ビジネスパートナーになれるかどうか

しかし、今思えば何とタイムリーな仕事だったのでしょう。

テレワークのことです。

私がトキ鉄の社長に就任することが決まった去年の8月、それまでいすみ鉄道時代から私のところへ勉強に通っていた若者たちが「おめでとうございます。」と都内で集まってくれました。

皆さん基本的には「鉄」ではありませんから、えちごトキめき鉄道という名前を聞いても新潟県だということはわかりますが、はたして新潟のどこだかわからない。
私が「妙高高原ですよ。」と申し上げましたところ、グループの皆が、「ああ、知ってますよ。学生の頃スキーに行きました。」「すごいところじゃないですか。」と大騒ぎになりました。

その時に「妙高高原で何かできませんか?」という話になりましたので、私は「駅に空きスペースが多分あるから、そこを使って何かやろうよ。」と切り出しました。
妙高高原駅には何度か行っていましたから、駅構内がガラーンとしていて空きスペースがいっぱいあることは察しがついていました。

その時集まっていた若い経営者は口々に「テレワークでしょう。」と言います。
60を前にしたオッサンとしては普通なら「テレワーク?」ってなるのでしょうけど、いすみ鉄道を退任した後の私は日本全国を飛び回って企画を練ったり、提案書を作ったり、あるいはニュースを書いたりと、出かけた先でネット環境を利用して仕事をするのが当たり前の生活になっていましたので、「テレワーク、良いねえ。」となりまして、トキめき鉄道に就任するとすぐに現地調査を行って、空いているスペースを確認し、10月には視察、11月には妙高市とご対面で1月には包括連携協定を結び、工事を開始して2月中旬には妙高高原駅にテレワークスペースをオープンすることになったのです。

まあ、いまどきはっきり申し上げてテレワークなどコーヒーショップでもやろうと思えばできるのでありますが、これを「リゾート地の駅でやる」ということに価値があるわけでして、だから日経新聞でも取り上げてくれるのであります。

新潟県妙高市、ワーケーションで移住支援企業と包括連携(日本経済新聞)


▲妙高市との包括連携協定締結

さて、「テレワーク、良いね。」とトキ鉄社長就任前の段階で賛成した私でしたが、その時考えていたのはオリンピック。東京に住んで東京で仕事をしている人たちは、きっとオリンピック期間中に東京には居たくないはずだ。そういう時は東京を脱出したい人がたくさんいるはずだと考えたからで、スポーツには興味がない私は自分だったらどこかのリゾート地にでも逃げたいなと考えていたからです。2020年の夏にはそういう需要が必ずあるだろうから、時代の流れに乗れるはずだと思ったのです。

でも、年が明けて2月に彼らが妙高高原駅と私が紹介した銚子電鉄の犬吠駅の2か所にテレワークオフィスをオープンする頃になると世の中は大きく変貌しました。

それまで、そう、昨年の暮れぐらいまでは「テレワーク???」となっていたのに、いきなりテレワークという言葉が日常にあふれるようになり、国が奨励し、企業が「会社に出勤するな」という事態になりました。そしてそれが今日の時点でも声高に叫ばれているのです。

新型コロナウイルスのパンデミックです。

なんとまあ、タイムリーなことでしょう。

これだけ急激に世の中が変化するのは、おそらく人生にそう何度もあることではないでしょう。

だって、去年の秋までは「台風か来るので会社へ行くのをやめましょう。」といくら言っても、「こういう時に会社へ行くのがサラリーマンとしての忠誠心を見せる時なのだ。」なんてことを言っていたのですから。

ということは、昭和の時代から言われてきた「サラリーマン、休まず、遅れず、働かず。」という、とにかく這ってでも会社へ行くんだという人たちはわずか数カ月の間に完全に取り残される人種となってしまったということなのです。

とまあ、世の中、こんなに急に変わるということを、おそらく世界中の人が目の当たりにしているのが今日の現状だと思うのですが、私が強く思うのは、こういう激動の時代にビジネスパートナーになれるかどうかということ。

いろいろな会社があって、いろいろな考え方の人がいるのが社会であり世の中でありますが、目の前にいる相手がビジネスパートナーとして一緒にやっていかれるかどうかということを見分けなければなりません。
その時の基準になるのが、例えば会社の規模や資金力などに違いがあるのは当然としても、同じ価値観を持っているかどうか、あるいは同じ方向を向いているかどうか、そして同じタイムスケールで仕事ができるかどうか、ということだと私は考えます。

同じ価値観、同じ方向性、同じタイムスケールで物事を考えられる人であればビジネスパートナーになれると思いますが、そうでないと厳しいですね。

例えば、私が9月に就任して駅構内を調べて10月に彼らが現地調査をしてビジネスプランを作成し、11月に妙高市に紹介し、年明けの1月に協定を結んで工事開始、2月にオープンなんてことは私にとっては普通のペース。いや、遅いぐらいです。彼らも同じでしょう。ところが中には「ずいぶん急ですね。」と考える人もいるわけで、はっきり申し上げてそういう人たちとはこのような仕事はできないということになるのです。

では、自分のペースに合う相手かどうかを見分ける方法をお教えしましょう。

簡単なことです。

時間外にアポを入れてみてください。
例えばお昼休みにランチを食べながらミーティングをする。
夕方18時以降に会議を開く。
土日に現地集合でアポを入れるなどなど。

私は基本的に24時間365日仕事の体制ができていますから、そういう提案を相手にしてみるとよくわかります。
「いや、休憩時間ですから」とか、「その日は休日です」などと言い出す人は私の場合は多分ビジネスパートナーにはなれない。
悪いことじゃないんですよ。時間外だし、お休みですから。
でも、それは「ボクはサラリーマンです。」と言っていることですから、そういう人は、サラリーマンとして生きて行けばよいだけのことであって、ビジネスを興そうというパートナーとはちょっと違うということです。
中には「奥さんの意見を聞いてから返事します。」なんて人もいますから、そういう人はお友達にはなれてもビジネスはやめておいたほうが良いと思うのです。

世は働き方改革の時代です。

働き方改革というのは本人の意思に反して必要以上に残業をしたりするような「時間で勝負する働き方はやめましょう。」ということであって「働くな」ということではありません。
労働というのは時間の長さで勝負するのではなくて、内容で勝負しましょうというのが働き方改革です。だから、今、時給で働いている人たちは、できるだけ早い段階で時間単位の仕事を卒業することが必要であって、そういうことを目指すのがその人にとっての働き方改革だと私は考えます。

人それぞれ人生観が違いますから、サラリーマン的働き方が悪いとは言いません。
でも、少なくともビジネスを興そうと考えているような若い人たちや企業の幹部社員はサラリーマン的働き方では使い物になりませんし、ビジネスパートナーにはなれないと私は考えます。

これはあくまでも私の考え方でありますから、そうじゃないと思われる方もいらっしゃるでしょう。
そういう方は、サラリーマンとして一生懸命働いて、いただく給料で生活して、仕事以外のことに生きがいを見出して人生を謳歌していただければ良いだけのことですので、いちいちコメントやクレームは受け付けませんのでご了承ください。
ただ、人よりも多く稼ぎたいとか、人の上に立ちたいという人はサラリーマン的発想ではダメですよと申し上げているのです。

ということで、サラリーマンであってももっと仕事をしたい人、稼ぎたい人、私と一緒に働きたいという人は、ぜひ一緒にチャレンジして行きましょう。

こういう時代だからこそチャンスは転がっているはずですから。

そして、一番大切なのは、仕事をしていてわくわくドキドキするかどうかということなのです。