昨夜から今朝にかけて、大井川鐵道で夜行列車を運転しました。
昭和の時代、夜行列車は全国各地に走っていました。
ちょうど今、夜行バスが全国で走っているように、当時は高速道路網が発達していませんでしたから、鉄道が夜行を走らせていたのです。
つまり、夜行列車と言うのは、寝ている間に移動して朝になったら目的地に着いているという便利な列車だったわけです。
これ、本来の意味での夜行列車です。
でも、時代が変われば当然使い方も変わります。
目的地へ行くための列車だったのが本来の交通機関としての夜行列車であるなら、観光列車としての夜行列車は何かというと、乗ることそのものが目的の列車です。
だとしたら、どこへも行かなくたって、何度も往復しているうちに朝になれば、それはそれで需要があるはずです。
昭和の時代のように「夜行列車で目的地へ行く。」という需要はなくなっているかもしれませんが、「夜行列車に乗ってみたい。」という需要はあるはず。
そう考えた私がいすみ鉄道の時にキハで夜行列車をやったのが今から10年以上前に2014年2月15日でした。
当時はまだ観光列車としての夜行列車などやっているところはなく、おそらく私が先鞭をつけたのだと思いますが、あれから全国各地で夜行列車をやるようになりましたね。
いすみで夜行列車を定番化させた後、私はトキめき鉄道でも夜行列車を定番化させました。
トキ鉄でも、夜行列車をやると言い出したら「社長は馬鹿じゃないか? 誰が乗るんだ?」と言われました。
直江津を出て妙高高原を往復して直江津に戻って来て、その後糸魚川を往復すれば朝になるという列車ですから、そりゃあ三セクの幹部の認識じゃあ「誰が乗るんだ?」となるわけですけど、つまり地方創生と言うのは、そういう尖がったことをやらなければ達成するはずもないわけで、初回走らせた2019年12月には案の定、売り出し開始後1分で完売しました。
その後国鉄形車両を導入し、夜行列車も定番化してきまして、この年末も12月28日に夜行列車を運転するようで、若手スタッフたちがしっかりと引き継いでくれているようで頼もしい限りです。
そういう経緯がありますから、つまり、どこにも行かない観光列車としての夜行列車は私が元祖のようなものでして、その私が大井川鐵道に来たのですから、夜行列車をやらないはずはありませんよね。
だって、旧型客車なんですから。
いすみで最初に走らせた夜行はキハ28・キハ52による気動車夜行。
これは私は1980年代初めごろに四国で乗りました。
高松から高知方面へ行く列車でした。
国鉄形の急行電車の夜行は153系時代からの大垣夜行や、急行「ばんだい」、あるいは新宿からの中央線の「アルプス」などで、何度も乗りました。
でも、やはり一番多く乗った夜行列車は機関車がけん引する客車列車で、それも旧型客車の硬い座席車だと思います。
まして、大井川鐵道では蒸気機関車がけん引するのですからね。
だから、私としては絶対に需要があると見込んでいました。
で、付けた値段が1人1ボックス占有で18000円。
背もたれ直角の硬い座席で一晩過ごすだけの商品です。
今どき、ビジネスホテルだって田舎ならシングルルーム8000円程度で泊まれます。バストイレ付きの快適なお部屋ですよ。
にもかかわらず、硬い座席で一晩18000円ですからね。
誰が乗るのか?
皆さんそう思われたと思いますが、3両編成60ボックスが発売開始後3分で売り切れました。
5席程度空席が出たので二次募集したところ、その5席に対して107名様の応募がありまして、グーグルのシステムで厳正なる抽選を行って5名様にお乗りいただいて、予備席を除いて満席で出発いたしました。
というのが今の世の中の現状なのであります。
夜行列車の発車は21:50。
ふだんは人気のない新金谷駅にはたくさんの皆様がスタンバイされていました。
21時ごろから受け付け開始。
いつもの仲間たちも来てくれました。
機関士さんは人気者。
「大変な仕事なのに悪いねえ。」
私がそういうと、
「こんな光栄な仕事、ありがとうございます。」
と返事が返ってきました。
大井川鐵道の職員は素晴らしいでしょう?
トキ鉄の時もそうでした。
若手の運転士が颯爽と乗務してましたね。
仕事に誇りを持つ若い人たちの姿はカッコいいですよね。
とはいえ客席は硬い座席。
この硬い座席で皆さん笑顔で定刻に発車です。
家山を1往復して、23:37に新金谷に戻りました。
いつもは電気機関車の補機を付けていますが、夜行列車は機関車の単機牽引。
帰りは逆向きでやってきました。
駅前のプラザロコを開放して夜食タイム。
お土産もたくさん買っていただきました。
2往復目の家山駅です。
機関車が逆向きに連結されていますね。
機関車から供給される蒸気で客車の車内を温めています。
冬空に温かそうでしょう?
これがSL夜行の醍醐味ですね。
新金谷-家山間3往復して6:09に新金谷に戻ってきて夜行列車は終了です。
でも、新金谷からの始発列車は6:56ですから、まだしばらく時間があります。
ということで、夜行列車に使用した客車はそのまま約1時間ホームに留め置いて、「引き続きどうぞお休みください。」
もちろん機関車も連結しておきますよ。
そうしないと暖房が切れちゃいますからね。
皆さん暖房の利いた車内でしばらくお休みいただいた後、始発列車にご乗車いただきました。
夜行列車の参加費用には翌日(今日)1日分のフリー乗車券と川根温泉の日帰り入浴券が含まれていますので、始発列車から今日1日乗り鉄された方もたくさんいらっしゃることでしょう。
1日フリー乗車券はSLも自由席で乗れますから、使いようによっては今日の夕方までSL列車に乗り続けた方もいらっしゃるかもしれません。
そう考えたら、体験を買う商品としては十分にお値打ち、お買い得商品ではないでしょうか。
ということで、次回の夜行列車は12月31日、年越しでの運転を予定しています。
準備ができ次第ご案内させていただきます。
皆様どうぞお楽しみにお待ちください。
今回ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
そしてお疲れさまでした。
▼一番最初の夜行列車運転の日のブログ
夜行列車を運転しました。 | 大井川鐵道社長 鳥塚亮の地域を元気にするブログ
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