おもしろい人たち

「鳥塚さん、これからAIの時代になったら、医者と看護師のどちらの職業が生き残れると思いますか?」
こう聞かれたのは一部上場企業サイボウズの青野慶久社長さんです。

「そりゃあ看護師さんじゃないですか?」

「そうなんですよ。例えばCT画像の診断などはAIにやらせた方がはるかに正確になります。人間が知識や経験を切り売りする時代はもう終わりなんですよ。」

「でも、患者さんには感情がありますから、AIでは対応できない。」

「そうですね。弁護士さんとか、いわゆる士業はもう仕事にならない時代がすぐそこまで来ています。」

1年ちょっと前、あるフォーラムでご一緒した時の会話です。

「ローカル線って、どういう価値があるんですか?」
そう聞かれましたので、私は、こう答えました。

「目的地へ行くために乗るのが普通の鉄道です。だから、ローカル線はそういう役割は終了しています。でも、乗ることそのものが目的なのが観光鉄道です。だとすればローカル線をそういう使い方をすることで、わざわざその土地に人々がいらしていただけるのではないでしょうか。」

「おもしろいですねえ。」

「例えば夜行列車。昔は寝ている間に移動して、朝になったら目的地についている便利な列車でした。でも、今の時代は飛行機もあるし高速バスもある。汽車で一晩かけて移動する時代じゃないから本来の意味での夜行列車の役割は終了しています。でも、『夜行列車に乗ってみたい』という需要はあると思います。どこへも行かなくても良いんです。目的地へ行くための夜行列車ではなくて、乗ることそのものが目的の夜行列車ですから。」

こんな話で意気投合したのはサイボウズの青野社長さん。
去年の1月のことでした。

その青野社長さんが、今夜のNHKニュースに出ていました。
テレワークをいち早く取り入れた企業の社長さんということで。

じっくりお話を聞かせていただきましたが、テレワークの課題としてはやはり勤務評価をどうするかということ。見ていないところで仕事をちゃんとしているのかとか、出社している人と在宅の人が同じ評価ではおかしいなどと言うことは、現在の制度では受け入れられないわけですが、それはなぜかというと、

日本人はみんな同じじゃないといけないという発想があるからですね。

では、どうしてみんな同じじゃなければいけないかというと、評価する管理者が楽だからです。
なぜ、管理者が楽なのが良いかというと、管理能力がないからです。ある年齢になればだれでも管理者になれるような制度が日本の会社には出来上がっているんです。
だから、管理者になった人が能力がなくても、決められた通りの評価基準に従って評価することで自分の権威を保てるわけです。

ところが、そんな時代はとっくに終わっていて、今回のコロナ騒動でやっと表面化した。
在宅でもサクサクと仕事を進めて成果を上げる人もいれば、出社していても成果が上がらない人もいる。
そういう時代がいきなり表面化してしまったんですね。

トキ鉄でも在宅勤務をどうやって管理させようかと経営会議でいろいろ意見が出ました。
でも、私は、管理しようと思ったらできませんよ。なぜならば在宅勤務の設備(ツール)がありませんからね。
ツールがないのに管理しようと思うということは、そりゃ無理ですから、別に管理などしなくても良いんじゃないですか。
のんびり庭いじりでもしていたら、ふだん考えもしないようなことがひらめいて、コロナが明けた頃にはきっといろいろ面白いことが起きますから、そのぐらいの感じで行きましょうよと申し上げました。

なにしろ、今回のテレワーク、在宅勤務の目的はスタッフの健康を守ることと、いざ社内に感染者が出た時に会社の機能を維持するためのチーム分業ですからね。

と、青野社長。

そうなんです。
私はスタッフを信頼しています。
ある意味リフレッシュ休暇のような人もいると思いますが、そういう中でいろいろ面白いことを言いだすスタッフが出て来そうで楽しみなんです。
トキ鉄は若い職員が多い会社ですから、お爺さんの入口に居る人たちでは考えもつかないことを言いだす人がたくさん出てくる。それが今回のコロナから得られるものじゃないかと社長としては期待しているのです。

ところで、青野社長。
インタビューもテレワークでしたから、和久田アナウンサーにお会いできなくて残念でしたねえ。

さてさて、

おもしろい人といえば大阪の吉村知事もおもしろい。

何やら失言があったようで、西村大臣から怒られた。
そうしたら素直に「ごめんなさい。」だって。

西村大臣は「吉村知事は何か勘違いをされているのではないかと、強い違和感を覚える。各都道府県の裁量で休業要請なり解除なりを行っていただくわけなので、その説明責任を果たすのは当然。」と言い切った。

つまり、判断するのは知事の仕事だと。

これねえ、安倍政権のとても無責任なところで、何でもない時には「中央集権だ」と言っておきながら、こういう問題が起きて自分たちではどうして良いのかわからなくなってしまったので、緊急事態宣言を出して「地方分権にします。」と言ってるわけですよ。
ふだんは威張っておいて、何かあったら「お前たちで解決しろ。」と言ってるのが今回の緊急事態宣言ですからね。

でもって、その無責任のスポークスマンの西村大臣が、「地方分権って言ってるのがわからないのか?」と言って不快感を示した時に、「そうでしたね。すみません。」と素直に謝っちゃってるということは、役者が上だと思うのですよ。
「ああ、そうでした。国が判断できないから地方に丸投げしてたんですよね。忘れてましたよ。」ってね。

この人は切れ者だし、それ以前におもろい人だなあと思うのです。

道州制への道筋が開けちゃったりするかもしれないという予感もちょっぴりしたりして。

でも、やっぱりおもしろい人の筆頭は北海道の鈴木知事さんじゃないでしょうか。

国よりも先に緊急事態宣言を発令したり、黒田官兵衛が側近に居るのかなあと思わせる策を持った切れ者ですね。
奥さんは確か上中里幼稚園の先生ですから、お菓子屋のお嬢様とは世界が違います。私たち庶民の感覚と庶民の常識を持ち合わせた上で、こういう方が知事に居るということは、北海道には大きなチャンスがありますからねえ。

今、釧路にものすごいチャンスがあると私は見ています。
それはなぜかというと、壁に貼った世界地図をいくら見ても気づきませんが、地球儀を上から見てみたらすぐにわかります。北極海に不凍航路が確立されるようになりましたから、ヨーロッパからの海上ルートがスエズ運河経由ではなくて北極海ルートにシフトしていますが、地球儀を上から見るとヨーロッパから中国を含めたアジアへの物流のゲートウエイが釧路になるんです。
たぶん釧路の人はそんなこと考えたことないでしょうけど、そういう重要な地域が釧路ですから、まあ、だから私が釧路に不動産を持っているわけですが。(笑)

鈴木知事なら当然そのぐらいのものの見方はされていらっしゃるだろうなあと。

つまり、現在はそうやって世の中が大きく変わっていく「乱世」なのであります。
だから、新旧の役者が交代したり、栄枯盛衰が見られるのであり、それに追い打ちをかけるのが今回のコロナ騒動でありますから、どうやってしたたかにやっていくかが問われるわけで、そういう時代には予想もしなかった人が出てくるということなのだと思います。

かくいう私も公募社長2つ目の任。
世の中が順調で、会社も経済も順風満帆の時には公募社長など求められませんから、つまりは乱世をどうやって舵取りをしていくかが私に課せられた任務なのでありますが、青野社長、吉村知事、鈴木知事など年下の人たちに笑われないように、私もおもしろいことをやらなければならないと、今夜のニュースを見ていて心に誓ったのでした。

ああ、6両編成を4両編成にしようなどと考えているようじゃ、なんだか小さい男だなあ。
(127の話じゃないけどね)