皆さん、アチハ株式会社さんってご存知でしょうか?
B to Bの会社で、一般の消費者とは直接のお付き合いがない会社ですから、聞いたことがない方も多いと思います。
でも、このアチハ株式会社さんは、いすみ鉄道が一番お世話になっている会社で、ということは鉄道ファンの皆様方が一番お世話になっている会社なんです。
どういう会社かって?
実は、いすみ鉄道のキハ52やキハ28をはるばる北陸から運んできてくれた会社なんです。
いすみ鉄道だけではありません。
東日本大震災で取り残されたJRの車両や、熊本地震で同じように取り残された車両の救出をしたり、大阪の交通科学館の車両を京都の梅小路に運んだり、各地で解体されそうになっている車両や機関車などを運び出して解体されないようなお手伝いをしていただいている私たち鉄道ファンにとって見たらとてもありがたい会社です。
でも、裏方の業界ですから、誰も会社名を知らないという、日陰の存在の会社なんです。
もちろん、車両を運んでいただくのは大きな仕事ですから、多額の金額です。
でも、いすみ鉄道がキハ52やキハ28を運んでもらおうと数社に見積もりを依頼したときに、アチハさんは驚くほど安い金額で、はっきり言って一ケタ違う。
社長さんが、「1両でも解体しないで姿を残せるのなら、自分のところが協力しますよ。」と言って、引き受けてくれたという、救世主のような会社で、いすみ鉄道とはもう6~7年のお付き合いなんですが、そのアチハさんの社長さんに、いつだったか、私が相談したことがあるんです。
「何とか、ローカル線に蒸気機関車を走らせられないか考えているんですが・・・」と。
実はいすみ鉄道のような国鉄の赤字ローカル線を引き継いだ第3セクター鉄道では、沿線住民の皆様方が、「SL走らせたいねえ。」とどこへ行ってもおっしゃっている。なぜなら昭和40年代末期まで、どの路線でもSLが走っていたわけで、皆さんとても懐かしがっていらっしゃるのです。
私も、もちろんSL世代ですから、そりゃあ走らせたい。
でも、そのためには数億円というお金がかかるんです。
だから無理なんです。
でも、私は、ローカル線を支えてきてくれた地域の人たちを喜ばせてあげたいと思っていて、それをアチハの社長さんに相談したんです。
そうしたら、社長さんは、「それならうちの会社でSLを所有しましょう。そして必要なところへ貸し出しますよ。そうすれば、少ない費用で、所有することなく、必要なときにSLが走れるんじゃないでしょうか。」という話になりまして、それから一年も経たないうちに、「SLレンタルビジネス」というのを考えてくれました。
実はこれは火を焚いてボイラーを加圧する方式ではなくて、圧縮空気で動かすという方式で、御殿場線の山北駅に保存されているD52もこの方式で今動態化しているのです。これだと費用がとても少なくて済みますから。
ということで、まだまだ始まったばかりのSLレンタルという考え方ですが、今、徐々に言われてきているシェアリングという考え方と同じものです。
その展示会が東京ビッグサイトで開催されていまして、今日、私はビッグサイトの「テーマパークEXPO」という展示会へお邪魔して、アチハさんのブースを訪ねてきたのです。


▲アチハ株式会社の阿知波社長さん(右)と島部長さん(左)
若いイケメンの社長さんですが、地域貢献を真剣に考えていらっしゃるありがたいお方です。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この圧縮空気でSLを動かすという方式は恒松さんという元国鉄職員の方が編み出した方法で、私とアチハさんも恒松さんとチームを組んで、このプロジェクトを進めていたのですが、先日その恒松さんが交通事故で急逝されてしまいました。私たちは大変驚き、ショックで眠れない日々が続いたのですが、そういう時だからこそ、恒松さんのご意志をきちんと後世に残そうということで、今、なんとかSLを各地で走らせる計画を実現したいと考えているのです。
これは一つのビジネスです。
ビジネスというと毛嫌いする人もいらっしゃいますが、きちんとビジネスモデル化できない限り、実現はできませんし続けることもできません。ローカル線もそうですし、ブルートレインなどもビジネスモデルとして成立しなくなったことが、存続できなかった理由です。だから、私はローカル線を存続させるためにビジネスモデル化しているわけで、だとすれば、SLだってきちんとビジネスモデル化できれば、全国の田舎の町で汽笛を響かせることはできるはずです。
そうすれば、ローカル線が走る地域が、ますます元気になる。
私はそのように考えております。
SLと言えば、やっぱデコイチだな。
どこかにデコイチ、ないかな。
(ひとりごとです。気にしないように。)
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