いすみ鉄道のキハの現状

 この間の日曜日、踏切事故でキハが動けなくなった日のことです。
大多喜駅のホームで職員に食って掛かっているおじさんがいました。
話を聞くと、「せっかく写真撮りに来たのに、何で走らないんだ!」と言っています。
きっと、この人、自分が何を言ってるのかわかっていないんだろうなあ。
私はそう思いましたが、うちの職員は丁寧に「すみません。」と誤っていました。
そのおじさんは私を見つけると、
「おっ、社長。せっかく写真撮りに来たのに、何で動かないんだ!」と同じことを言います。
相手が私なので少しは口調がやわらかでしたが、明らかに「せっかく来たのに動いてないとはけしからん。」という意味が込められていました。
「あのねえ、あんたに写真を撮らせるために走らせてるんじゃないの。自分がクレームしてることの意味わかってますか? そういう言い方をすると、自分が馬鹿だってことを人様に言いふらしているようなものですよ。」
だいたい、勝手に写真撮りに来て、動かないからって文句言うのって、そういうクレームする権利はあなたにはないのです。
ショートテンパーな私は、心の中ではそう思いましたが、実際には、
「すみませんね。踏切事故で動けなくなりましたから。」とだけ言いました。
そのおじさんは、「じゃあ、しょうがねえなあ」と言いながら、入換で車庫に入るキハを写してましたが、クレームを受けていたうちのスタッフも、自分が、あるいは会社が受けるべきクレームではないことはわかっていても、「せっかく来たのに気の毒だなあ。」という気持ちから、丁寧に謝罪していたのだと思います。
いすみ鉄道のようなローカル線は、ファンになっていただくこと、ファンを増やすことがとても大切な仕事ですから、一度も来ないのに「いつか行こう。」と思っている人や、「今度の休みには行こう。」と思っていてもなかなか来れない人の気持ちにもこたえてあげたいと思いますし、気に入ったローカル線があれば、時刻表を見ながら、遠くにいて思いを馳せるだけでも、幸せな気分になれるのがローカル線の力ですから、私は同好の士であるそういう人たちも幸せになってもらいたいと思います。
中学3年生のころ、SLが今年限りで終わると言われていて、でも、受験勉強でとても見に行くことができませんでした。
私の頭の中には室蘭本線の225列車や224列車といった列車番号が駆け巡り、時刻表と時計を見比べながら、「あ、今、追分を出たな。」などと空想をめぐらせていました。
今のようなモバイルなど考えられない時代ですから、空想しかなかったんですね。
そういう時代を過ごしてきた自分としては、「なかなか行けないけれど、いつかは行ってみよう。」という人たちを少しでも幸せにしてあげることもローカル線の仕事だと考えているわけで、だから、こうして毎日ブログを更新して、状況をお知らせしているわけです。
ということで、キハの現状です。
キハ52は踏切事故で床下の空気の配管に故障が出ました。
衝撃で配管が曲がり、つなぎ目から空気漏れを起こしていました。
でも、幸いなことに元空気ダメタンクは無傷でしたので、配管の継ぎ手を取りかえるだけでなおすことができました。配管の継ぎ手も特殊なものでしたが、影山さんが他社で廃車になったキハから部品取りをしていてくれたので助かりました。
しかしながら、踏切事故の前から中野方のエンジン1台が不調で、現在、片エンジンで走行しています。
このため、エンジンに負担がかからないように冷房を停止しています。
エンジンが直る見込みはたっていません。
キハ28は冷房用発電機を回す4VKと呼ばれるエンジンの3本並行しているファンベルトのうち、1本が切れてしまいました。
2本でも通常の運用が可能ですが、負担を軽減するために冷房を停止しています。
レストラン運用時以外は冷房を作動させずに運用しています。
その他は問題ありません。
以上のような状況です。
キハ52は今から5年前の2010年に大糸線でさよなら運転をして、2011年発からいすみ鉄道で営業運転に入りました。当初の計画では昭和40年製という車齢を考えると、「せいぜい5年程度でしょう。」と思っていましたが、すでに4年が経過していますから、やはりそれなりのくたびれ方をしてきたということでしょう。
私は、「さよなら運転」のようなFuneralを企画する考えはありませんので、いつか、突然、終わりが来ると考えて下さい。そして、その時はそれほど遠い将来ではないのではないか。
この夏の一連のトラブルで、そのように考えることにしました。
予備車として準備してある国吉駅のキハ30は資金調達がうまくいかず、車籍復活できません。
キハ28のコンディションはまずまずですが、キハ52が動かなくなるとキハ28も運用できなくなりますから、同時におしまいになります。
ということで、もう一度私からのアドバイス。
「早く来た方が良いですよ。写真を撮るのも、乗るのも今のうちでしょうね。」
良いですか、皆さん。
社長がここまで本音トークしているのだから、ちゃんとWEBショップで商品を買って売り上げに貢献すること。
1000円、2000円で、私は貢献した! などと言わないこと。
キハ30の車籍復活には2000万かかりますから。
ふるさと納税はダメですよ。
WEBショップじゃなければいすみ鉄道にはお金が入ってきません。
何も買うものが無かったら、車両オーナーになりましょう。
2~3口なら、安いもんでしょう。
そういう皆様方の思いが、集まって形になるのです。
とりあえずいすみ鉄道でキハ52やキハ28が今でも走っているという形にした私が言うのですから、正しいのです。
さて、今月のwebショップの売り上げはどれだけ行くかなあ。
これだけ言って、数字が変わらなかったら、そういうことなんだと私は理解したいと思いますが、いかがでしょうか。
写真撮るだけでもいいから、早くいらっしゃい。
いすみ鉄道は写真撮りに来るだけの人も大切にする数少ない鉄道会社なのですから。