14年前の今日

我が家には5人の子供がいて、もうみんな社会人になりましたが、
「今時5人も子供を育てるって大変でしょう。」
とよく言われます。

まぁ、確かに大変で、特にお金の面でははっきり言っていくら稼いでもすっからかんのすってんてんでありますが、そりゃそうですよね。
私は公立の高校というのが信じられない性格でしたから(今もそうですけど)、男の子4人をすべて私立大学の付属高校に入れました。
そんなことをすれば、いくら稼いだって足りるはずもなく、でも、まぁ、親として子供に何か財産を残してあげることができるとすれば、それは教育でありモチベーションであると思っていましたから、とにかく本人もそして親も、特に母親が納得できるようにと思ったわけです。

ただし、5人もいるとですね、上のお兄ちゃんの時には一生懸命だったことが、一番下の子になるとどうでもよくなってきていたりして、また、一番下の子の時は運動会で一緒に走ることもできなくなっている自分に気が付いて、「おかしいなあ、こんなはずじゃなかったんだけどなあ。」と思ったわけです。

で、よく考えてみたら、一番下の子の場合は親と過ごす時間がお兄ちゃんたちに比べると短い。
うちの場合は一番下の子が生まれたのが、上のお兄ちゃんが高校3年生の時。
医学部がある大学の付属高校に通っていたのですが、進路相談の時に先生から、「もう少し頑張れば医学部狙えますよ。」と言われたのですが、「先生、そりゃ無理ですわ。何しろ一番下の子が生まれたばかりでして。」というお話をしたことを覚えています。

考えてみたらお兄ちゃんにはかわいそうなことをしたなあと思うのですが、その彼は法学部へ進んで、今は誰でも知っている会社で管理職をしていますから、まぁ、親としてはやるべきことはやったのではないかと思うのですが、5番目の末っ子の場合はとにかく親と過ごす時間が一番短いのですから、何かモチベーションを付けてあげようと考えまして、ある時南の島へ連れて行きました。

その時彼は小学校4年生で、サッカーに興味があったようなんですが、私が余りサッカーに興味がなかったものですから、これまた全く親の独断と偏見で、「おい、野球のキャンプを見に行かないか?」と誘ってみたのです。

本人は全く野球には興味がなかったのですが、「うん、行ってみたい。」となりまして、南の島までひとっ飛び。
プロ野球のキャンプへ出かけてみました。

プロ野球選手を間近で見て、お話をしてサインをもらいました。

その後、同じホテルだったので、ホテルの中で野球選手を見かけ、焼肉屋さんに入ったら隣のテーブルに野球選手がいて、

「お父さん、すごいね。プロ野球の選手が隣りでご飯食べてる。」と喜んでましたが、これが今から14年前の今日、2011年2月3日のことでした。

このひと月ほど後に、あの東日本大震災が発生し、この球団が本拠地とする仙台が大きな被害を受けたのですが、息子は気が気じゃなかったようでした。

そして、この後、この子は「お父さん、ボクは野球がやりたい。」と言い出しまして、地元の少年野球チームから中学ではシニアに入り、高校、大学と野球漬けの学生生活。そして、その後は1年間だけですが北海道の独立リーグに所属して、野球まみれになりました。

親の気まぐれで南の島のキャンプに連れて行っただけのことですから、本人にとっては良かったかどうかはわかりませんが、5人も子供がいると面白いもので、こういうこともあるんだなあと思ったのであります。

ちょうど14年前の今日2月3日。

息子にとっては何か人生の転機になったのだと思います。

大きな財産は残してあげられませんでしたが、親としては5人の子供それぞれに対してできるだけのことはしたかな、と思う今日この頃であります。

ていうか、遡上してきて産卵が終わった鮭のように、もうボロボロでありますから、残された時間は家庭に縛られることなく好きに使わせていただこうと思うのであります。

もう、十分でしょう。

あとは君たちで力を合わせてしっかり頑張って生きて行ってください。