ムカつく姉ちゃん、ムカつくオヤジ

先日、国際免許証を取りに出かけた時のこと。
自分の番になって交付窓口に呼ばれました。
窓口のお姉さんから国際免許の注意事項をいろいろ教えてもらい、いざ、手渡されるという時に、
「ここに、筆記体で署名してください。」
と言われました。
ああ、筆記体とはなんとノスタルジックな響きであろうか。
思い起こせば40年も前、中学校の英語の時間に教わったなあ。
で、私は固まってしまった。
思わず、隣にいた大学生の息子に、「筆記体ってどうやって書くんだっけ?」
40年ぶりにその言葉を聞いて感傷に浸っている場合ではない。
筆記体など社会に出てから使ったこともなければ書いたこともない。
すっかり記憶から抜け落ちてしまっているのです。
窓口のお姉さんはじっと私を見ている。
「この人、英語も書けないなんて馬鹿じゃないの?」
「うるせえ、お前さんは知らないだろうけど、俺は日常会話も英語だし、物を考えるんだって英語で考えるんだぞ。」
「だったら早く書いてみなさいよ。私の目の前で。さあ、早く。」
という会話はなかったけれど、たぶんお互いに心の中はこんな感じ。
まさか、警察や公安委員会が署名やサインというのは筆記体でするものだと規定しているわけじゃないだろうけど、なぜ筆記体なんだ。
アメリカでもイギリスでも、筆記体など使わないし、学校の授業では筆記体は禁止だぜ。
なぜなら、何て書いてあるかわからないから。
医者のカルテだって最近は日本語だぞ。
結局しどろもどろで、筆記体もどきでその場を何とかごまかした。
空港へ行ってチェックインカウンターに近寄ると、向こうからお姉さんがやってきて、人のことを上から下まで眺めた挙句、
「お客様、ビジネスクラスですか?」
と聞く。
私はファッショナブルではないし、持ち物もそこら辺の店で売っている安物だから、どう見てもビジネスクラスに見えないらしい。
だからといって、そういう聞き方をするとは、従業員の教育がなってない!
私が航空会社でカウンターの責任者だった時には、部下にはそういう聞き方は絶対にさせなかった。
「いらっしゃいませ。カウンターはファースト、ビジネス、トラベラークラスに分かれています。」
こういえば、お客様は恥をかかずに自分のクラスに行く。
自分がどのクラスかわからないという人は、ほぼ100%エコノミークラスだから、そちらにご案内すれば問題は解決する。
こちらに向かってくるお客様へ、「ビジネスクラスですか?」とか「エコノミークラスですか?」と聞くことは、お客様にとってみればムカつく以外の何物でもない。
聞いた相手がビジネスクラスの予約を持っていたら、「どうせ俺はビジネスクラスには見えないだろう。」とお客様の方が思うし、
相手がエコノミークラスだったら、「どうせ俺はエコノミーの客にしか見えないだろう。」と思うわけで、いずれにしてもムカつく。
特に日本の航空会社はこういう傾向があって、今でも平気で「エコノミークラス」という言葉を使うけど、英語圏の航空会社はエコノミークラス何て言葉は使いませんよ。
だから、本日はどちらのクラスをご利用ですかとたずねたとしても、外人は
「TRAVELLER」とか「MAIN CABIN」って答えます。
こういうデリカシーが日系の会社にはないから、そんなことではLCCにかないっこない。
ざまあみろだ。
私などは航空会社の上級カードを持っているから、エコノミークラスの予約でもビジネスクラスのカウンターを利用できるし、保安検査だって優先レーンだし、ラウンジだって入れる。
でも、ビジネスクラスのカウンターに行くとムカつくことが多いから、ビジネスクラスの予約があってもエコノミークラスのカウンターへ行く。
知っててわざとである。
そうすると優先荷物札だって、ラウンジの案内カードだって、エコノミークラスのカウンターにはないから、カウンターの姉ちゃんは大急ぎで向こう側のカウンターから持ってくる。
「最初からビジネスクラスに行けばいいのに。」
きっとムカつくオヤジなんだろうなあ。
エコノミークラスの予約で、上級カードも持っていないのに平気でビジネスのカウンターに来るオヤジも確信犯でムカつくけど、こういうオヤジもムカつくよなあ。
そう思うわけですが、50を過ぎて、そんなことにいちいちムカつくのも大人げない。
だから、結局、最近では予約票を見せて、どこのカウンターに並びましょうか、とたずねることにしているのです。
うちの急行列車のアテンダントも、ある人から見ればムカつく姉ちゃんだろうし、アテンダントにしてみたら、変なおじさんはムカつくオヤジなんだろうなあ。
巷にはどこにでもいるムカつく姉ちゃんとムカつくオヤジ。
そこで、提案です。
どちらがお客様だとか、どちらがサービスする側だとか、そういうことはどうでもよいとして、それぞれの立場で、いちいちムカつくのはやめましょう。
そんなことでいちいちムカついていては、胃腸がいくつあっても足りません。
「ああ、かわいそうな人だなあ。」と思えばムカつかなくなりますから。
いすみ鉄道に観光でいらして、いちいちムカついていたらせっかく来たのに良い思い出ももてませんからね。
私は、いすみ鉄道のオヤジや姉ちゃんにムカついたというような内容のクレームは一切受けませんし、返事も出さないように指示しています。
なぜならば、いちいちムカつくから。
さあ、本日も、心を大きく持って、前向きに生きましょう。