厳寒の東北行脚 5日目

昨日は津軽鉄道を訪ねまして五所川原に泊まりましたが、今日は弘前から奥羽本線の「つがる」に乗って秋田乗り換えでこちらを訪ねました。

ちょうどやってきたのはおもちゃ列車。
木の香り漂うおもちゃがいっぱいの楽しい列車です。

ご多分に漏れず由利高原鉄道もコロナで観光客は皆無です。
本当に大変な状態だと思います。

でも、観光客が1人か2人、あるいはゼロだったとしても、この鉄道はちゃんとアテンダントさんを乗せて走っているのです。

昨日今日始まったわけではないアテンダントさんの乗務です。
久しぶりにやってきても、あの人が今日も乗っていた。
そう思うだけでほっとするのがローカル鉄道の観光列車でしょう。
こんなコロナ禍でも手を抜かずに、そういうことをきちんとやっている。

正直申し上げて、ほとんどのローカル鉄道沿線は観光と言っても取り立てて見どころがあるところではありません。
そういう所では、観光というのは人と人とのつながりであるということを、きちんと理解していて、手を抜かずにやっている。

そういう鉄道に出会えて、今日はとてもうれしい気持ちがしました。

そんな頑張っている由利高原鉄道の気持ちに応えるかのように、今日は雪晴れの良いお天気で、鳥海山もはっきりと顔を出してくれました。

終着駅の矢島に到着すると歓迎のおもてなし。
ふつうなら、どうせ観光のお客さんなどいないだろうし、いても数人だろうからお出迎えしても・・・となるところでしょうが、手を抜かないできちんとしたおもてなし。

その大御所がこの方、

矢島駅のまつ子さんです。

今、第3セクター鉄道では鉄印帳という企画をやっていますが、1枚300円の鉄印がまつ子さんに書いてもらうと500円なんです。
200円はまつ子さんのお店の商品購入券として使えるのですが、実はこのまつ子さんの手書きの鉄印が大人気。

今日、私も書いていただきましたが、NO.1150番目。
すでに1150人が500円を払ってまつ子さんに書いてもらっているんですね。

私もそうですが、矢島駅にやって来る目的というのが、まつ子さんに会いに来ることなのですから。

今、駅のホームや列車の中にひな祭りの飾り付けがアテンダントさんの手で行われています。
コロナでイベントが中止になるのはどこも同じですが、ここでは、そういうこととは関係なしに、きちんとおもてなしが行われているのです。

帰り際にはまつ子さんをはじめ、スタッフの方々のお見送り。
いつものことながら、発車した列車が見えなくなるまでホームで手を振ってくれていました。

ローカル鉄道は日本全国どこも大変厳しい状況です。
でも、そんなことは皆さんご存じです。
それでも、手を抜かずにきちんとおもてなしをする。

やはり、これが原点ではないでしょうか。

この2月、私は北国の厳寒の地の観光列車をいろいろたずねてみました。
その理由は、2月という一番厳しい時期に、各地の観光列車がどういう取り組みをしているか。
コロナ禍で、インバウンドも団体客もいない中で、地域の皆さん方がどうやっているのかを見せていただこうと考えたからです。

厳しい状況は世界中どこも同じ条件です。
そういう時に、手を抜かずに、きちんとおもてなしをしているところばかりではないと思います。
何しろ、コストと収益を天秤にかければ、そりゃあ何もしないことを選ぶのは経営の基本でしょうからね。
でも、私が訪ねたところは、大都市から遠く、経営も厳しい所ばかりでしたが、きちんと観光列車を走らせて、お客様をおもてなししていて、このコロナ禍の時代にそれなりの需要を掘り起こしているところばかりでした。

これから春を迎え、コロナもだんだんと落ち着いてくるでしょう。
そういう時に、この冬の時代にきちんとおもてなしの精神を貫いてきたところには、きっと穏やかな春が来るのではないか。

そんなことを考えさせられた今回の旅でした。

2月に旅をした各地でお世話になりました皆様、ありがとうございました。

まもなく3月。
皆で温かな春を迎える準備をしていきましょう。