ご利用のお客さまへご注意とお願い

桜と菜の花のコラボが見られる今はいすみ鉄道のピークシーズンです。
週末には車両も要員も総動員で観光客の皆様の輸送にあたっています。
そんな中で、お客さまにいくつかのトラブルが発生している事例がございますので、ここでご紹介し、ご利用いただく皆様へ、ご注意とお願いを申しあげます。
1:乗り遅れ事例
お花畑のなかの無人駅での事例です。
写真を撮影する場合、どうしても列車を入れて撮る方が絵になります。
お花畑のなかの無人駅では、写真撮影する方々が多くいらっしゃいます。
そんな中で、停車した列車の写真を撮影していたら、列車が発車してしまったというクレームが寄せられました。
おそらく、その方は、ホーム端で撮影されていて、ご自身はお乗りになるおつもりだったのでしょうが、この時期、ホームで撮影されている方が多く、そういう方のほとんどは撮影のみで、ご乗車にはなりませんので、運転士は、乗らないものと思い、そのまま列車を発車させたものです。
「不親切だ」とのクレームをいただきましたが、乗務員はいちいちホームのお客様に「乗られますか?」と声をかけることはいたしません。
無人駅での停車時間は15秒です。
このような無人駅では、お乗りになるご意思があるかどうかはご自身で、ホームの乗降位置に立つなどしないと、乗務員は扉閉めの安全確認をしたのち、列車はそのまま発車してしまいます。
いくら合図のつもりで手を振っても、おそらく「乗る」と思ってもらうことは無理だと思います。この時期、列車に手を振る人はたくさんいらっしゃいますので。
2:降りられなかった事例
2両連結で運転している場合、無人駅での降車口は先頭車両の前扉1か所のみです。後ろの車両にご乗車のお客様は、下車駅に到着する前に前方車両へ移動していただくことになります。
車内アナウンスでもその旨伝えていますし、ほとんどすべてのお客様にはワンマン列車のご利用方法をご理解いただいております。しかしながら、お客様の中には、後ろの車両の一番後ろから写真撮影などをしている方も多くいらっしゃいますので、今回の方も降りる駅に着いてから、降りようと思ったけれど、ドアが開かなかった、というクレーム事例になるとおもいます。
案内がない、不親切だと言われましたが、こういう案内は必要十分な回数で行われており、それ以上行うと単なる「騒音」となってしまいます。
観光列車ですから、「皆様、この先、菜の花がきれいな場所を通ります」というようなアナウンスを充実していく計画を立ててはおりますが、そんな中で、無粋な「ご注意」ばかりでは、楽しみも半減してしまうもの。
クレームをする前に、まずはご自身のことはご自身で確認されて、予め準備されることが必要ではないかと考えます。
毎日、何人ものお客様が下車できないような状況ではありません。
ほとんどすべてのお客様は問題なくご利用いただいているということをご理解いただきたいと思います。
3:小湊鉄道との接続
現在、上総中野駅で小湊鉄道に接続する列車は、平日は4本。休日は6本のみです。お客様が普段生活していらっしゃるパターンでは考えられない不便さです。ふらと気ままにやってきたローカル線の汽車旅では、うちに帰れなくなる場合もあるダイヤです。これを便利にするためには小湊鉄道さんにお願いして列車本数を増やしてもらうしかないのですが、(実際に3月のダイヤ改正で休日に1本増えました。) そんなことよりも、その不便さが旅のだいご味とお考えいただくことはできないでしょうか?
昔、福島県に日中線というローカル線がありました(喜多方―熱塩間)。この線を走る列車は1日3本だけ。ふらりと旅するには危険が多すぎますが、そういう希少な列車だからこそ、旅ごころをくすぐるものです。
その世界を、平成の世の中で、東京から日帰り圏内で体験できるのが上総中野です。
今後、いすみ鉄道では上総中野をテーマとしたイベント企画を推進していく予定です。それも、コンサートなどではなく、「何もないがある」イベントです。
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【いすみ鉄道社長としての考え方。】
いすみ鉄道は「ここには何もないがあります。」の世界をプロデュースしています。
ありのままの自然や里山の中を走る汽車旅を提供したいと考えています。
「何もない」ということをお客様がどうとらえるかで、感動にもなればクレームにもなると思います。
いすみ鉄道は、皆様に非日常の汽車旅体験をしていただいて、幸せにな気分になっていただきたいと考えていますが、幸せになれるのは「何もない」に感動することができる人たちで、「何もない」をクレームする人たちは、幸せから少し遠くなってしまうのではないでしょうか。
つまり、いらしていただいた不特定多数のお客様全員にご満足いただける前提でサービスを提供しているものではございません。
この点を、どうぞご理解いただきたく思います。
列車がたいへん混み合いまして、お客様には大変にご不便をおかけいたし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
会社に十分なお金があって、設備投資をできれば、線路を改良して複線にして、車両もたくさん導入して、全員が座ってお乗りいただけるようにしたいのはやまやまですが、現実問題として、1年に数週間のピークに合わせて設備投資するようでは会社は存続できませんし、経営者としては失格と言われてしまうでしょう。
逆に言えば、いすみ鉄道の良さは、単線、1両編成、ローカル線にあるわけですから、ピーク時にいらっしゃるお客様には、ある程度ご勘弁願ってご協力いただくことになってしまいます。
今の時期でも、平日は団体が入る列車を除いては比較的ゆったりとしていますので、平日の、できるだけ10~15時を避けた時間帯にご利用いただければ、ある程度ご満足いただけるご旅行ができるのではと考えております。
私は前職の航空会社時代、ありとあらゆるクレームを経験しました。
中には脅迫めいたものも数多くありましたが、会社の基本方針として、お客様の満足度の基準を、すべてのお客様にご満足いただけるようには設定しておりません。
ご存じのように、飛行機の座席には、窓側、通路側、そしてまん中の座席があります。誰もが窓側や通路側を希望する中で、まん中の座席というものを設定している以上、ご利用いただくお客様すべてにご満足いただけないことは、当初から織り込み済みということです。
今の時代は、何でも手とり足とりで、出来合いの与えられたサービスが主流です。自分が知らなかったり気付かなかったことを反省する前に、教えてもらっていないと堂々とクレームすることが正当だと思われているこの平成の時代に、房総横断鉄道の旅は、接続をはじめとして、旅そのものがサバイバルゲーム感覚で挑まなければならない難易度の高い旅です。
自分で調べて、計画し、ぽっかり空いた2~3時間を何もない中で楽しみを自分で見つけ出すこと。そういうことがご理解いただける皆さまにご利用いただきたいと思いますし、もう一歩進んで、房総の汽車旅で、一人でも多くのお客様に「与えられた出来合いのサービスを受ける楽しみ」以外の楽しみをご自身で見つけられるようになっていただければ、不景気でも、お金がなくても、遠くに行けなくても幸せになれる人が増えると思っています。
今度の週末もまだお花が見られる場所があると思います。
いすみ鉄道は混み合うことが予想されますが、それでも、いらしていただいたお客様には、幸せな気持ちになれるヒントをお持ち帰りいただけると信じております。
いすみ鉄道社長の本音トークでした。
皆様にお会いできる日を楽しみにお待ちいたしております。