと思っています。

ただし、何度も言いますが、株式会社ですから売上を上げなければなりません。
売上は正義です。
トキ鉄の場合も向こう10年近くの収支計画ができているはずですから、電車の色を塗り替えることでその収支計画に結び付けなければならないのは当然のことです。

塗り替える以上は国鉄色で存続させるよりも収支が改善するという前提でしょうから、私としては若い皆様方に頑張っていただいて、思う存分働いてもらいたいと思いますし、そのための新塗色ですから、今から楽しみなのです。

とはいえ、私はすでに前期高齢者ですから、今更やり方を変更することもできず、今までやって来てそれなりの成果を出してきた国鉄色でこれからもやっていくしかないのであります。

まぁ、でもね、これはこれで面白そうでしょう?
こんな列車が走っていたら乗ってみたいでしょう。

私は自分だったら乗ってみたいなあと思える列車を走らせています。
トキ鉄の若い皆様方をはじめ、旧北陸本線を懐かしいと思う皆様方が、新しい色の電車に乗ってみたい、見てみたいと考えるのであれば、そこに商機は必ず存在しますので、需要を作り出していただきたいと思います。

頑張ってくださいね。

そうそう、新北陸色、食パンだったら乗ってみたいですよね。
食パンが走ったら、すぐにでも乗りに行くのですが。

ついこの間のような光景が、遠くなりましたね。

これからはもう若い人たちの時代なのです。

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