島田のD51

今日5月1日は「D51の日」
などとは誰も言ってないようですが・・・

島田市役所のすぐ横の公園にD51が保存されています。
どこにでもある、何の変哲もない保存機関車。
実はこういう機関車は日本全国に400両とかあるようなんです。

で、私が島田にやって来て、このどこにでもある保存機関車、それも最大両数を誇ったD51ですから、今現在でも全国に150両ぐらいありますからね。
本当にどこにでもあるのですが、私は「おや?」と思いました。

屋根付きできちんと保存されているD51101号機。

D51101号機というのはD51の101番目ということですが、D51は実は1115両も作られたのです。
1936年から1945年まで、終戦の年まで10年余りの間に1100両ってすごいですよね。
当時の国家の輸送力を一手に担っていたのです。

で、私がこの101号機に着目するのは2点ありまして、まず1点目は実はD51という機関車は3つの形に分類されているのですが、この101号機は2番目の標準形機関車の量産第1号機なのです。

1号機から100号機までのD51は、当時時代的に流行っていた流線形という空気抵抗が少ない形で設計されました。

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直江津の五智公園にあるD5175はこの流線形の設計思想で作られたもので、煙突から後ろのドームまでを空気抵抗が少なくなるように一体的に包み込んである形です。
その形状からナメクジ形と呼ばれていますが、聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

昭和10年当時の話ですが、当時の電車もみんな空気抵抗を考えて丸っこくなっていた時代です。
でも、しばらく走らせてみると効果がないことがわかりました。
それどころか、整備に手間がかかることが判明したので、85両作ったところで設計変更になりました。
86~90号の5両については、2次形試作車として登場しました。

この5両の試作車の状況がよいということで1次形のナメクジ形は100号で生産終了。この101号機から2次形として954号機まで、なんと800両以上がこの形で製造された標準形量産機の記念すべき第1号なのです。
そう、いわゆる皆さんが言うところの「デゴイチ」ってこの形なのです。

ちなみに86~90号の標準形試作機はキャブと言われる運転席部分がナメクジ形と同じように狭かったらしく、101号機からは運転席が広くなったと言われています。
私はその辺りのことはよくわかりませんが、16年前にいすみ鉄道に行った時に、当時の運転士さんの中には国鉄時代のSLに乗っていた方がまだ数名いらっしゃいまして、

「ナメクジは運転席が狭くてねえ。」

と言っていたことを思い出します。

記録によれば昭和45年にSLが廃止になる直前、新小岩機関区には2両のナメクジが配属されていましたから、経験者の話としては貴重な話を聞けたと思っています。
その2両のうちの1両は蒸気上がりが悪くて、これに当たるとイヤだったなあ、なんて話でした。

3次形は戦時設計と呼ばれるもので、鉄が不足する中、木材で代用できる部分は木材で作った機関車。
蒸気機関車を木で作っちゃうんだから、考えてみればすごい話ですよね。

さて、この機関車の注目点の2点目は、この機関車は最後は中央西線の中津川機関区にいたということ。
中央本線の電化完成が1973年7月。
それまではD51の天下でしたが、中津川機関区と聞いて皆さんピンときませんか?

そうです。
直江津で動態保存機になっているD51827が所属していたところです。

直江津にいるD51827は中央西線のさよならSL列車をけん引した機関車ですが、このD51101も当時は青いナンバープレートを付けていろいろな列車をけん引していた機関車ですから、同じ機関区でD51827とのご縁も当然あったかと思うと、なんとなくジ~ンときますね。

ということで、このD51101はこんな特別な機関車でありまして、でも、たぶん、島田の人たちはそういうことを全くご存じないだろうなあと思うわけで、私としてはこういうものでも観光資源になると考えているのです。

このD51101が島田に来て公園に保存されたのが中央西線で用途廃止になってから2か月後の1973年9月。

実はこの機関車は東海道本線にも島田市にもまったくご縁がない機関車でしたが、当時のSLブームで、全国の自治体が「我が町にも機関車を」とSLを奪い合っていた時代を知る人間として、当時の人たちはこういう経歴を知って、この機関車を特定指名したわけではないと思いますが、偶然とはいえ、いい機関車を手に入れたなあと私は思うのです。

50年経って全国の自治体でお荷物になっている保存機関車。
中にはゴミとして処分されるものもあると聞きますが、やっぱり使い方だと思いませんか。

私から見たら真珠ですけど、見る目がない人から見たらゴミなんでしょうね。

こうして地方都市は自分たちの持っているものの価値がわからずに衰退してきているのです。

さて、皆様方の地域はどうかな?
真珠の価値がわからないブ~ちゃんたちが牛耳ってるとしたら、ご愁傷様であります。

大井川鐵道にお越しの際は、ぜひ、このD51101も見にきてあげてください。
島田市役所のすぐ隣です。