不要不急とアフターコロナ

新型コロナウイルスの蔓延で不要不急の行動は自粛しようという動きになりました。

海外では外出禁止令など強制的に活動を押さえつける動きがほとんどでしたが、日本ではあくまでも自粛要請による行動制限。
「皆さん不要不急の外出は控えましょう。」
ということで、各自に判断が求められました。

その中で、例えば通院は良いです。でも買い物は3日に1回。リモートでできるなら出張会議はやめましょう。夜お酒を飲むのはいかがなものか。などなど、それぞれの不要不急の価値観が問われました。
ある人は、俺は酒を飲みに行くのは不要なことではないと言えば、またある人は夜の町を出歩くのはけしからんことだと頼まれてもいないのに自ら民間警察官を志願したり。
まあ、いろいろありましたが、アフターコロナはどうなるのでしょうかね。

ここ約3か月間ほど、不要不急を追及して世の中はどうなりましたか?
みんなダメになっちゃった。
お店も会社も体力が無くなっちゃってへなちょこ状態。
会社というのは、小さなところだけではありません。世界に羽ばたく航空会社も、一番儲かっている鉄道会社も例外なく皆へなちょこ。

お金借りなければやっていかれません宣言。

JR東日本なんかすでに7700億円も資金調達していますが、頼みの綱の新幹線がいつ回復するのかによっては兆が付く金額を手当てしなければならなくなりそうです。
それもこれも、みんな不要不急のせいだ!
と言いたいでしょうね。

トキ鉄は固定費が小さいのと、もともと売り上げが小さいのとで、正直言ってコロナで命取りになるほどではない。でも、実はそれが命取りで、なぜならJRのようにお金を貸してもらえないから。
売り上げがあって支払いが大きいのであれば、銀行さんだって貸してはくれますが、そうじゃないから貸してもくれない。その証拠にここ数か月各銀行さんの支店長さんの顔を見ていません。
今なら、借りてもらえる、つまりトキ鉄がお客様になれるチャンスなんですけど。
お~い!

まあ、ここ数カ月は社長である私は毎日痩せる思いで頑張っております。

本当ですよ。

一応ね、去年の9月にトキ鉄に就任して現状を知れば知るほどやせてきて、現在7㎏減。
なかなかどうして大したものだと思いませんか?
それまで右肩上がりだったのが9カ月で7㎏減ですから。

ということで、コロナ様様なのであります。

さて、そのコロナ。アフターコロナはどうなるのかと言うと、海外のように強制的に外出禁止だったなら、禁止令解除でタガが外れますが、日本の場合はあくまで自粛。まじめな日本人は、すぐに動き出すのではなさそうですから、つまり回復には時間がかかる。
回復に時間がかかるということは、JR東日本だってさらなる借り入れをしなければなりませんし、唯我独尊のセントラルさんだって、今までの出張需要だけを見越した新型電車を「さあ、どうだ!」と見せびらかすだけで良いのでしょうかと、内部ではかなり不安視されているわけでありますが、なぜなら出張そのものが不要不急なのだとレッテルを貼られてしまいましたから。

で、私は考えたのです。
不要不急とは何か? と。

不要不急って、日本人には無駄だと思われている。
だから、その無駄を排除することが言葉を変えれば効率化。
そう、効率を追求して行けば、利益が最大限になって、そうすれば会社の業績が上がり、皆さん幸せになれる。
高度経済成長以来、皆さんそう信じて、オレがオレがの競争をしてきましたが、確かに文明発達してマイカーも普及して、テレビもクーラーも当たり前にはなりましたが、今回のコロナでどうなりましたか。

マスクなんか、そんな付加価値の低いものは国内で作る必要などない。
使い捨ての防護服なんか東南アジアで十分でしょう。
食料? 何で日本で作るの? 外国から輸入すればいいじゃない。

ついこの間まで、当たり前でしたね。

で、実は当たり前じゃないってことがわかっちゃった。

不要不急を追求したら、自分たちでは何もできない国になっていたわけです。

国もそうですよ。
総理大臣が胸を張って宣言しても、可及的速やかに国民一人一人に10万円を配ることもできない。
民営化とか言っちゃって、国がやるべきことを国がやらなくなって、いざとなった時に誰もできない。
私は電通に丸投げは当然だと思いますよ。
だって、国にはそういうことを実行できる機能もスキルもないんですから。

かつて日本国有鉄道というのがありました。
でも、鉄道輸送は民営化して効率を追求しましょうと言ってから40年が経過して、結局国は今では輸送に対して何もできない。労働組合がストライキをやって国の輸送が止まるのはけしからんといって国鉄を民営化したけど、結局は自分たちでは何もできなくなっているわけですから、そういうことは運輸省だけじゃなくて、総務省も、経済産業省も全部がそうなっている。

効率化を追求した結果ですね。

つまり、不要不急を追及してはいけないのだろうと私は考えるようになりました。

なぜなら、これも極めて当たり前で、御商売をされていらっしゃる方であれば誰だって知っている基本中の基本なんですが、「売れ筋商品だけでは売り場はできない。」からです。

皆さん、良く売れる商品をたくさん取り揃えたら儲かると考えると思いますが、商売というのはそういうものではありません。
良く売れる商品、人気商品だけを集めても魅力的な売り場にはならないのです。

頭の良い人たち、高学歴の人たちはこういうことが意外に理解できない。
だから、効率化を追求しようとするわけですが、実際の人間の思考や行動というのはそうではないのです。
なかなか売れないもの。人気のない商品。しょうもないもの。そういうものをいろいろ集めて並べることで魅力的な売り場が出来上がり、お客様がたくさんやって来て、売り場での滞留時間が長くなり、売り上げが上がるのです。

こういうことがわからない人は、売れる物だけを作ればよいと思っているし、売り場から無駄を排除したいと考える。
電車の中もそうでしょう。
できるだけたくさん乗れるようにしよう。
座席はできるだけ一人でも多くの人が座れるように。
まあ、トイレは要らないでしょう。
空調が完備しているから窓も開ける必要ないし。
そうやって現代の通勤電車はほぼ完成形です。
あとは車内にモニターを付けてお客様が退屈しないように。
いや、違うんですよ。あれは、広告収入源ですからお客様にとっては不要不急でも、鉄道会社にとってはMUST。

ということを長年つきつめてきて、アフターコロナを迎えるわけです。

つまり、どういうことかと言うと、効率化を追求してきて、当たり前だと思ってやって来て、実は当たり前じゃなかったのですから、私は「不要不急だ」と言って決めつけるのはどうなのかなあと思うのであります。

近視眼的な人たちはやたら正義感が強い傾向にありますから、そういう人たちは外へお酒を飲みに行くのはもちろん、映画館も、カラオケも、観劇も、スポーツ観戦も、みんなみんな不要不急と決めつけて「けしからん」というかもしれませんが、お店の売り場が売れ筋商品だけでは成り立たないのと同じように、人間の生活だって不要不急だとされているものを排除したら、薄っぺらな、明日にもAIにとってかわられるような部分しか残らないのではないでしょうか。

じゃあ、どうするか。
3密にならないカラオケや映画館、スポーツ観戦ができればそこに商売のタネがありそうだと思いませんか。

3密になることが自粛の対象であって、お店でお酒を飲むことや、映画を見たりカラオケに行ったり、観劇やスポーツ観戦は悪いことでも控えなければならないことでもないのですから。

ZOOMなんてものが突然流行り出しまして、新しいものには目がない私は早速使っておりますが、この間、友達が集まってZOOM飲み会ってのをやってみたんです。
不要不急の会議出張を防ぐためのツールで不要不急の飲み会。

東京と神奈川と新潟と富山で。

いやあ、たのしかった。

だって不要不急だもの。

お仕事の話じゃないんだから、そりゃ楽しい。
2時間半があっという間でしたが、なんとまあ不要不急の時間だったこと。

その時思ったんですよ。
ズームの画面にメニューボタンがあって、おつまみとかドリンクとか注文できたら5~6分で近くのお店から配達してくれないかなあって。

そう考えたらアフターコロナはいろいろなところに不要不急のチャンスがあるのではないか。

不要不急は無駄ではない!

ZOOM飲み会で得た収穫でした。

皆さん、自分の狭い価値判断で不要不急だなんて決めつけてはいけませんよ。
人間は不要不急のものに囲まれて生きていることが幸せということなのです。

だって、最初は不要だと思っても長く付き合っていくうちに無くてはならない存在になる物事ってたくさんあるんですから。
それが人生の醍醐味だと思います。

つまり、効率化が文明なら、不要不急は文化なのであります。

そして、文明を理解できない人はいませんが、文化というものは誰にでも理解できるものではありません。
比較的高度な思考回路が必要な、わかる人にしかわからないものが文化でありますから、自分の仕事がAIに取って変わられないようにするためには、アフターコロナを生きるには不要不急が必要なのだと思うのであります。

そこまで言うなら証拠を見せろ?

はい、これが証拠です。

これぞ究極の不要不急。
無くても誰も困らない商品。

でも、NHKでもカンブリア宮殿でも大注目!

不要不急とは、そういうものなのでございます。

明日からの新しい一週間、皆さん頑張ってくださいね。