モノ消費からコト消費へと言われてかなりの時間が立ちますね。
私がいすみ鉄道でムーミン列車を始めたころは、まだコト消費ということが世間に認識されていませんでしたが、今ではコト消費は特に観光を考えるときには常識になっていて、「そんなことも知らないなんて」と笑われてしまいますね。
(私は笑いませんけど。)
でも、私はこのところずっと考えてきていたことがあって、それは何かというと、コト消費の「コト」というのは、いったい何なのだろうかということで、一般的に言われているような「体験を買う」ということの、体験とはどういうことなのかということは人によっていろいろ変わるはずですから、「観光列車はコト消費です」と一言では言えないのではないかと考えてきたのです。
7月に413・455の観光急行が走り始めたときに、私はサービスのオペレーションを組み上げるために自分でずっとこの観光急行列車に乗って、お客様の動向や停車駅での時間の過ごし方などを見させてもらってきました。もちろん車内販売でどのようなものが好まれるかといったことも、企画する人間は頭で考えている通りに物事は進むはずありません。まずはとことん自分で現場に立ってみて、そのうえで企画しなければ頓馬なアイデアしか出てきませんから私はいつも自分でやってみるのですが、その結果として、朝から夕までこの観光急行列車に何度も乗ってみたのです。
そうしたらいろいろ見えて来た。
何が見えて来たかというと、まず、観光急行に朝から夕までずっと乗っている人がかなりの人数いらっしゃる。
そして、その人たちが夜行列車にも乗っていて、夜行の翌朝、また観光急行に乗っている。
長時間列車に乗るということは当然腹が減るわけですから駅弁も食べるし、同じ駅弁だと飽きますから、停車中にコンビニに立ち寄ったり、折り返し時間中に立ち食いそばを食べたり。
つまり、こういうのはコト消費ではあるけれど、その「コト」をず~っと長時間引っ張って、自分の好きな時間の間中体験しているのですから、これは「トキ消費」なのだろうということが見えてきたのです。
考えてみたら、昭和の時代には当たり前だった長距離列車での旅というものが、今では当たり前じゃなくなってしまいました。
これはひとえに「儲からないことはやりたくない。」という旧国鉄系の会社の怠慢なわけですが、なぜなら新幹線というおいしい商品を知ってしまった以上、在来線のような安くて時間がかかるイコール生産性が低くてコストが高い商品などは見向きもしないわけですが、トキ鉄はその新幹線においしくて儲かる部分を持っていかれて、JRがどう考えても黒字にはなりませんよというところを引き受けさせられた路線ですから、方法としては1つしかない。
その1つというのは、JRが儲からないと考える在来線の列車を儲かるようにしなければならないわけで、多分おそらく自分の人生に上越とか直江津とか、この地域に縁もゆかりもないはずだった都会の若者たちが、国鉄の電車が走るというただそれだけの理由でこの地域にやって来てくれているわけですから、せっかくならおいしいものを食べてもらって、できるだけ長くいてもらいたい。
もともとニッチなマーケットで万人受けするような商品ではありませんから、ご理解いただけるお客様の数は限られるのですが、そういうお客様にできるだけ長い時間列車に乗っていてもらって、その列車を儲かる列車にすることができれば、商売として成り立つだろう。
7~8月の2か月間で、おおよそそんな見当をつけまして、「じゃぁ、朝から夕まで乗り続けるプランを作ろうか?」
と言ったら、営業の若手スタッフが、「何ですかそれ?」
昔はね、東京から盛岡まで455で8時間とか、大阪から博多まで9時間とか、そんな列車がいっぱい走ってたんだよ。
と言って昭和40年代の時刻表を家から持ってきて手渡したら担当者の目の色が変わりまして、「こんなすごい列車があったんですか?」
そして、「朝から夕まで455」が誕生したのであります。
もちろん「何だそれ?」と言ったのは若手ばかりではなくて旧国鉄組のおじさんたちも口を揃えて「それは何だ?」
1ボックス押さえるときには本人の他に最低限3名分の子供の運賃と料金が必要だとか何とか、50年も前から硬直化している規則を持ち出して云々し始めるのですが、そんなこと言ってるから駄目になるんですよ。ということで強行突破。
そして売り出したら10月分が瞬時に売り切れたのであります。
どうだ! マイッタカ!
もちろん企画した若手スタッフは私の主義に従って、自分で企画した商品を自分で乗車して自分でサービスして、いろいろ見えてくる。
「11月はどうするか考えてごらん。」
と言ったら、前置きが長くなりましたが、11月はこんな商品が各種登場するのであります。
まずこちら。
朝から晩まで455のバージョンアップ版。
どこがバージョンアップしたかというと、
1:快速列車で朝食サービス。
せっかく新潟の列車だし、新米の季節だからということで、おにぎり2個セットの簡単な朝食が快速列車の中で出されます。
2:スイーツフルコース。
急行3号のスイーツをフルコースにバージョンアップ。
これは凄いですよ。
私も試食させていただきましたが、とにかく凄い。
ということで、お値段8800円。
乗車時間8時間25分の旅。
当日有効のホリデーツアーパスが別途必要になります。
次がこちら
「朝から晩まで455」
急行4号の直江津到着後にバル列車として糸魚川一往復。
夏に納涼急行をやりましたが、11月はバル列車
ピンチョスというスペインのバルで出される豪華なおつまみに飲み放題コース。
これを組み込んだ10時間39分の旅。
当日有効のホリデーツアーパスが別途必要になります。
そして最強の商品がこちら。
「朝から朝まで455」
これは上記「朝から晩まで」に夜行列車をプラスしたもので、
21時間47分コース。
こちらは11月20日限定
別途ホリデーツアーパスが必要になります。
夜行列車は上越妙高の駅前温泉に立ち寄り湯ができるコースにバージョンアップしています。
ということで、長時間耐久3商品を明日19日正午に発売開始となります。
トキめき鉄道のサイトからお申し込みください。
それまで、パンフレットをじっくり読んで準備していてください。
コースによっては10時打ちならぬ12時打ちが必要ですよ。
さて、そんな長時間乗らなくても、カニ釜飯だけ食べたいとか、スイーツの区間だけ乗りたいという方もいらっしゃると思いますので、釜飯コーストスイーツコースもご用意いたしました。
急行1~2号が釜飯コース
急行3~4号がスイーツコースとなります。
1号車クハ455のロングシート部分で簡易テーブルを設置してお楽しみいただくコースです。
ご乗車には別途ホリデーツアーパスが必要になります。
これに伴い、1号車クハ455は一部指定席から1両全部指定席となりますのでご注意ください。
さらに、バル急行。
こちらは毎週土曜日4回運転します。
このコースは乗車券を含んでおりますので、6800円でご乗車いただけます。
(ホリデーツアーパスをお持ちの方への割引はありません。)
なお、1~2号車はバル列車ですが3号車は自由席となりますので、急行5~6号として糸魚川往復をご予約なしでもご利用いただけます。
そしてこちらが11月20日運転日限定の夜行急行。
「朝から朝まで455」はクハ455の8ボックスだけですが、その他の車両を発売するコースです。
前述しましたが、上越妙高の駅前の釜蓋の湯という温泉の入浴券がサービスにつきますので、乗車前でも乗車後でもさっぱりとしていただければと思います。
昭和の汽車旅で種村先生が途中下車して駅前温泉に立ち寄り湯をされていたことが記録されていますが、そんな旅ができるのもトキめき鉄道の夜行ならではでしょう。
これがトキめき鉄道でトキ消費コースになります。
ところで、バル急行のピンチョスって、お分かりいただけますでしょうか?
▼私が以前、スペインのバルで撮ったピンチョスの写真がこちらです。
どうです。
これが本場のピンチョス。
カウンターに並ぶたくさんのピンチョスの中から好きなものを選んで食べるのがスペインのバル。
このピンチョスがどういう形で列車の中で出てくるか。
もちろん今回はワインも積みますよ。
皆様方のご利用をお待ちいたしております。
最近のコメント