韓国の大統領 その3

韓国が領土問題や従軍慰安婦問題、教科書問題を持ち出すのは、大統領の権威が失墜して政治が傾いた時に使う常とう手段だと申し上げました。
中国も今年国家元首の交代がありますから、何やら強気のムードがある。
でも、それだけではなく、日本側にも付け入られるスキがたくさんあります。
その大きなものは政治の乱れです。
日本ではここ何代にもわたって総理大臣は誰がやっても長続きしない。
その原因は国内にあるわけで、誰がなっても必ず引きずりおろそうとする勢力があって、マスコミもことあるごとに「内閣支持率」などという人気投票を公開するもんだから、せっかくうまくいきかけているものを「やっぱりだめか。」という気運が支配してしまうことになります。
韓国や中国には日本のような「謙遜の文化」というものがあまりありませんから、とにかく強気に出てくる。
竹島にしても尖閣にしても、欲しいものは「これは自分のものだ。」と主張するのはそのためで、そんな人たち相手に下手に出て接していてはなめられるばかりです。
私がイギリスの会社にいた時に、一番厄介者と思われていたのはユダヤ人です。
ロンドンやニューヨークにはユダヤ人の社会があって、彼らは独特の考え方で生きている。なぜ厄介者かというと、彼らのその独特の考えが、私たちの考えや常識とは相容れないからです。
例えば、ユダヤ人のお客さんがお店に入ってきて、1000円の商品を買おうとします。
レジの人が「はい、1000円です。」と言うと、彼らは
「どうしてこの商品が1000円なんだ。いったい誰が決めたんだ。500円にしろ。」と言うわけです。
日本人は、これに面喰います。
そして、定価が決まっているものを値引きしろと言われること自体に「いやだなあ、こういうお客さんは。」という気持ちになります。
市場なら別ですが、定価販売が前提のコンビニや個人商店でいちいちこれをやられては不愉快ですから、「ユダヤ人はいやだなあ。」ということになるのです。
私が最初にこういうお客様に接したのはまだ20代の時でしたが、「この商品は1000円だということを誰が決めたんだ。値段というのは売り手と買い手の交渉で決まるものだ。」という考え方に「へえ、面白いなあ。」と思いました。
それから、仕事の上でたくさんのユダヤ系の人と接し、ユダヤ人の考え方や社会を色々と勉強していく中で、彼ら独特の付き合い方があるものだということがわかってきて、一旦その流儀がわかってしまうと、普通の人が「いやだなあ、ユダヤ人は」と思うところが全然いやではなくなったのです。
相手が1000円の品物をレジに持ってきて「これを500円にしろ。」と言ってきたら、私なら
「そうだなあ、今日は特別にあなただけ1500円にしてやるよ。」と言います。
お客さんは「お前、何を言ってるんだ、おれは500円にしろと言ってるんだぞ。」と言いますから、
「ああ、解ってるよ。だから1500円なんだ。お前には売りたくないってことだよ。さっさと店から出て行け!」と言うのです。
日本人の常識では、お客様に対して失礼だということになりますが、全然失礼ではない。お客だからといってすべてを受け入れる必要はないし、自分の店にふさわしくない客であれば、できるだけ早い段階で毅然とした態度で排除しなければならないのが世界の常識なのです。(これはクレーム処理も同じで、難癖をつけてくるクレームには毅然とした態度で接したり、そのクレーム自体を断ったりすることが日本人にはなかなかできないのですね。私はやりますが。)
「お前には負けたよ。じゃあ800円でどうだ。」
彼はこう言いますが、私が、
「うるさい、1500円だ。イヤならさっさと帰れ。」
と言うと、お客は店から出て行こうとします。
実はここが勝負どころで、お客の方が本当にその商品が欲しければ、店の出口で立ち止まって、もう一度レジの方に進んでくるし、店の方が本当に商品を売りたければ、お客が半歩店を出ようとしたときに、
「ちょっとお客さん、少しぐらいなら勉強するよ。」と店の方から声をかける。
ニューヨークやロンドンの土産物屋でこういう経験をしたことがある方も多いと思いますが、これが交渉の文化で、日本人は特にこれが苦手なだけの話なのです。
でも、苦手だからと言って手を打たないわけにはいきません。
尖閣も竹島も日本の領土ですからね。
領土というものにあまりにも鈍感になりすぎているのが今の日本人ですが、国家の主権にかかわることですから、好き放題言わせること自体がいけないのです。
つまりクレームだとしたら、いちいち受け答えしてはダメなのです。
日本が抱える領土問題というのは2種類あって、ロシアとの関係は、すでにとられてしまった北方領土を取り返すという領土問題であり、竹島や尖閣は、日本の領土に対して彼らが侵略してきている領土問題です。
ロシアから取り返す領土問題は、既に相手の手中にあるものを取り返すわけですから、「交渉事」になります。
交渉事ですから、値段の交渉と同じ要領が必要です。
「4島すべて返してくれ。」と叫び続けて、2島帰ってくれば御の字だと思いますが、竹島や尖閣は、自国の領土を相手が侵略してくることですから、交渉事ではありません。
毅然とした態度が要求されるもので、ここでヘラヘラしていたら、交渉事に持ち込まれてしまうわけですから、今が一番肝心なときなのです。
私がこういう意見を書くと、タカ派とか右翼的だとかいう人もいるでしょうが、私はいすみ鉄道とその沿線地域をこよなく愛する人間です。千葉県大好き人間です。
ということは、北海道から沖縄までの日本全体が大好きなわけであって、本当だったらアジアも好きだし、世界全体が好きだと言いたいわけですが、そこには深い大人の事情があって、好きだとか嫌いだとか言う以前の問題があるのです。
尖閣も竹島も「たかり」のような話ですから、そういう相手に対してはとりあえず、円借款などの経済的支援をすべて凍結して、「あなたの国は立派になりましたから、もう不要ですね。」とさりげなく言ってみるぐらいの政治家はいませんかね。
「もう戦後は終わっている。」と。
こんなことはあたりまえのことなんですからね。
さあ、これからいよいよ始まりますよ。
相手の出方を見るときに、どこまでがはったりで、どの部分が交渉事なのか。
日本政府が毅然とした態度を示すということはどういうことなのか。
相手の出方に一喜一憂せずに、今、相手のシナリオのどの部分なのかということを考えながら時流を見るとても良い訓練になることだけは間違いなさそうです。
(おわり)