風景の価値。

「こんなところのどこがいいんだろうか。」

「こんなところはダメだよ。」

 

全国的現象だと思いますが、過疎化や高齢化が進んでいる田舎の人たちは、皆さん口をそろえてそう言っていると思います。

 

でも、誰でもそうですが、自分が住んでいる地域の価値って、なかなか自分ではわからないものですよね。

 

私は東京の池袋がふるさとですから、子供のころから早くこんなところを抜け出したいと思っていました。

北海道やいろいろな田舎へ出かけて行っては、ごみごみとした自分の町から比べると、「なんていいところなんだろうか。」といつも思っていました。だから、成田空港の職場を希望して、千葉県の佐倉市に移り住んで、かれこれ30年近く田園地域での生活を満喫する生活をしているのですが、同じように田舎の人たちだって、自分たちの住んでいるところに比べたら、都会の方がはるかに素晴らしいと思っている気持は理解できます。でも、都会の人たちが田舎の景色にあこがれて、「いいなあ、こういう景色は。」と思っているのであれば、そういう人たちに、「いいところでしょう。」と、ちょっと胸を張って、自分たちの田舎の景色を誇りに思うことを始めれば、だんだんと地域活性化が始まるのではないでしょうか。

 

そういう田舎の景色って、どう見せたら「いい景色ですねえ。」となるのかといえば、私はローカル線の列車を景色の中に置いてみるだけで、景色が引き立つと考えています。

つまり、自分たちの力で頑張って残して、守って来たローカル鉄道が、今、田舎の景色の引き立て役になっているのではないでしょうか。

 

▲いすみ鉄道沿線の田園風景。

田んぼには水が張られ、所々で田植えが始まっています。

昔ながらの農家と桜。

これだけでもいい景色ですよね。

▲でも、その景色の中に、ローカル線の古い列車を置いてみると、単なる田圃の景色が引き立つと思いませんか。

これが風景の価値であり、ローカル線の価値だと私は思います。

そして、そういう日本の田舎の風景の価値をわかる人たちが、沿線にたくさん来ているのです。

 

 

 

 

▲日曜日の朝8時半に田んぼの真ん中にたくさんのカメラマンがスタンバイしています。

8時半にここに来るためには、いったい何時に家を出ているのかを考えると、彼らがこの地域にどういう思いを抱いているかがよくわかると思いませんか。

 

▲そこへお目当てのキハがやってきました。

汽笛を鳴らしながらゆっくりと通り過ぎて行きます。

 

はい、これで終了です。

 

▲皆さん撤収です。

田んぼの道をとぼとぼと歩き始めました。

▲と、そこへボンネットバスが向こうからやってきました。

このボンネットバスはいすみ市が春のイベントのために呼び寄せた応援団のメンバーが所有するバス。

国吉から大原の港の朝市へ向かうところでした。

▲でも、撤収していた皆さんはほとんど気づかずに、そのわきをバスは通り過ぎて行きました。

 

バスだって、田舎へ来ると、絵になりますねえ。

 

やっぱり、田舎の景色は素晴らしいと私は思うのです。

 

▲ちなみにこのカットは同じ時に上総中野の渡辺新悟さんが撮影したもの。

 

流石ですねえ。

 

渡辺さんのすごいところは、地元民でありながら、地元の景色の素晴らしさを十分に知っているということ。

私が渡辺さんの写真を折に触れてご紹介しているのは、地元の人が見たいすみ鉄道を、少しでも都会の皆様方に見て知っていただいて、「いいところだなあ。」と思ってもらいたいのと、「へえ、こんなアングルもあるんだ。」と、沿線の開拓もしていただきたいと思っているからで、そうすることによって、地域の景色の素晴らしさがどんどん広がって行けば、地域の価値そのものが上がると考えているからです。

 

日本って素敵な国だと思いませんか。

 

そして、それをわかり易く表現するのは、やっぱりローカル鉄道あってこそだと、私は子供のころからずっと信じているのです。

 

▲本日の新田野付近。(撮影:田中しほさん)

田植えが始まりました。

桜は終わりましたが、これから秋の収穫まで、また、日本の素敵な景色が沿線に広がります。