おもてなしの心

正直に申し上げます。
私は自分の家に友人や知人が来ることをあまり好みません。
自分の家は自分や家族がくつろげる場所だからです。
だいたい家の中は狭いし乱雑だし、ネコも3匹いるし、それも野良猫を拾ってきた猫だから自慢できるものでもないからです。
だから、自分の家に人を招いてご飯を食べたりお酒を飲んだりする人を私は尊敬するのです。
これを地域に置き換えてみましょう。
今まで、誰も訪ねてこないような地域に、急に観光客が来たりすると、地元の人たちは戸惑うでしょう、ということはよくわかります。
ひっそりとしていたところに、ある日突然見知らぬ人たちが歩き始めるわけですから、
「あいつ誰だ? 見かけない奴だなあ。」
となります。
私がいすみ鉄道に来た3年前は、沿線の人たちはこんな感じでした。
自分の家に誰も招きたくない私としてみれば、ひっそりと自分たちだけで暮らしてきた地域に、突然たくさんの人たちが訪れるようになる戸惑いはよく理解できます。
でも、自分の家と地域は同じでしょうか?
自分の家の中のことでしたら、自分が守ればいいわけです。
自分で稼いだお金で、自分の家族が生活できればそれでいいわけですからね。
でも、地域はどうかというと、人に来ていただかなければ、どんどん廃れてしまいます。
人に来ていただくことで、経済が動き、収入を得られるチャンスが増えるのです。
だから、できるだけたくさんの人に来ていただくということが第一で、来ていただいた人に「この町に来てよかったなあ」と思っていただくことがおもてなしの心だと思うのです。
私が就任して最初に地域の皆様にお約束したこと。
それは、「いすみ鉄道を全国区にする」ということと、「いすみ鉄道がお客様を地域に連れてくる」ということ。
地元の皆様方は、いすみ鉄道が全国区になって、いすみ鉄道が連れてきたお客様を、心をつくしておもてなしをして、「来てよかったなあ」と思っていただいて、リピーターになっていただき、自分たちの商売につなげて、自分たちが儲かって、良くなることが、地元の皆様方のお仕事だと私は考えています。
ところが、これがなかなかうまくいかない。
なぜならば、いすみ鉄道はたった3年で全国区になって、全国からお客様がいらしていただくようになりました。
でも、はたして地元は全国区を受けて立つだけの考え方や体制ができたかというと、そうではないからです。
特に、今まで観光地でもなんでもなかった地域は、そんなこと考えたこともありませんから、自分たちの今までの考え方の延長線上で物を考えようとすると、そやぁ無理な話ですね。
今、田舎こそ、イノベーションが必要なのです。
今度の土曜日、25日に大多喜町の図書館で、いすみ鉄道社長である私の考え方をお話しする機会をいただきました。
地元の人たちには、お客さんとして目的地まで乗車する以外に、「いすみ鉄道を利用する」ということを考えていただきたいと思います。
もうじき圏央道も伸びてきます。
ますます、全国区が加速します。
それに乗り遅れないように。
いすみ鉄道にたくさん人が集まっているのですから、それを利用しない手はないのです。
ここで話題を変えて、マーケッティングのお話。
景気が縮小して、20%のお客様が減少したとします。
業界で1位から5位までの売り上げ店舗を比較してみましょう。
20%お客様が減るということは、どういうことか。
1位から5位までの店舗の売り上げが20%ずつ減少する、ということではありません。
20%お客様が減少するということは、4位と5位の店舗が消えてなくなるということなのです。
この理論でいけば、将来、全国的に田舎の人口は20%以上減少することは目に見えていることですが、市も町も村も、一律20%ずつ人口が減少するわけではなく、力のないところ、対策をとってこなかったところが、行政区として立ちいかなくなる事態となる。
私はこう考えます。
だから、ひっそりと静かに暮らしているだけではダメだということなのです。
誰も来なくて良いのは我が家だけなのです。
皆様、25日、13時半に大多喜図書館でお待ちいたしております。
イノベーション! 体制を変えないと生き残れませんよ。