ローカル線をブランド化する。

私がいすみ鉄道にやってきたのは2009年の6月末です。
今からちょうど3年前ですね。
あれから3年経ちましたが、今から思えば、「もう3年」でもあるし、「まだ3年」でもあります。
その3年前に私が考えていたこと。それは「ローカル線をブランド化する。」ということです。
ローカル線という商売は、人口が少ない地域で、利用者も減少し、赤字は拡大するというジリ貧の商売です。
でも、よく考えて見ると、「ブランド化に適している。」と私には見えたのです。
その理由は、まず、列車本数が少ない。
ということは、供給できるサービスが限られるわけです。
簡単に言えば、1日限定100席とか、そういう希少性を世に問うことができる商売です。
そして、ローカル線は他に移動することができません。
普通の商売は、お客さんがいるであろうと見込まれるところに店舗を作ったり、出かけて行って商売をするものですが、ローカル線はそこから動くことはできません。
つまり、お客さんにわざわざ来ていただかなければならない商売です。
供給できる商品の数が少なくて、わざわざ来てもらわなければならないのですから、これは「ブランド化」に最適な商売と考えたわけです。
ブランドということは、わざわざ安売りをする必要がない商品ですから、だから、私は顧客に媚を売るような、「お願いですから乗ってください。」とか「潰れそうですから応援してください。」というような商売のやり方は一切せずに、「ここは良いところです。この良さをわかる人にいらしていただきたいと思います。」と情報を発信してきました。
商売というものは、器というものがあります。
自分が対応できるお客さんの数には限りがありますし、会社の体制にも限界があります。
だから私は広く一般の人に来ていただくような「一般的観光地化」させることはせずに、特殊化したビジネス。つまり、「良さがわかる人だけに来ていただければよい」というスタイルのビジネスに取り組んでいるのです。
それが「ムーミン列車」であって、「昭和の国鉄」なのです。
首都圏には3500万人の人口があります。
私がターゲットにしているのは、その内の0.5%です。
その0.5%の人が年に2回訪ねてきてくれれば、年間35万人の観光客になります。
1か月にすれば3万人近くの人たちが、観光ですから基本的には土日に集中するわけですから、いすみ鉄道としてはそれだけで輸送対応の限界に達するわけです。
これがいすみ鉄道の「器」であって、所有する車両数や職員の数、線路設備などを考えるとこれが限界なのです。
だから、私はいすみ鉄道やその沿線地域は観光地として万人受けする必要もないと思いますし、「何もないけれど良いところですよ。」と、良さがわかる人だけいらしていただければそれでよいと考えているのです。
今までの日本でローカル線をこのように捉えた人はおそらくいなかったのだと思います。
だから時として「お前のような会社はけしからん。」というクレームを受けますが、簡単な話、観光地としての鉄道ですからクレームするぐらいなら来る必要はないわけで、そういう人はご自身の選択肢からいすみ鉄道を外せばよいだけの話です。
観光鉄道といえば、今の季節で有名なのはアジサイ列車の箱根登山鉄道がありますし、SLだったら大井川鉄道や真岡鉄道、秩父鉄道でしょう。わたらせ渓谷鉄道は最新型のトロッコ車両が走っています。
いすみ鉄道沿線もアジサイが見ごろを迎えていますが、はっきり申し上げて、アジサイ列車としては箱根登山鉄道の足元にも及びません。
渡良瀬川や秩父鉄道が走る荒川上流の渓流はすばらしく、とてもじゃないけれどいすみ鉄道の列車の窓から見る夷隅川とは比べ物になりません。
そんな中でいすみ鉄道としてどうやって勝負をしていくかを考えた場合、投下できる資本がありませんから、万人受けするために、大掛かりな観光鉄道ビジネスを推し進めている各地のローカル線とまともに競争しても勝ち目はありませんので、やっぱりストーリーを作って、それに共感していただけるお客様にいらしていただく以外にないわけです。
本日いすみ鉄道では株主総会と取締役会が行われ、これからも私が代表取締役として継続できることが決まりました。
私はこれからも観光鉄道としてローカル線をブランド化することで、外からのお客様を呼び込み、その結果として地域住民の足を守り、いっしょに沿線地域もブランド化していきたいと考えています。
そのためにはムーミン列車の進化と、キハの増強が必要になります。
私の考えに同調していただける0.5%の皆様、これからもいすみ鉄道にご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。
とにかく今は3000万円必要なのです。
たかが3000万、されど3000万。
この秋以降、またすごいことになりますよ。
ローカル線で同じ夢を共有していただける皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
※明日のビール列車にご予約のマイフレンドの皆様へ。
午後4時以降の列車では大多喜駅到着時に運転士に「ビール列車に乗りに来た」とおっしゃっていただければ、運賃はいただきませんので大丈夫です。
さしあげるお土産が「プチお土産」の予定でしたが、どうやら「プチ」ではなくなってしまったようです。
チョット重くなるかもしれませんがご容赦ください。
おなか一杯、幸せいっぱいのビール列車にしたいと思います。
東君は私の部屋に泊まるつもりで、奥さんに許可をもらってから来てください。
SEE YOU TOMORROW!