前回は「外部顧客と内部顧客」についてお話しさせていただきました。
私は外国の会社に長く勤めていましたので、日本の会社で育った皆様には、私の考えには違和感がある方もいらっしゃると思いますが、私が勤めていた航空会社でマネージメント(管理職)トレーニングに使用していた教材プランは、なんと日本のものでした。
ロンドンの本社にあるトレーニングセンターで、数年に一度、1週間とか缶詰めになってトレーニングを受けるのですが、教官が私を指して、
「はいアキラ、カイゼンの意味をみんなに教えてあげてくれ」とか
「ダンドリってどういうことか?」など、クラスの仲間たちに説明するように言うのです。
使用している教材には、カイゼン、ダンドリ、ザイコ、ムダ、ポカミスなどといった言葉が書かれていて、アメリカ人やヨーロッパ人などのクラスメートは、意味不明なそれらの言葉が、日本語の単語であると知って、私の話に耳を立てる。私は、つたない英語で、皆にわかりやすく説明することが何度もありました。
そう、私の会社の本社でトレーニングに使われていたのは、世界のトヨタが生み出したトヨタ生産方式(英語ではTPS:Toyota Production System)だったのです。
TPSの目的とするところは、大量生産(少品種大量生産)の製造ラインを使用した多品種少量生産で、それを実現するためには「ジャストインタイム」方式が最も有効であるという考え方(私は製造業出身ではありませんから間違っていたらごめんなさい)ですが、このTPSのすごいところは、工場などの製造ラインでなくても、いろいろな業種業態に応用することができるという点です。
自動車の生産ラインを、製造から納品、店頭販売までに例えて、コンビニなどの小売業に応用することもできるし、前回お話しした、レストランのように、材料の調達から、調理、配膳、そしてお客様に召し上がっていただくまでの手順も、自動車生産ラインの考え方を利用することができます。
そして、TPSの基本となっているのが、製造ラインにおいて、自分より川下側の製造ラインで働いているチームの作業効率を上げるためには、川上側のチームが、川下側が働きやすいように行程を管理しなければならないということ。つまり、会社で言ったら、部下が働きやすき環境を上司が作ることが、生産効率が上がって、会社が目標としているところに到達するために絶対に必要なことなのです。
自動車の製造ラインがスムーズに流れ、無駄な在庫を抱えることなく、少量多品種で外部顧客の需要にタイムリーに応えるためには、パーツの製造業者など数多くのサプライヤーの協力は不可欠であるし、てきぱきと働ける手順や段取りも大事。そのためには、川上側のチームが、必要最小限度の材料を、必要な時に、必要なだけ届けるように、サポートしてアシストしていかなければ、スムーズな生産ラインを維持していくことはできないのです。
この考え方は業種や業態が違っても、共通していることですから、欧米人はトヨタがなぜ世界一になったのかということを、ものすごく研究して、勉強して、自分たちもそれに学ぼうという姿勢だったのです。
だから、会社の業務の流れの中で、自分より下に位置する人たちに目標通りの結果を出してもらうためには、お互いにお互いをお客様と考えて、相手がどうしたらスムーズに、期待通りの結果を出してくれるか。期待通りの結果が出なければ、その原因を個人の能力と決めつける前に、システムとして見直さなければならない点がないかどうか、よ~く見つめなおさなければならないのです。
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日本には「お客様は神様です。」という言葉があります。
会社というのは、お客様がサービスや物の代金として支払ってくれたお金で回転していくものですから、人間にとって血液にあたるお金を支払ってくれるお客様は神様だ、という考えは理解できます。
ところが、中にはたちが悪いのがいて、「俺は客だ! 俺の言うことは絶対だ!」というような態度のお客がいたりします。
会社の中も同じで、上司にとって部下は大切なお客さんである、などと会社が教えると、バカな部下は、上司に向かって「そんなことで俺の上司が務まるのか!」なんて言ったりすることもありました。
でもね、日本は八百万(やおよろず)の神々の国。
だから、そんな馬鹿なお客はできるだけ早めにさようならして、残りの799万と9999の神様をお客様として相手にする方がはるかに効率が良いと思います。
日本で5本の指に入る大学を出て、40過ぎても、そんなことも理解できないお利口さんが、かつて私の部下にも何人もいたのですよ。
だから、私のように偏差値教育で勝負できなかった人たちにも、世の中には大きなチャンスがあるのだと思います。
そう考えると、人生面白いじゃありませんか。
私はそう思います。
絶対にね。
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