皆さん、誤解ですよ。

1月3日の朝日新聞に「2014年のbe人気記事」という特集が掲載されていました。
反響呼んだ情熱と明確な戦略と題して、2014年の「be」の人気記事ランキングが紹介されていましたが、「フロントランナー」で私のことを書いていただいた記事が第2位にランキングされていました。
山本昌さんを抜いての2位ですから大変名誉なことでございます。


その記事を引用させていただきますと、
2位は鉄道マニアの夢を実現して第3セクター「いすみ鉄道」の社長になった鳥塚亮さん。「乗る人も働く人も鉄道を愛する人が集まる。それこそがローカル線ビジネスの神髄なんです。」鉄道への情熱と明確な戦略との同居。「同い年でもあり、ちょっとうらやましく読ませてもらいました。」(長野、53歳男性)
「鉄道オタク」に始まり、それを仕事にするまでのご苦労に敬意を表する。自分もそんな人生を送ってみたい。(岐阜、54歳男性)
このように書かれてしまうと、私の仕事がとても順調でうまく行っているような、成功者の一人に見られてしまいがちですが、皆様、それは誤解です。
実際には給料は減らされ、社長とは言え、会社に請求できない領収書の山の中で持ち出しばかりが多く、自分の財産を処分しながらの、その名の通り「金を失う道=鉄道」路線をまっしぐら。
岐阜県の54歳の男性に申しあげたい。
「決して進んではいけない道ですよ。」
長野県の53歳の男性にも申し上げたい。
「うらやましく思っているのが幸せということなんです。」
いすみ鉄道沿線地域で、いすみ鉄道はどのように思われているか。
町の皆様方からは、「ずいぶん儲かってるねえ。」「すごいねえ。」とあいさつ代わりに声を掛けられます。
これだけテレビに出たり雑誌で取り上げられている。
13000円とか22000円もするグルメ列車が連日満席で座席が取れない状況にある。そういうニュースばかり見ている地元の人たちは、「いすみ鉄道はずいぶん儲けているんだねえ。」という気持ちというか認識なんです。
でも、種明かしをすると、例えば13500円もするイタリアン列車で、お客様にお支払いいただいたうちの約8割はお料理とお酒代として消えていきます。旅行会社への手配料金やインターネット決済料金も取られます。消費税8%は価格に含まれています。そしてお土産が付きますから、いすみ鉄道の取り分として純粋に残るのは1500円なんです。この金額はお客様にお渡ししている急行券付フリー乗車券の金額。つまり、いすみ鉄道は鉄道事業者としての収入をいただくだけで、あとは地域に還元するというのがポリシーですから、手元には残りません。
利益は出ないんです。
考えてみればすぐにお分かりいただけると思いますが、皆様方がレストランへ出かけたとします。食材にコストをかけているレストランと、食材をケチってできるだけ安く上げようとするレストランと、どちらへ行きたいと思いますか?
同じ金額を払うとしたら、食材にコストをかけてできるだけ良い材料を使っているレストランの方へ誰でも行きたいのではないでしょうか。
食材のコストを抑えて、大した料理も出さないようなお店には行かないでしょう。
これが基本だと思っていますから、シェフや板長にお願いして、できるだけ地域の良い食材を使ったお料理を、ボリュームたっぷりでおなか一杯になるほど出してもらっているし、ワインやお酒のお金だって、気にしないでお飲みいただけるように、ドリンク代金も含まれているのです。
だから、一度ご乗車いただいたお客様が、何度もリピートしていただくわけで、だからいつも満席なんですね。
これが私のやり方で、すなわちいすみ鉄道のポリシーでありますから、ローカル線としては鉄道運賃収入を求めるにとどめて、あとは地域にお金が回るシステムにしているんです。
商売ができない人は、一度来たお客様からできるだけふんだくろうとしますから、コストを低く抑えて、できるだけ安い材料を使って利益を出そうとするでしょう。そしてそういうお店にはお客様はもう一度行こうとは思わないんじゃないでしょうか。
ということで、いすみ鉄道は全然儲かっていないし、私自身も皆様方からうらやましがられるような状況ではないのであります。
これも考えてみればすぐにお分かりいただけると思いますが、儲かっていて順調ならば、社長が大晦日の終夜運転に自ら乗車したり、元日から働いたり、自分でもなかの餡子詰めをするわけないのですよ。
儲かっている人なら、お正月は南の島でしょう。
はい、これが現実でございますから、皆様方、決して、いすみ鉄道は儲かっているなどとは思わないでいただきたい。
これ、私からの今年最初のお願いでございます。
「儲かる」という字は「信ずる者」と書きます。
私は、今年も、自分のやっていることは正しいと信じて、驀進していく以外に方法はありません。
なぜなら、漕ぐのを止めた途端に倒れるからです。
どなたか、こんな私を個人的に支援していただける奇特な方はいらっしゃらないでしょうか。
篤志家の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。