棚田とローカル線

国会答弁で安倍首相が棚田について発言されていました。

 

農業関係の議員さんから、

「農業を取り巻く環境は厳しい。TPPや大規模法人化などで、収益性や効率ばかりが重要視されている。家族で経営しているような小さな農家や、棚田のような効率の悪いところは、このままで行ったら立ちいかなくなることは目に見えているのではないか。総理としてはこのことをどう考えられているのか。」

こういう質問に対して、安倍総理は、

「棚田は私たち日本人が昔から耕作してきた農地で、今では景観としても素晴らしい。情報発信の仕方によっては、地域の観光資源にもなるし、外国人観光客だってくるようになる。だから、しっかりと守っていかなければならない。」

と、ご自身の地元である山口県長門市の棚田を例に挙げて、国会でこのように述べられていました。

 

日本人が、狭い地域でも米を収穫して、地域の人たちが暮らして行かれるように、昔から作られ、守られてきたのが棚田です。

それが、手間はかかるし、その割には収穫量が低いから、市場を開放して外国から安いコメが入ってきたら、棚田なんかひとたまりもない。もう要らないから、やめてしまおう。

そう言われるのかと思っていたら、そうじゃない。地域の資源として大切なものであって、活用の仕方によっては、そこからいろいろな恵みを得ることができるから大切にしていくべきだという発言をされたのには、私は驚きとともに、少しうれしい気持ちになりました。

 

なぜなら、この「棚田」という言葉を、そっくりそのまま「ローカル線」という言葉に置き換えることができるからです。

 

高速道路や新幹線ができれば、生産性が低い棚田と同じように、ローカル線だって、時代おくれのものとしてとらえられてきました。

大規模農業がまかり通れば、手間やコストがかかる割には収穫量が少ない棚田の米は勝負になりません。

それと同じように、高速道路や新幹線が走れば、ローカル線などは生産性が低くてコストがかかりますから、輸送機関としては不要だと考えられます。

でも、棚田の景観が目を見張るように美しいのと同じように、田舎の景色の中を走るローカル線のシーンは、これもまた美しいものでありますから、私は情報発信の仕方次第では、地方が活性化するツールになると考えているわけで、だから、輸送機関としての使命だけならばバスで十分かもしれないけれど、せっかく先人たちが建設し、先輩たちが守り抜いてきたこのローカル鉄道を自分たちの代でおしまいにするのではなくて、ちゃんと使って、地域も一緒に浮上しましょう。ということが私がいすみ鉄道で取り組んでいるテーマでありますが、棚田を例に、総理大臣が言われたことが、全く同じことなのですから、私としては、国の偉い人たちも少しは気が付いてきてくれているのかもしれないと、ちょっとだけうれしくなったのです。

 

野党の女性党首だったら、

「バスじゃダメなんですか?」

と、追及されそうですが、それに比べたら自民党は地方のことを理解しているなあと、田舎にいると感じます。

 

 

 

 

 

 

渡辺新悟さんの今週の作品。

いいでしょう、ローカル線が走る田舎の景色。

都会の人から見たら、「いいなあ、行ってみたいなあ。」と思える景色です。

日本には絶対に田舎が必要です。

そしてその田舎にはローカル線が走っていることが、重要なポイントなのだ、と私は思います。