私が鉄道に乗らない理由。

私は移動は基本的には飛行機です。
地方へ行く仕事が多いので、飛行機には年間60回ぐらい乗ります。
今年ももう50回ぐらい乗ってますが、それに対して新幹線はというと、今年はまだ13回(片道一乗車として数えて。)
山陽新幹線1回、九州新幹線2回と東海道新幹線4回、そして東北上越新幹線6回です。
新幹線に乗る場合もたいてい東京駅まで車で行って、八重洲の地下駐車場に車を停めて乗り換えます。飛行機はもちろん空港まで車です。
鉄道を利用しないのは新幹線だけではありません。
地元の京成電車に至っては、一番最近乗ったのは2か月半前の7月1日。自宅を出て錦糸町の東京商工会議所墨田支部に打ち合わせに行った時が最後です。(でもこれは、車で移動している生活ですから、新幹線と比較はできませんね。)
鉄道会社の社長が車と飛行機ばかりで鉄道を利用しないというのはけしからん。
そう言われる方も多いのではないかと思いますが、なぜ鉄道をあまり利用しないのかと聞かれて一言で言うとすれば、「嫌いになりたくないから。」とでも言いましょうか。とにかく鉄道に乗るとムカつくことが多いのです。
世の中には色々な人がいますし、最近の若い人たちの行動を見るのは人間ウォッチング的にはとても面白くて、その意味では鉄道は楽しいのですが、ムカつくというのは鉄道関係の職員であったり、駅構内の様子であったり、車両であったり、私の好きな鉄道を鉄道関係者が台無しにしている点がよく目につくからです。
国鉄からJRになって25年も経過すると、大学を出てJRに入った人間も40代後半になる。つまり、鉄道会社のほとんどの人間が国鉄時代を知らないわけで、そういう人たちが経営の幹部になってきていますから、自分たちの会社がどういう成り立ちで出来上がっているかなどということは知らないわけで、かつて国民に大迷惑をかけて、国鉄の赤字は、例えばたばこ税の増税などで国民に負担を押し付けてきたなどということは、若い職員は知らないだろうし、おそらく知ろうとしないし、多分会社も教えようとしない。
そういう人間たちが偉そうな顔をして、「私たちは民間会社です。」などと言っているのを見たり聞いたりするとムカつくわけで、負の財産を国民に押し付けて、自分たちは構内営業権などの正の部分の財産だけを主張して、鉄道敷地内でさも当たり前のように理念のない商売をしているのを見ると腹が立つわけです。
会社全体のポリシーかどうかは知らないけれど、「私たちは民間会社です。」と言っているわけですから、「ばかだねえ君たちは。民間会社の人間は自分で自分のことを民間会社ですとは言わないし、そんな発想になること自体が、上から目線なんだよ。」と言いたくなるわけです。
でも、まあ、冷静に考えて見ると、私がそういう気持ちになるのは自分が国鉄に入ることができなかったからで、つまりは50おやじの負け惜しみのようなものですから、何も知らず、何も教えられずに現場で頑張っている若い職員に向かってそんなことを言っても、おっさんのたわごとなだけで、自分自身が情けなくなるだけですから、乗らないようにしようと、第一選択肢から外しているわけです。
そんな私が冷静になったついでに「どうして飛行機ばかりに乗るのだろうか。」と考えてみたのです。
私は航空会社に長年勤めてきましたので飛行機は身近な存在です。最近では航空運賃もずいぶん割安感が出てきましたし、何よりスピーディー。先日も熊本で午前中仕事をして、午後には東京に戻っているのですから新幹線では絶対にマネできない芸当です。そういう交通機関(移動手段)としての便利さはもちろんなんですが、飛行機を利用するのは目的地へ行くための合理性という理由だけではなく、もっと別な理由がある。
それは、何度乗っても、その度にワクワクするからなのです。
晴れたり雨が降ったり風が吹いたり、お天気は毎日違います。
そうすると飛行機はその時々で飛び方が変わります。
離陸するコースも着陸するコースも違うし、景色も違います。
飛行機には色々な機種があります。
大きい飛行機から小さい飛行機。ジェット機からプロペラ機まで様々です。
お客さんとして乗っているだけでもそれぞれの飛行機の違いが分かりますし、景色の見え方も違います。
もちろん、ニコニコ笑顔のきれいなお姉さんが乗っているのも重要なファクターです。
そういうことが複合的に絡み合って、毎回毎回フライトごとに様々なワクワク感が、1000回以上も飛行機に乗っているけれど、今でも乗る度にあるのです。
これは、悪いけれど新幹線や鉄道には絶対にまねできないことで、速度で負けているうえにワクワク感がないのですから、東京から名古屋の距離であっても、私は飛行機を選ぶわけです。
ところが、鉄道会社の人たちは鉄道会社しか知らない人たちがほとんどで、鉄道会社の目線で自分たちの商品である輸送を考えているから、できるだけ大量の人を、できるだけ高速度で、できるだけ効率的に目的地へ運ぶことが至上命題だと考えていて、それが正しいと信じている節がある。
私などは、山陽新幹線のレールスターや九州新幹線の車両が東京駅に入ってきていたら、N700なんかよりずっと魅力的だから、多少スピードが遅くてもワクワクしながら絶対にそちらに乗るけれど、あれだけワクワクした500系を締め出した名古屋の会社は、自社線内に不ぞろいな他社の車両が入ってくるなどとんでもない、と言わんばかりで、高速で均一的な大量輸送を提供しているのが正しいことだと全職員が胸を張っているように見えるのがムカつくわけです。
(話が戻ってしまった。)
そして、その極めつけが昨今話題のリニア新幹線。
私は世の中の人たちがどうしてこんなに「リニア」「リニア」というのが理解できないんです。
自分がその時まで生きているかどうかわからないけれど、8割がトンネルのリニア新幹線がワクワクするのはたぶん最初の1~2回で、その後は輸送手段として、配送センターや病院に張り巡らされたチューブの中を行ったり来たりする伝票のように、人間がただ運ばれていくだけの輸送システムは、どうなんだろうねえ。
ましてやどうして名古屋なの。どうして東京―大阪じゃないの。
それが正直な気持ちです。
名古屋の会社らしいと言えばそれまでだけど、世の中どう考えても東京―大阪であって、名古屋は中間地点。東京と大阪の間にあるから価値があるわけで、輸送区間としての最大ボリュームは東京―名古屋じゃないでしょう。
リニア新幹線ができたら、アツアツのエビフライと手羽先を冷めないうちに東京まで配達してもらえるようになりますね。
のぞみから見た時間短縮は、その程度のもんじゃないでしょうか。
前の会社にいた名古屋出身の同僚の誇らしげな顔が脳裏にちらつく今日この頃であります。