今日は朝から東海道新幹線が動かなくなって大騒ぎでしたね。
日本航空と全日空が臨時便を出していましたが、300人乗りの飛行機をいくら飛ばしたところで、16両編成の新幹線は1300人を乗せて5分に1本走っているのですから太刀打ちできません。
高速バスを増便したところで焼け石に水。
第一ドライバーもいませんから。
新幹線が止まるというのは、つまり、この国の大動脈が詰まって血液が流れなくなるのと同じなのです。
昨今話題になっているリニアだって、あれは東日本大震災の後、危機感を抱いたJR東海が今さらのように始めたことで、だいたいリニアなんてのは1972年の鉄道百年の時に宮崎実験線でもうすでに実用化のめどがついていたのですから。
ではなぜJR東海が東日本大震災の後、急にリニアリニアと言い始めたかというと、南海トラフとか相模トラフとかが急に現実味を帯びて、いつ何時東海道新幹線が大きな被害を受けるかもしれないということが、危機として迫ってきたからです。
つまり、JR東海というのはJRの中で一番儲かっていて安泰といわれていますけど、新幹線の売り上げが90パーセント以上の収入を占めているわけですから、極めて危ない構造の会社だということが、現実として浮き彫りにされたからです。
いくら大きな会社でも、1つの商品が売り上げの大部分を占めていたら、ある日突然その商品が売れなくなったらたちまち経営危機に陥るのですから、新幹線が止まるということはそういうことなのです。
でも、新幹線が止まるということは実はJR東海という会社の経営が傾くというだけでなくて、日本という国が動脈硬化を起こして血液が流れなくなるのと同じことですから、これは一つの株式会社の問題ではなくて、日本の国の問題なのです。
私は、もう10年も前からBCPということを言っています。
日本の企業には最近でこそ少しずつ根付いてきましたが「BCP」という言葉がないところが多く、鉄道会社も二言目には「計画運休」とは言いますが、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)という言葉はあまり使われていません。
台風や大雪などが近づいてくると、最近では「計画運休」という言葉がよくつかわれますが、それは「悪天候が予想されますので列車を止めます。」というだけの「計画」がほとんどです。
でもBCPというのは「事業中断計画」ではなくて「事業継続計画」ですから、「列車を止めます」というだけではなくて「運転再開のための準備計画」(事業再開フェーズ)というのが必要です。
それがない会社は列車を止めたはいいけど「運転再開のための計画」がありませんから、「夕方5時から運転再開します。」などと発表してしまいます。そうすると「5時から平常ダイヤで運転する。」と乗客はみんな思うわけで、大混乱に拍車をかけることになるのです。
実際は5時から列車を車庫から出してくるわけですから、平常運転に戻るのはその数時間後になるわけで、BCPがきちんとしていれば、運転再開のフェーズに向けて、いち早く平常運転に戻せるような位置に列車を止めてから「運休」するのですが、そういうことは考えていませんから、もたつくのです。
で、話を元に戻すと、東海道新幹線のような大動脈が止まってしまったらどうするか。
これは、JR東海という会社の話ではなくて、日本の国家としての危機管理の問題でありますから、国がきちんとBCPを作っておかなければならないと私は思います。
国土交通大臣がJR東海という会社に「何やってるんですか。早急に復旧させなさい」と指導するなんてことは実に頓馬なことで、「いやいや、あなたたちこそ何やってるんですか。」ということだと私は思います。
この国は40年近く前に「国鉄」という呪縛を切り捨てることができて「あ~、すっきりした。」とその後のことはすべてJR任せになって、それまで自分たちが国民から「しっかりやれ!」と言われてきたことが、いつの間にか自分たちの口から民間会社に「しっかりやれ!」と言うことが仕事のようになってきていますけど、どっこい大きな勘違いで、実は国家としてのBCPがどこかに忘れ去られてしまっているのです。
ということを、鳥も通わぬ親不知子不知といった難所を「旅客鉄道」として運行することがお前たちの責任だと言われてきた私としては、「いえいえ、何をおっしゃるんですか? 国家としての大動脈をどのようにお考えですか?」と減らず口をたたいてきたんですが、こと、東海道新幹線となると、これは日本海側からは比べることができないほど重要な国家の大動脈ですから、いよいよ、現行制度のほころびが見えてきたなあと、本日の事故を見て感じたのであります。
日本経済をマヒさせるなんて、こんな簡単なことはないでしょう。
現場の作業員に一人二人、怪しい人間を送り込めばいいだけのことですから。
リスクを冒してテロを仕掛ける必要などないのです。
と、北の将軍様か思うかもしれませんね。
BCP(Business Continuity Plan)
日本人に一番欠けている考え方かもしれないと、いまさらながらに思った次第であります。
とりあえず、北陸新幹線が敦賀まで開業していて良かったですね。
BCPを意識してるとは思えませんが、ぐるっと回って行けた人がたくさんいたということは、その人たちのサバイバル力を誉めた方が良いのでしょうかね。
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