経営感覚の違い

JR北海道に新型の特急車両が次々と納入されています。

経営危機の会社のどこにそんなお金があるのか不思議です。

この間発表がありましたが、おそらく国からの大型支援が受けられるめどがついたのでしょう。

国からお金をもらったら、そのお金で次から次へと新型車両を入れる。
北海道の皆様方にとって見たらうれしいかもしれませんが、水を差すようで申し訳ございませんが、私としては実に不思議です。

トキめき鉄道はお金がありません。
国や県や沿線自治体の支援を受けながら運行しています。
でも、この先先細りの地域需要の中、何とか外からの観光需要を呼び込んで、鉄道の経営にプラスになるのはもちろんですが、地域にとってもお金が落ちる仕組みというものを作っていくことが使命だと考えていて、こんな電車を手に入れて最低限の設備投資で最大の利益を出そうと考えています。
そう、最大の利益を出すためには元手となるお金をできるだけ少なくするのが一番の近道ですから、それにはこの電車がうってつけだと私は考えました。

お古の電車を譲り受けたときに車体の隅にこんなものがあるのに気がつきました。

昭和37年川崎車両

これはこの車両が作られた年と製造会社を示しています。
今から約60年前の日本国有鉄道の時代です。
上にあるのは昭和62年、国鉄時代の松任工場で改造されたことを示す銘板です。

昭和62年というのは国鉄からJRに変わった年です。
つまり、国鉄はこれから始まるJRに対して、それまで散々使ってきた車両を大規模改造して、さらに何年も使えるようにして渡したんです。

昭和62年の段階で25年経過していた車両を大規模改造してJRに渡したということは、つまりは国鉄の置き土産。
国鉄ですから国ですね。国がJRに対して「これからさぞかし大変になるだろうから、この車両を使いなさい。」と言って、新品ではありませんが、リニューアルした車両をお土産に置いて行ったということです。

JR西日本はその車両を30年以上も使い続けて、新造から60年近く経過して今回やっと退役するわけですが、トキめき鉄道はお金がないから、そういう車両を譲り受けて、さらに新車のようにピカピカにして使っていこうとしているのです。

まあ、それはそれとして、昭和の日本人たちは多分お金がなかったのでしょうから、ポンと現金をくれることはせずに、その代わりに車両をリニューアルして、これを使いなさいと言ってJRに渡したわけで、JRもその国鉄の置き土産をこんな令和の時代になるまで大切に使ってきていたのです。

ところが、国鉄改革から30数年が経過した今、日本も豊かになって、今度は国が経営危機のJR北海道に対してお金を出しました。そうしたらJR北海道はこれ幸いとばかりに新型特急車両をどんどん購入するし、ふつうのディーゼルカーの値段の倍以上するような最新型のディーゼル電車をどんどん購入して「経営の効率化を図り」「経営再建を目指す」と言っているわけですから、私はそういう経営感覚というものがどうも理解できない。
根本が何か違っているような気がしているのです。
(いろいろ事情があるのはわかりますが、経営感覚のお話ですから関係者の皆様、気に障ったらどうぞスルーしてください。)

トキ鉄が昭和37年製の国鉄の電車を購入して大丈夫かと思われる方もいらっしゃると思いますが、JRの列車として朝から晩まで走り続けるような用途としては廃車にするかもしれませんが、土休日の観光列車として1日2~3往復程度であれば十分に使えるということは、10年前にいすみ鉄道に導入したキハが今でも走っていることを見ればお分かりいただけると思います。

それと同じようにJR北海道の列車だって、最高速度で突っ走る特急列車には使えないけれど、のんびり走る観光列車には十分使える車両もあると思いますよ。
でも、一斉に取り換えて経営の効率化を図るというのが経営再建で、そのお金は国や北海道庁から出してもらっているから、どんどん作るのだ。
こう言ってるわけですが、私にはこういう経営感覚というのが根本的に理解できないのです。

そりゃあ、お前のような貧乏人の感覚とは違うのだ。

そう言われる方もいらっしゃると思いますが、自分の金じゃないんだから。
もっともっと工夫して、考えて考えて、使えるものは最後まで使う。
乾いたぞうきんを絞って絞って、最後の最後に新車なんじゃないかなあ。

例えばJR四国も新型特急を導入してますよね。
でも、あの特急は2両編成で、時間帯や区間など需要に合わせて3両にしたり4~5両にしたりと、まめに増結や分割をしながら使えるような構造です。
まして観光列車は国鉄時代からの車両を改造して大切に使ってる。
ところがJR北海道の車両は5~6両の固定編成でしょう。
将来新幹線が札幌まで延伸されたら、特急車両はローカルに転じる可能性があって、そうなればもっとこまめな運用が求められるようになるはずだし、今だって札幌から釧路まで6両で走る必要なんかなくて、帯広で半分切り離して帯広から釧路までは3両で走れば十分だと思いますよ。

そうすれば、釧路から3両でやってきた札幌行に帯広で切り離した3両を連結して札幌に戻すことができて、車両の効率も上がれば車両の絶対数も少なくて済む。
貧乏性の私はついそう考えてしまいます。

でも、そのためには帯広駅に連結作業員を配置しないといけないから、そういうことをしないのが経営効率化だってことになってる。
だから、いろいろトライすることなく、今までと同じようにこれからも固定編成の特急列車を走らせる。そのためにまず最初に新車を買う所からスタートしているのですから、私はそういう会社の将来というのは推して知るべしだと思います。

とは言え、国や北海道庁がJR北海道に大きなお金を出す理由というのは、私が考えるに「北海道に鉄道は絶対に必要だ。」と考えているからであると思います。

ここのところを間違えてはいけないのですが、それは何かというと、北海道には鉄道が絶対に必要なのであって、JR北海道という会社が必要だと言っているのではないという所なのです。
つまり、今、経営再建にチャレンジしていると言われているJR北海道という会社が、本当に経営再建できる会社なのかどうかが問われている。それにはちょっとお金を出してみて、その使い方を見ればわかるのではないか。
今回の支援策はその試金石のような気がしないでもないのですが、JR北海道という会社はそのお金でこれ幸いと言わんばかりに特急列車も各駅停車もみんな最高級の新型車両にしてしまって、「これが経営再建です。」って言っているのですから、なんだかなあ、じゃないでしょうか。

私は、トキ鉄にもしお金があったとしても、そういう使い方はしませんよ。
私のような人間を社長にするということは、つまりは一生懸命工夫しなさいと言われているということですから、どんどん新車を入れるようなことをしたら「お前は要らない」と言われてしまいますからね。

とは言え、私も北海道に鉄道は絶対に必要だから、何とか北海道の鉄道を守りたいという人間の1人ですから、こういう新型車両が走るのであれば応援しなければなりませんし、そのためにはその初列車には乗りに行かなければなりません。

ああだこうだ偉そうなことを言う割には何も行動しない人間にはなりたくありませんからね。

ということで、このツアー、予約しちゃいました。

HOKKAIDO Love FURANO号 運行初便ツアー

たった1日だけの特別企画。
デビュー記念企画ですからね。

富良野のラベンダー、待ってろよ~!

でも、読者の皆さんが乗りに来るのはこちらですからね。

この電車が残ってよかったと思う人。
私が社長でよかったと思う人。

待ってろよ~。

皆で心ときめいて幸せになりましょうね。
幸せはお金があっても買えません。
でも、幸せはお金がなくてもなれるのです。