今から10年前に「東横インが1泊1万円になる日」というブログを書きました。
そのころはインバウンドが今ほどではありませんでしたが、私はこんな状況が続くといずれビジネスホテルだって1万円では泊まれなくなる時代が来るだろうと思っていましたので、そんなブログを書いたのですが、そうしたらすぐに新聞だったかテレビだったか、取材の申し込みがありました。
その内容は、「どうしてそう思うのか?」「ビジネスホテルが1万円になるなんてありえないと思うけど、根拠は何か?」というようなものだったと思いましたが、取材に来るということは、一般的な考え方からすると「ありえないこと」「驚くようなこと」だったわけですが、例えばロンドンオリンピックの時の物価高騰などを目の当たりに見てきた身としては、外国人観光客があふれるようになると、とてもじゃないけど日本人が格安の旅行などできない時代が、もうすぐそこまでやってきていると考えていました。
何しろ、ロンドンオリンピックの時に街角のファストフードの店でポテトを頼んで、「ケチャップをくれ」と言ったら「40ペンスだ」と言われたのです。
当時1ポンド160円ぐらいだったと思いますが、40ペンスというと65円になります。
ホテルは当時すでに1泊2万円越え。
今から20年も前の話ですが、そんな状況でしたからね。
まして日本人はお人よしですから電車だって外国人の方が安く乗れる。
フリーパスを使えば新幹線だって乗り放題ですからね。
日本のインフラは日本人の税金で作られているのに、なんで外国人観光客に安く乗せる必要があるのですか?
まして日本は観光でお金を稼いでいこうというのですから、最初から安く売る必要はない。
私はそう思いますが、事実台湾では日本人が予約するのと台湾人が予約するのではホテルの値段が違っていました。
「鳥塚さん、今夜のホテル決まってますか?」
台湾人の友達にそう聞かれましたので、ちょうどこれから予約しようと思っていたところだったので、彼に予約してもらったんです。
台北駅前のシーザーパークホテルでしたが、チェックインしたときに「おや? 安いな」と思ったんです。
で、翌朝、ホテルの部屋に新聞が届けられて、それが台湾の新聞だったので、フロントに「日本の新聞が欲しい」と電話したら、フロントの人が「あなたは台湾人価格で予約しているから日本の新聞はダメだよ。」と言われたことがあります。
そうです。台湾人が予約した方が2割ほど安かったんです。
そんな経験をしていましたから、私は16年前にいすみ鉄道へ行ったときに、人気(ひとけ)のない国吉駅のホームに立って、「おぉ、ここにはお金がたくさん落ちていますね。」と申し上げたところ、地元の方が「?????」でした。
「お金が落ちている」ということが一般の人にはご理解いただけない時代だったのです。
今では「観光客はお金を落とす」ということは常識になっていて、その観光客が落としたお金を上手に拾うことができれば、あるいは観光客がお金を落としたくなるような仕組みを作りさえすれば、ローカル鉄道ばかりじゃなくて、田舎の町自体も潤うなんてことは普通の人でもご理解いただける時代になったと私は思います。
日本で唯一のアプト式線路の大井川鐵道井川線のアプトいちしろ―長島ダム間の運賃は実に160円。
この区間ばかりでなく、井川線全線で地域住民の利用者は皆無だということを、地元の重鎮の皆様方が認めているのですから、私は井川線は全線1乗車3000円でも安いと思っていますが、そういうことが理解できない人たちが未だに一定割合いることも事実でして、そんなこと言ってるから日本のローカル鉄道はみんなダメになっているというのも事実なのであります。
つまり何が言いたいのかというと、過去を見ると私の予言はみな的中しているわけで、忘れ去られた昭和のキャラクターであるムーミンだって、今やコンビニでも商品を見かけるようになったでしょう。
だから、黙って私の言うとおりにしていれば、この閉塞感に満ち溢れた地方の町だって、見違えるようになるのです。
と、えらそうなことを言ってはいますが、それはなぜかというと、私は自分の足で日本中を歩いているからで、自分の足で歩くということは自分のお金で歩くということで、つまり田舎の鉄道会社の社長なんで潤沢に使える経費などはありませんから、飛行機のきっぷだって、行った先で泊まるホテルだって、お付き合いの飲み食いだって、その多くを自分で出しているのです。
計算してみたら年間で200万円ぐらい自分で払っている。
だから、多分他の人よりもその辺りの相場観というか、世の中の現実というのはわかっているつもりで、さらに、自分のお金で払ってみるとわかることですが、そこで見聞きしたものを実感を持ってダイレクトに感じることができますから、私が考えることは決して予言ではなくて、十分現実味がある将来予測だと考えています。
さて、昨今ではホテルがどんどん高くなってきている。
東京や大阪では東横インだって1万円じゃ泊まれない世の中になって来ていて、サラリーマンの皆様方も、「安いホテルに泊まって浮いた出張旅費でちょっと1杯」などという時代はとうの昔に過ぎ去ったと感じていると思いますが、先日、大宮の鉄道博物館のイベントがありまして、その時に泊まるホテルを探していたのです。
2泊予定だったので連泊で探していたのですが、それこそついこの間まで1万円も出せば泊まれたホテルが、13500円。金曜の晩だから仕方ないか、と思ったのですが、その翌日の土曜日の宿泊料金はなんとシングル1部屋25000円。
え~~~
ですよ。
周辺のホテルにも空室は全くない。
大宮で検索すると、赤羽岩淵とか池袋とかが出てくる始末。
あれあれあれ?
これはいったいどうしたことなのでしょう。
それにしてもあまりにも高くて、そんな経費かけられませんから2泊目のホテルは栃木県の小山に取りました。
こちらだって1万円しましたけど。
で、当日、大宮駅で電車を降りてしばらく歩いて目的地のホテルにたどり着きました。
そこで私たちが目にしたものは・・・



地元のサッカーチーム、藤枝MYFCの選手たちを乗せたバスでした。
もうね、笑っちゃいましたよ。
サッカーの試合があったのです。
だからホテルは満室。
まして金曜日まではお医者さんの学会もあったとか。
まぁ、インバウンドの影響だけじゃなくて、内需でもホテルが高騰しているのですね。
しかも、皆さんご存じかどうかは知りませんが、藤枝MYFCの選手移動用のバスは大井川鐵道の大鉄アドバンスという会社が運行しているのです。
まさかここで自分の会社のバスを見るとは思いませんでした。
ということで、おかしくて3人で笑っちゃいました。
てなことで、あまりの偶然におかしくなってしまいましたが、まぁ、いろいろな意味で世の中そんなもんですから、こと非日常の観光については、コスト積み上げ型の価格決定などやってる場合じゃなくて、「いくらなら買うか」「いくらなら売れるか」ということをやっていかなければ、観光立国と国がいくら宣言したところで地域が潤うわけでもなく、労多くして収穫が少ないという面白みのないビジネスになってしまうのでありまして、「だったら、もうやめた方がいいんじゃないの?」ということになってしまいます。
と、私は思いますが、さて、10年後は世の中どうなっているでしょうか?
今から楽しみです。
それまで皆様、健康にご留意の上、元気で過ごしましょう。
おもしろいことを見つけると笑顔になります。
これが健康の秘訣ですからね。
急に寒くなりましたが、お体ご自愛ください。
▼10年前に私が書いた未来予測(改行が消えてちょっと読みづらいですが、ご容赦ください。)
東横インが1泊1万円になる日。 | 大井川鐵道社長 鳥塚亮の地域を元気にするブログ(2015年6月19日)
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