やっぱり客車が欲しいと思います。
客車というのは何かというと、「貨車」に対して「客車」という言い方なら、旅客輸送用に使用する車両は新幹線の車両も通勤電車もみんな客車になってしまいますが、そういうくくりではなくて、動力を持たず、運転席もなく、それだけでは動くことができない無動力の旅客用車両。
先頭に付いた機関車に引っ張られることで動くタイプの車両を電車、気動車、ハイブリット車などと区別して客車と言います。
さて、その客車ですが、国鉄時代にはふつうに見られました。
特急列車から各駅停車まで全国どこでも走っていました。
演歌に歌われる「上野発の夜行列車」も客車を連ねた列車でした。
でも、今ではJR線では全国どこへ行っても定期列車として機関車が引く客車列車はありません。
どうしてでしょうか?
その理由はいろいろありますが、例えば客車を連ねた列車は先頭に付いた機関車が唯一の動力源。
これに対して電車列車や気動車列車は各車両に動力がありますからパワーが違います。つまり、加速力があって速度が速いのが電車や気動車で、これに対して客車列車は速度が遅い。加速減速が悪いから所要時間がかかるのです。
また、客車の列車では折り返しの駅では先頭に付いた機関車を切り離して反対側に連結しなおさなければなりませんから、折り返し駅で10分以上の時間が必要になるし、何よりも切り離して反対側へ持って行って連結しなおすという手間がかかる。
こういうことから機関車が引く客車はここ30年ぐらいの間にどんどん減少していって、結局なくなってしまいました。
寝台特急も機関車が引くブルートレインは全廃しましたが、電車で構成されている「サンライズ」は走っていますから、今は電車全盛の時代といえますね。
先頭に付いた機関車が引く山陰本線の客車列車。(昭和50年代 二条駅)
でも、その客車列車にも実は利点があるのです。
客車列車の利点とは、
1:製造コストが安い
運転席もなく動力源となるエンジンや電動装置が付いていませんから製造コストが安い。
もちろんグレードによってピンからキリですが、例えば1両で走れるディーゼルカー(車両の両端に運転席があるタイプ)は今作ってもらったら1両2億円じゃできないでしょう。JR北海道が導入するハイブリッドタイプは3億円近くするかもしれません。
でも、客車なら1両5000万円ぐらいから製造可能でしょう。
2:需要に応じて連結できる
もともと製造コストの安い客車ですから、ある程度余分に作っておいて、需要に応じて連結する数を調整することで細かく対応できるのも客車の利点。例えばふだんは5両編成だけど、年末年始などの多客期には8両や10両にしたり、朝夕は6両だけど日中は3両にしたりと、繋ぐ両数で調節できるのです。
もちろん電車だってディーゼルカーだって繋ぐ両数で調節はできますが、高価な車両がシーズンオフや日中時間帯に車庫で眠っていることになりますから経営資源としては無駄が多くなります。
3:機関車が1両あれば貨物でも旅客でも使える。
究極はコレ。客車の製造単価が安いのはもちろんですが、機関車が1両あれば貨物列車にも旅客列車にもどちらにも使えるし、何なら貨物列車に客車をつないで「混合列車」というのも可能なのです。
ところが、国鉄からJRになる時に国の政策として旅客と貨物の会社を分けてしまったのでありまして、これがすなわち客車列車の衰退につながったのでありますが、国鉄民営化から30数年が経過した今、私は客車というものがもう少し注目されても良いのではと考えるのであります。
その理由は地方へ行けば行くほど輸送の単位が小さくなってきていること。そして、それと同時にイベントなど観光需要が出て来ていて、そういう時だけはふだんよりも多くの車両が必要になるからです。
輸送需要が減って来て、輸送単位が小さくなるということは、最小単位の1両、あるいは2両で走らせれば十分だということです。
こういう輸送形態は既に全国のローカル鉄道でやっています。もちろんトキ鉄でもやっていますが、ふと見るとすぐ横を長い長い貨物列車が走っています。だったら、その貨物列車に連結してもらえば運転士さんも不要になりますからさらに合理的です。こういうことは客車ならできるんですね。
昔は貨物列車と旅客列車が一緒に連結されている「混合列車」なんて当たり前だったんですから。
昭和の時代の小海線の混合列車。貨物と客車が一つの列車として運転されていました。
それから観光需要への対応。
観光需要というのは基本的に土休日です。
月曜日から金曜日までは観光用の車両は車庫で寝ています。
そういう無駄が多いのが観光用の車両ですから、経営的に見たら私はそういうものに多額の資金をつぎ込むのはよくないと考えています。
いすみ鉄道で観光列車として昭和の国鉄形ディーゼルカーを導入したのもそれが理由です。
ところが古い車両というのはそれなりに問題もあるし、上手にプロデュースしなければ「単なるボロ」と思われて普通の使い方ならとてもじゃないけど観光列車として使用できない。
やっぱり新車が欲しいなあと思っても1両2億円も3億円もするわけですから土休日の観光用には新車は無理。
これ、ジレンマですよね。
で、私は考えるのです。
観光用に客車を作ってディーゼルカーに連結してみたらどうかと。
例えばトキ鉄のディーゼルカー2両の真ん中に安価な客車を新造して連結すれば3両編成になる。どういう車内にするかは用途にもよりますが、真ん中に連結をするのであれば運転席は要らないし両側のディーゼルカーが強力な馬力のエンジンを搭載していますから動力も要らない。
大人気の「雪月花」はシーズンにはほぼ満席状態です。でも、だからといってもう1編成作るわけにはいきません。2両で6億円ですから。そして2編成あったとしてもそこまでの需要がない。
だったら雪月花の真ん中に連結する客車を作って3両編成にしたらせいぜい数千万円で座席数50%UPが実現できるのですからこんなに良い話はありませんね。
ということで客車というものをもう少し見直してみる必要があるのではないかと思うのであります。
今日は栃木県の真岡鉄道さんにお邪魔しました。
観光需要がぱったりと落ち込んでいるこういう時だからこそ、お互いに次の手を今から考えて仕込んでおきましょうという打ち合わせです。
会議が終わってお隣りのキューロク館にお邪魔すると昭和の急行列車に使われていた客車が大切に保存されています。
そうそう、こういう客車に揺られる旅、さんざん乗りました。
ふと前を見ると機関車が見えたなあ。
ポーッと汽笛が鳴って。
そんな思い出を持っているおじさんとしては、安価な客車を製造して、今の子供たちにも客車の旅を経験してもらいたいなあと思うのであります。
観光列車ですから加速減速性能などのスピードは要求されません。
だったらディーゼルカー1両に客車1両ぐらい連結できそうですから、2両のディーゼルカーの真ん中に2両の客車を挟めば4両編成になります。そうすれば前後のディーゼルカーに一般のお客様を乗せて、真ん中の2両は観光列車としていろいろできそうだと思いませんか?
雪月花じゃなくても一般車両を使用すればもう1つの観光列車の出来上がりです。
こうすれば観光列車としてと言っても時刻表に載っている列車として前後のディーゼルカーには一般のお客様を乗せて、観光列車は真ん中の2両ができますね。
そうすれば1つの列車で一般客と観光客の両方対応できるのもローカル線としてはありがたいですよね。
例えば1両を食堂車にして、もう1両を寝台車にする。
寝台車は日中はコンパートメントとしてグループ座席になりますから、昼夜共々いろいろ使えます。
今の日本で寝台車に乗れる貴重な路線となりますね。
夜行列車であれだけ盛り上がったのですから毎週土曜日に走らせても需要はあるでしょう。
機関車不要でディーゼルカーがあるところならどこでも走れますから、全国各地の第3セクター鉄道に貸し出すこともできます。
なんてったって、貨物列車に連結してもらえれば全国どこへでも出張できるのがトキ鉄のある直江津なのですから。
誰か5000万円出す人いませんかねえ。
MY客車作りませんか。
トキ鉄で使用させていただいて使用料を払いますから、一つのビジネスモデルとしていかがでしょうか?
ということで、真岡鉄道で大切に保存されている昭和の客車を見ながらこんなことを考えてみました。
真岡鉄道の皆様、本日はお時間をいただきましてありがとうございました。
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