えちごトキめき鉄道では8月1日から11月30日までの間、妙高はねうまラインに次のように臨時列車を運転します。
直江津 23:13 → 春日山 → 高田 23:22
高田 5:49 → 春日山 → 直江津 5:59
深夜と早朝の臨時列車です。
この時間帯には、もしかしたら需要があるかもしれません。
でも、トキ鉄では、もしかしたらあるかもしれない、多分ないかもしれない。
そういう時間帯に列車を走らせる経営資源的な余裕はありません。
では、なぜこんな時間帯に列車を走らせるのか。
本当の意味は「災害対策」です。
昨年の秋に北陸新幹線の長野車両基地で新幹線の電車が水没したシーンをご記憶の方も多いと思います。
実はトキ鉄の直江津駅の車両基地のすぐ横には大きな川が流れていて、大雨が降ったら同じことが起きるかもしれません。
トキ鉄ではひすいラインのディーゼルカーは深夜に糸魚川に2列車が停泊しています。
これに対して、はねうまラインの電車は柏崎に1編成6両が停泊していますが、後の電車はすべて直江津の車庫に居ます。
こういう状況でもし川が氾濫したらどうなるでしょうか?
直江津の車両基地は水没する可能性があります。
川の氾濫ですから鉄道橋も流されてしまう可能性があります。
だとしたら柏崎に停泊している6両も戻ってくることはできなくなりますね。
そうなるとどうなるか。
はねうまラインの電車はすべて水没してしまい、運転ができなくなるということです。
そこで、去年の北陸新幹線の水没事故以降、いろいろ考えて来ていたのですが、その後のコロナの影響で対策に追われ、緊急事態宣言が明ける目処が立ったころから再度考え始めまして、夜間、高田駅に車両を留置させようということになりました。
他の駅ではなく高田駅であれば夜間駐在している職員もいますので、車両を留置するにもよいであろうという判断です。
ここに4両編成(2両編成2列車分)を、終列車の後に直江津から持って行って一晩置いて、始発列車の前に直江津に持って戻ろうという運用です。
2両編成の電車が2列車有れば、最悪、はねうまラインの基本的運行は確保できるからです。
そうすることで、列車の運行が終わった後の洪水対策にしようということです。
そんな計画を立てていたのですが、その会議の途中に、「どうせ回送で列車を持って行くのであれば、お客様にご利用いただいてはどうか?」という話になりまして、「だったら終列車の後に23時台にもう一本、始発列車の前の5時台にもう1本、臨時列車を走らせましょう。」というのが、今回の臨時列車の種明かしです。
だから、その臨時列車の運転は11月30日まで。
なぜなら、地元の人なら皆さんお解りいただけると思いますが、冬期間、降雪量の多い高田に車両を一晩置いておくなどということは考えられないからです。
つまり、第一義的に、この臨時列車は地元の皆様方の便宜を図って利用促進につなげようという趣旨ではありません。
これははっきりと申し上げておきます。
トキ鉄では、需要があるかどうかわからない時間帯に、試験的に列車を運行するという社会実験的なことを行なう経営資源的余裕はありません。
でも、地域の皆様方にとってみれば、大きなオファーだと思います。
つまり、どのぐらいご利用いただけるかという試験的運行を、別の理由からではありますが鉄道会社が行なうわけでですから、ご利用実績によっては、私たちも当然考えていくことになるからです。
あくまでも結果ということで申し訳ありませんが、深夜と早朝に臨時列車が走るということは、地域の皆様方にとってみれば大きな利便性向上だと思いますので、この列車を皆様方で何とか育てて行っていただきたいと、私は切に願っております。
鉄道会社の社長で、ここまで正直に種明かしをする阿呆は私ぐらいしかいないと思いますが、この列車が冬以降も走れるかどうかということは、地域の皆様方のご利用実績によって判断して行きたいというのが、今のトキ鉄のオファーなのであります。
ということで、深夜と早朝の臨時列車、ぜひご利用ください。
直江津-春日山-高田というたった2駅ですが、地域交通としてこの列車の運行の意義は大きいのではないかと私は考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
最近のコメント