出張需要 回復せず

一時期よかった新幹線の利用者数も、またまた激減しています。

私は今、北陸新幹線のかがやき515号の中でこれを書いていますが、≪新幹線オフィス車両≫と銘打った8号車には大宮を出た段階で私を含めて5名です。
他の車両も推して知るべしの状況です。
次は長野ですから、この列車、もう、首都圏出張帰りのお客様は乗ってこないのです。

東京駅の18時すぎといえばラッシュのピーク。
東京へ出張した人たちも帰り道に一番利用しやすい時刻。
その時刻に出る「かがやき」は、やはり利用客が多いと予測して、長野駅で20分先に出る「はくたか」と連絡してます。
上越妙高に帰る私にとっては大変ありがたい列車ですが、つまり、長野以遠の「はくたか」停車駅への利用客への便宜を図る意味のあるこの列車がこんな状態ですから、出張需要はほぼほぼ無くなってしまったと見るべきでしょう。

その数字がトキめき鉄道にも表れています。
トキめき鉄道の旅客運賃収入というのは大きく2つの科目に分かれています。
1つは定期旅客運賃。これは通勤、通学の定期券をご購入いただく金額です。
もう1つは定期外旅客運賃。
定期券じゃないお客様ということですが、つまり1回1回切符を買って乗っていただけるお客様です。

田舎の鉄道では1回1回切符を買って乗るお客様というのは、ほとんどが地域外からいらっしゃる方。つまり出張や観光でいらっしゃる方になりますが、トキめき鉄道では、今までは観光客といっても通年通していらっしゃる人は皆無でしたので、通年観光客は雪月花のお客様ぐらいで、一般の列車に乗っていただける定期外旅客というのは、基本的には上越地域にお仕事の出張でいらしていただける方々でした。

ところが、数字的に見ると、定期旅客はほぼ100%回復しているのに対し、定期外旅客は70%行くか行かないかという状況になっています。
つまり、出張のお客様が戻ってきていないのです。
これは、新幹線のこの状況を見れば明らかですね。
青春18きっぷで出張に来る人はいませんから、新幹線のお客様が増えなければ、出張のお客様も増えないということになります。

私はかれこれ13年前になりますが、いすみ鉄道を引き受けたときに、観光客を呼び込もうと考えました。
観光客を呼び込むことでこの定期外旅客収入が伸びますし、観光客が来れば地域も潤います。
また、観光客というのは基本的には土日や休日にやってきますから、月曜から金曜までの地域の足を守るために、土休日に観光で稼ぐというスタイルができれば、大きな設備投資をする必要もなく、同じリソースで売り上げ増が見込めると考えたからです。

当時は「観光なんて遊びだろう。お前は税金を使って遊びをやるのか。」というご意見の議員さんや地域の重鎮たちもいましたが、田舎というところはそういうところでして、自分たちが観光に行くときには「遊び」で行きますからそんな風に考えるのですが、観光客を呼ぶということは観光客がお金を持って地域にやって来るのですから、これは立派な産業なのであります。

その観光客を呼び込むツールとしてはローカル鉄道は絶好のコンテンツであるということを、私は前職で証明したのでありますが、そういうことを理解できない地域というのは、観光ということに対する認識が凝り固まっている地域で、例えばかつて、昭和の時代に海水浴客であふれかえってウハウハの経験をしたことがあるお爺さんたちが今でも牛耳っているような地域では、鉄道が観光ツールになるということがなかなか理解できないわけでして、新しい時代の観光を提案しても「お前に何がわかるのか!」というお話しになりますから、私にとってはそういう人たちを説得するのは時間の無駄ということになります。

でも、実際にやってみると、ムーミン列車も国鉄形ディーゼルカーも、地域の食材を使ったレストラン列車も大成功で、たちまち全国区になったのですが、当時の私はそうやって一つずつ「仮説を立てて実証する」ということを繰り返してきたのです。

さて、地域の足を守るためには観光客を増やさなければならない。
これは国鉄の赤字ローカル線を引き継いだ鉄道の場合でしたが、トキめき鉄道のような並行在来線は新幹線接続という役目が大きいですから、外からやってくるお客様は観光客だけでなくて、出張のお客様も大きなウエイトを占めるのでありまして、まして、今までは観光のお客様の比率が少なかったトキめき鉄道では、今度は定期外旅客の中で、減ってしまった出張旅客の分を観光客の需要で増やさなければならないという課題に直面していると私は考えています。

つまりこれが、「定期外旅客の数字を回復させるためには、観光客を増やさなければならない。」という仮説です。

そして、それを実証するのが「直江津D51レールパーク」であり、「観光急行」ということになります。

直江津D51レールパークは昨年4月29日にオープンしてから冬季休園に入る12月初旬までの間に12000人の来場者がありました。
アンケートの結果、このうちの約6割の方が鉄道でいらしていただいているということになります。
鉄道で来た方は帰りも鉄道で帰りますから、往復で約14000人以上の方が定期外運賃対象者ということになりますね。
もちろん、この数字にはトキ鉄ばかりでなく、JR信越本線や北越急行も含まれますが、それだけのお客様が地域内外から直江津へ鉄道利用でいらしたことになります。

413・455系観光急行列車も、半年で2万人以上のお客様にご乗車いただいております。
レールパークと観光急行で重なる部分もありますが、昨年後半には3万人のお客様が新しい観光スタイルでいらしていただいていることになります。
雪月花も過去最高であった2019年の数字にほぼ近づいてきていて、コロナ禍2年間とは言え、観光需要は出張需要に比べるとはるかに旺盛で、かつ、回復が早いということが数字にも出ているのであります。

このレールパーク、観光急行、雪月花という観光コンテンツが稼ぎ出したお客様数を上越市が出している観光集客経済効果の計算方式に当てはめると、定義づけによって振れ幅はありますが、少なく見積もっても4億円から6億円という数字を稼ぎ出していることがわかります。
この数字は、先日の会議でも提出させていただきましたが、ローカル鉄道が観光コンテンツとして機能すると、鉄道会社の収益アップになるのはもちろんですが、日帰り客、宿泊客を合わせて、地域にも大きなお金を落としているということがきちんと証明できているのです。

さて、そうやって「地域の足を守るためには定期外収入を稼がなければならない。でも出張客が減っているのだから、その分観光客で上積みをしなければならない。」という仮説を実証しているのでありますが、さらにややこしいのがこのコロナの動向というやつで、今回のオミクロン株の蔓延で、昨年まで順調に回復していた観光需要が再び落ち込んでいるのです。

特に人気が高かったのは雪月花で、昨年末時点では雪月花の予約は3月まで8割以上埋まってきていたのですが、蔓延防止処置の適用と、その延長で、ガクッと減ってしまいまして、特に旅行会社がチャーターしていた貸切需要が、櫛の歯が抜けるようにキャンセルになってしまったのです。

でも、だからと言って手をこまねいて見ているわけにはいきません。

そこで私はさらなる仮説を立てました。

「観光需要のうち、地域外から来る観光客の需要を、地域内の観光客で補うことはできないのか。」という仮説です。

コロナが長引いて地域外からの観光客が来ないということは、地域の人たちも東京や大阪へ旅行に行くことができないということです。
でも、皆さん「どこかに行きた」いという需要はある。
だったら、その地域需要を観光列車に取り込めるのではないかというのが、その仮説です。

ということで、団体予約のキャンセルが出てしまった雪月花の運行日を、地元の皆様方に向けて開放してみてはいかがでしょうか? というのがただいま募集中の新潟県民限定「Cafe 雪月花」なのであります。

オミクロンの拡大、蔓延防止の延長など、観光に不利な状況が続いていますが、そういう中でどうやって数字を伸ばしていくかが求められています。

また、地元の皆様方が、地元の観光列車に乗って地元を再発見することは、この時代だからできることだと思います。

新潟県民の皆様、ぜひぜひ、この機会に「Cafe 雪月花」にご乗車ください。

特別価格4800円ですからお乗り得です。

高齢者の方はネット情報には疎いかもしれませんが、後になって「知らなかった。」と言われてもこちらもなんとも対応できませんので、ネット環境にある皆様は周囲の高齢者の方にぜひ教えてあげてください。

お申し込みはこちらから▼
雪月花お申し込みサイト

運転日は3月3・6・17日の3日間限定です。