顔が見えるローカル鉄道

かれこれもう15年、私はローカル鉄道3社目ですが、当初から取り組んでいるのは「顔が見えるローカル鉄道」ということです。

事の発端は公募社長の先輩であるひたちなか海浜鉄道の吉田社長さんからのアドバイスです。

お客様への接客はもちろん、広告塔になるのも社長が自分でやらなければだめですよ。なぜなら、社長が自分でやれば少なくても人件費はかからないでしょう。

今から15年前、私がローカル鉄道に就任した直後に吉田社長さんが訪ねて来られて、こうアドバイスをいただいたのです。

私は人前に出るのが嫌いです。
テレビや雑誌などに顔をさらしたくありません。
面が割れればコンビニで大人の雑誌の立ち読みもできなくなってしまいますから。

でも、お金をかけることができない会社で、どうやったら皆様に知っていただいていらしていただくか。つまり、選択肢に入れていただくかを考えた場合、今の時代は社長が率先して前に出ていく以外に方法はありません。

社長が顔を出さなくても売り上げが上がり、お客様が増えて経営がうまく行っている会社はいくらでもあると思いますが、私にはそのスキルがありませんでしたので、自分で体当たりをする方法を選ぶしかなかったのです。

だから、3社目となる今でも、自分が率先して前に出ていくしかないのです。

こういう仕事のやり方を「属人的」と言います。

人に属する。
つまり、「あの人がやっているからうまく行く」という仕事のやり方です。
逆に言うと、「あの人が辞めたらこの会社はつぶれる」ということになりますから、ビジネスの鉄則として、「属人的な仕事のやり方はやってはいけない。」と言われています。

公務員とかそうですよね。
数年に一度転勤がある。
だから、あんまり頑張っちゃうと次の人が困るんです。
なぜなら仕事の内容が金太郎飴だからです。

鉄道会社も全く同じで、あの人がやってるからうまく行く、というような仕事では困るわけで、誰がやっても同じ結果を出すという金太郎飴が求められているのです。

ただし、現実問題として、「そういうやり方をやってきて、会社が無くなっている。」というのも事実ですから、私は敢えて属人的なやり方で、とりあえず当面の危機を乗り越えようと考えたのです。

これが顔が見えるローカル鉄道ということで、最近では当たり前の「生産者の顔が見える野菜」のように、経営者の顔が見える鉄道会社があっても良いのではないかという考えです。

ところが、鉄道会社というのは顔が見えるのは経営者だけではありません。利用者や沿線住民の顔が見えるということも重要なことだと思います。

いすみ鉄道でも応援団の掛須団長をはじめ、地域の皆様方や遠方からヘルプに来てくれる皆様方が一生懸命活動してくれています。

えちごトキめき鉄道でも二本木駅のさとまルームや、高田や市振の皆様など、鉄道を支える活動をしていただいている地域の方がたくさんいます。

こういう皆様方が地域の顔として、観光客などのおもてなしをしていただいているということは、「顔が見える鉄道会社」であると思っています。

大井川鐵道でも、実はこういう活動をされていらっしゃる方々がいろいろな駅にいるのです。

この間、田野口駅を訪問して地域の皆様方と交流させていただきましたが、実は田野口駅は2022年の水害で列車が来ていないのです。

そういう駅ですが、地域の方々を中心にボランティアの皆様方が駅構内の美化活動をしていただいているのです。

前にもご紹介したと思いますが、田野口駅の皆様方です。

列車が来ていないのに駅構内の美化活動をしていただいていて、花を植えたり気を剪定したり。

ありがたいですよね。

こういう皆様方がいらっしゃるということは、鉄道会社の社長としては「なんとしてでも列車を走らせなければいけない。」と思うわけでありまして、こういう地域に観光客の皆様方は憧れを抱いていらしていただけるのではないかと思うのであります。

ということで、属人的な仕事はするべきではないというお考えの方もいらっしゃるとは思いますが、私としては鉄道を残すためには地域の皆様方と一緒になって、できることは何でもやっていくことが大切なのではないかと思うのであります。

次の課題としては、どうやって属人的な仕事のやり方から抜け出すかということなのですが、3社目ですから、そちらも着々と進めております。

こちらでご紹介した田野口駅の応援団の皆様方が撮影した写真を卓上カレンダーに使わせていただきました。

皆様、大鐵のWEBサイトから、どうぞご購入ください。

大井川鐵道 2025年卓上カレンダー – 大井川鐵道ONLINE SHOP (daitetsu.myshopify.com)