アンガーマネジメント

あくまでも一般論ですが、年を取ると怒りっぽくなる人が増えます。

なぜだろう?
自分も年を取るにつれて怒りっぽくなるとすれば、それはホルモンバランスが崩れるのが原因か?

こちらもあくまでも一般論ですが、女の人も40を過ぎればだんだんと恐くなってくる人がいる。
あれ、あの人そんな人じゃなかったんだけど?
と思うことしばし。

どうしたら回避できるのか?
自分がそうならないためには何に注意したらいいのだろうか?
たくさんの反面教師を見ながら、自分はあのようにはなりたくない。

そんなことをいつも考えて注意しているつもりの私ですが、久しぶりに千葉の家に帰って「ムカッ」としたお話し。

うちには車が2台あって、1台はいつも私が上越で乗っている。
もう1台は千葉でカミさんが乗っている。
私の乗ってる車が車検なので2週間前に車を持って帰って来ていて、今回は車を持って帰る予定だったのですが。

9月で野球シーズンを終えた息子が10月の中旬に北海道から帰って来ていた。
大谷さんだって帰ってきていますから、そういう仕事なわけですが、うちの息子は大谷さんではありませんから、帰ってきたらシーズンオフはバイト生活に入るとのことで、早速バイト先を決めて来たらしい。
工業団地で三交替で倉庫整理の仕事だと。

去年嫁に行った娘がそろそろ臨月でまもなく家に帰ってくる。
「あぁ、大変なんですよ。」とカミさん

でもって、息子がバイトに行くので車を使ってしまってふだん車がない。
臨月の娘が帰ってくるのに車がないのは困ったなあ。
という話を始めます。

あのさあ、なんで、息子に車使わせるの?
バイトなんかチャリで行かせろよ。
チャリで行けるところに仕事あるだろう。
なぜそういうことを息子にチャンと言わない。
臨月の娘が毎週検診に行くの、どうするの?
急に産気づいた時に車が無かったらどうするんだよ。
俺は車を持って帰るんだぞ!
わかってるのか。

と、ムカッと来たのであります。
実に久しぶりにムカッと来た。

と、そこで賢明なる私の頭にフッと浮かんだのはトキめき鉄道の藤山専務の顔。

藤山専務は県の要職を歴任された方ですが、ご自宅は高田。
県の要職ということは、つまりは県庁勤務ですから高田からは通えない。
20年以上も単身赴任をされてこられた経験の持ち主。
その藤山専務が、「家に帰った時は、カミさんとは絶対に喧嘩をしない。」と言うのです。
なぜなら、久しぶりに会う時にお互いに嫌な思いをしたくないから。
なかなか会えないんだから、家に帰った時は絶対に喧嘩をしない。
イヤなことがあっても絶対に喧嘩はしない。

カミさんにムカッと腹を立てたときに、専務のこの言葉が頭に浮かんだのであります。

頭の中にポップアップという感じで。

そこで私は考えてみた。
私のことを知っている人ならご理解いただけると思いますが、私は温和で物静か。
たいていの事には腹を立てない。
でも、これは作られた姿であって、実は攻撃的で怒りっぽい。
それを長年外資系企業で培ってきた私なりのアンガーマネジメントでコントロールしているのであります。

西洋人は怒ったり大声を出したりすることを極端に軽蔑しますからね。
つまりはそういう環境に長年居たので、短気で怒りっぽい性格が外見からは穏やかに見てもらえるようになっているのです。

ではなぜ、そんな私がカミさんに対して「ムカッ」と来たのか。
考えてみた。
半日ぐらい考えて出た結論。
それは「甘え」です。

自分の中に甘えがある。
会社や仕事ではその甘えが出ないけれど、家族やカミさんに対しては「当然だろう。」「前から言ってあるだろう。」「なんでそのぐらいのことがわからないんだ。」と言った気持ちが前提にあって、それって「甘え」なんだろうと思ったのであります。
だからムカッと来る。

考えてみれば息子だって何も好き好んで工業団地の中で三交替で倉庫の仕事をしているわけでもなく、娘が里帰り出産で帰ってくるとなれば母親としては準備もあるだろうし心配もある。
そういう時に、少しでも家族が生活しやすいようにしてあげるのが多分今の私に唯一できること。

年を取った人が怒りやすくなる原因が甘えなのかどうかはわかりませんが、例えば60を過ぎると都会の朝夕の通勤電車に乗っている人たちのほどんどは自分より若い年齢の人たちだし、会社でも部長とか社長とかになると、他の人たちは皆さん経験が浅い年下の人たちばかり。

「俺を誰だと思ってるんだ。」
「俺はお前たちより経験があるんだ。」
「そんなことは言われなくてもわかってる。」
そして最後には、
「覚えてろよ!」
と捨てゼリフ。

こういうのも多分頭の中には「甘え」の構造があるんだろうな。
なぜなら郵便局の職員も、鉄道員も、コンビニの店員も、道行く通りすがりの人たちも、もちろん会社の若手社員もあなたの家族じゃないからね。
そういうことは家族でやってください。
私たちはあなたの子供でもなければ奥さんでもなく、兄弟でもないですから。

「覚えてろよ!」とおっしゃいますが、きっとあなたの方が先に忘れるんじゃないでしょうかね。みんなわからなくなって忘れちゃうんですよ。こっちは覚えていても。

ということなんだと思います。

ということで私はその家族に対して「いったいどういうことだ!」と怒り心頭になるところを専務の一言で回避できたのであります。

専務は社長の女房役だとよく言われますが、助かりました。
感謝、感謝です。

「じゃあ、今回はボクが新幹線で帰ればいいんだよね。」
「そうしていただければ助かります。」

ということで車検が終わって、冬タイヤにも履き替えた車を千葉に置いて、私は新幹線に乗っているのであります。

今日は妙高山が初冠雪のようです。
あぁ、早く上越に帰りたい!

娘の予定日は12月。
これから寒くなる上越で、私は痛い右足を引きずりながら、車なしの生活が続くのであります。

山中鹿介は言いました。
「願わくば、我に七難八苦を与えたまへ」

昔の人は偉かったなあ。
私など、足元にも及びません。

(本日は、はくたか563 金沢行の車内にて。)