田舎のお盆は忙しい。

東京生まれで東京育ちの私は、お盆というと電車も道路もガラガラになって町から人が消えるというイメージなんですが、その消えた人たちが向かうのが田舎ですから、お盆になると田舎は急に人が増えて忙しくなります。

今はコロナで不要不急云々と総理大臣が言ってるぐらいですから、若い人などは帰省を控える方が多いと思いますが、人が帰って来る来ないはともかく、お盆だとお墓参りのためにまずは草刈りや掃除から始まって、お料理を作ったり、お料理を頼まれたりととにかく忙しいようです。

ということで、大人気の能生駅の笹寿司ですが、今度の土日、14・15日は販売を休止します。

どうぞご了承ください。

14日は高田世界館で銚子電鉄の映画「電車を止めるな!」の上映会

15日は直江津レールパークで「信越本線開業135周年を記念して銚子電鉄との姉妹鉄道締結式典」を開催します。

みなさまどうぞこちらへお運びください。

ところで私には不思議なことがあります。
それは何かというと、地元の人たちの反応です。

トキめき鉄道のような第3セクター鉄道は地元の人たちのご支援で成り立っています。そのご支援というのは補助金を出すというような単純なことだけではなくて、きちんと盛り立てて応援するということです。

確かに地元の皆様方はトキ鉄に対して大事な鉄道に思ってくれていることはわかります。
非常に好意的なのは町を歩いて地元の皆様方に接するとよくわかります。

でも、例えばいすみ鉄道時代に私はビール列車やお料理列車などのイベント列車を走らせると、まず申し込みがあるのは地元からでした。
取締役になっている市長、町長はもちろん、市役所の部長さんや課長さん以下、職員の皆様はもちろん、県庁職員もわざわざ乗りに来てくれました。
市会議員や県会議員の皆様方ももちろんですし、地元の商工会の皆様や婦人部の皆様方も、こちらからお知らせをするだけで「行くよ、乗るよ。」と来てくれました。

ところが、そういう雰囲気がトキ鉄沿線にはないのです。

同じ第3セクター鉄道でも、いすみ鉄道のような国鉄の廃止対象路線は自分たちの鉄道を何とか自分たちで守るんだという所ですが、トキ鉄のような並行在来線の沿線とは全く鉄道に関しての捉え方が違います。

並行在来線というのは「新幹線を通すから、今までの在来線を県と沿線市町できちんとやりなさい。」という国とのお約束でできた鉄道です。
地元としては、新幹線は喉から手が出るほど欲しいけど、在来線を負担するのはイヤだなあという感覚でしょうかね。

これが並行在来線です。

そんなことは私は来る前から分かっていました。
分かっていて自分から手を挙げたのです。
その理由は地元の子供たちです。

新潟県の直江津で、地元の鉄道を熱心に勉強し、キラキラ輝く瞳の小学生に出会ったトキめき体験談。

▲2019年3月に書いたYAHOOニュースです。

子供たちが頑張っているところなら、お父さんお母さんも、おじいちゃんおばあちゃんも、みんなで鉄道を支えようという機運があるだろうから、そういう地域なら並行在来線の中でも営業成績最悪と言われるトキめき鉄道にも大きな可能性があるだろう。自分が貢献できる場所はココにある。

そう思って還暦で人生初の単身赴任を決意したのです。

その時点で雪月花はすでに素晴らしい観光列車に成長していましたので、私は第2第3として、もっと子供たちが家族で楽しめるようなことや、毎日通学している皆様方に喜んでいただけるようなことを提供しようと考えて、直江津駅に自習室を作ったり、D51を持って来てみたり、地元の人たち向けに雪月花を開放してみたり、鉄道を身近に感じていただくような取り組みをしてきました。

そして約2年。
2回目の夏を迎えています。

そして去年も今年もビール列車を走らせています。

私は去年も今年もスタッフとしてそれらのビール列車に乗務していますが、見えてきているのは地元の人が乗っていないということです。

もちろんご夫婦でご乗車いただいたり、友達同士でご乗車いただく地元の人はいますよ。でも、いすみ鉄道の時のように市役所関係者や県庁関係者が動員をかけて乗車するような光景はありません。商工会や商工会議所の方々からのお申し込みもありません。
会社の幹部が一生懸命営業して年に1本雪月花の貸切を受注するのがやっとの状況です。
そういう所を見ると、正直申し上げて、「そんな事じゃ、鉄道なんて守れないぞ。」と言いたくなります。

他人事ではなくて、自分たちのこととしてとらえていただかないと。

「お前頑張れよ。」と言われたら私の答えは「一緒に頑張りましょう。」なのです。

一部ではトキめき鉄道は会社としての努力が足りないという声も上がっていると聞きますが、「いやいや、そうじゃなくて、他人事じゃないんですよ。皆さんもきちんと参加していただくのがマイレールなんですよ。」というのが私の答えです。

そういう点では糸魚川市はありがたいです。
流石、大糸線を抱える地域だけあります。
市長さんが率先して市民の皆様へ向けた雪月花貸し切りツアーを企画していただいて、この夏2往復、合計100名の糸魚川市民の皆様に乗車体験を発表したところ、300名近くの申し込みがあったとかで、もう1往復追加で雪月花の貸切となりました。

糸魚川市民の方が家族で雪月花に乗って直江津のレールパークを体験するという企画です。それに対して市民300名からお申し込みをいただいた。割引価格ではありますがもちろん有料ですよ。

こういう姿勢が、第3セクター沿線の基本姿勢だと私は思います。
そういうことをきちんとやって行かないと、国は動かないものです。

いすみ鉄道が全国区になることができたのは、県と沿線市町がきちんと支えるという仕組みができていて、そういう姿勢を国が評価してくれたことが大きいと私は感じています。

これから私は地元の皆様方がもっとかかわっていただけるような、そういう仕組みを作って行こうと考えています。

能生駅での笹寿司の販売は、そういう意味があるのです。

田舎の皆様、お盆休みはゆっくりできないでしょうけど、トキ鉄ももちろん忙しく頑張っておりますので、よろしくお願いいたします。