大雪で止まる鉄道、止まるバス。

1月は日本列島が大寒波に包まれて、各地で交通が寸断されました。

 

特にひどかったのが鳥取県で、もう2週間ほど前になりますか、山田社長さん率いる若桜鉄道も運休を余儀なくされました。

 

鉄道だけじゃなくて、当然高速道路もダメですからバスも動きませんしトラックも走りません。

 

特急が走らなくたってバスがある。

貨物列車が走らなくてもトラックがある。

 

こういう議論って、通常の時は良いけれど、異常気象などの時ってどうなのでしょうか。

そして、その異常気象って、今の時代、別に100年に一度のことではなくて、ほぼ毎年1度、あるいは年に数回発生していることでありますから、私はEPの話以前にBCPの話をしなければいけないのではないでしょうかと、先日のブログで申し上げた次第です。

 

 

1月23日から24日にかけての大雪でこんもり積もった屋根の雪。(若桜鉄道FACEBOOKページより。)

 

いやはや、これではさすがの若桜鉄道でも手も足も出ないでしょう。

というのも、若桜鉄道が雪で止まった時、ネットでは結構話題になっていまして、「あの若桜鉄道が止まってる。」とか、「若鉄止まったの記憶にない。」とかいう言葉がツイッターで飛び交っていたからです。

つまり、それほどの大雪だったということになりますが、では、若桜鉄道が設備面で雪に強いかといえば決してそういうことではなくて、ふだんの運行を支えているのは設備ではなくて、スタッフの皆様方の努力に他ならないのであります。

 

これは何も若桜鉄道だけじゃなくて、秋田でも福島でも、雪国の鉄道は、ローカル線になればなるほど設備面では劣るものの、鉄道愛と責任感にあふれる鉄道マンたちの努力で支えられているという面が大きいのであります。

つまり、そういう人たちがいなければ鉄道は走らないのです。

 

ところが、鉄道が雪で止まるような状況になると、国道だって高速道路だって雪で通行止めになります。

どうしてでしょうか?

 

私はこの部分がとても不思議なんです。

 

雪で鉄道が止まったとしても、道路は止めてはいけないんです。

 

だって、この国の主要交通機関は鉄道ではなくて道路だと皆さん言っているでしょう。

 

ローカル線だけでなく、JRだって、鉄道輸送を維持するためのコストには限界があります。

最低限の設備や人員で、何とか列車を動かしています。

ところが、高速道路は、民営化したとはいえ当然政府が関与していますし、鉄道を廃止して「バスに転換する」というのが国の方針であって、鉄道には運営に関する補助は基本的には出さない。そして道路には手厚いお金を出す。

ということは、鉄道は最低限の設備で、関係者の努力で何とか運転を確保して、それが立ちいかなくなって止まってしまう。

ところが、道路の方はといえば、国の方針で「バス転換」しているわけですから、国の方針で最大限の努力をして、輸送を確保しようとしているのですが、それでも止まってしまう。

簡単に言えば、鉄道は本気出していないけど、道路は本気出していて、結果としてどちらも止まってしまうわけです。

思い起こせば昔は、鉄道は今ほど簡単に止まらなかった。

だけど、「面倒だから止めてしまえ。」とか、「無理して走らせる必要もないでしょう。」という方針も含めて、昔だったらめったなことでは止まらなかったのに、最近ではちょくちょく止まる状況にあります。

つまり、設備投資も含めてですが、本気出していないんです。

 

だとしたら、最大限に努力して(本気出して)輸送を確保しようとしている道路や高速道路が止まるのと、費用対効果で輸送が止まる鉄道とでは、同じ「止まる」であっても意味が全然違うのです。

 

つまり高速道路が止まる時は、「ここまで努力したけど、もうどうにもならない。」時であって、鉄道が止まるのは、「その気になればまだまだ走れる」にもかかわらずに止めるのですから、大雪の時にどちらが使えるかというと、高速道路の限界の方が早くやってくるということなのです。

だから、高速道路にかけるお金のほんの少しでも鉄道に回せば、鉄道輸送はある程度きちんと確保できるということになると思いますし、凍った道路を不慣れなドライバーが長距離を運転するのと違って、鉄道であればはるかに安全で、高速に、大量の輸送を確保できると私は考えるのでございます。

 

今の道路と鉄道を費用便益だけで比較する議論を正当化するやり方では、現場の職員がいくら努力したってたかが知れているわけで、そのぐらいのことは国がちゃんと考えましょうよ、というのが、BCP的に考えてみた場合の大雪の教訓ではないでしょうか。

 

って言っても、冬はまだまだ続くのでありますが。

 

このところ暖かい日が続いておりますが、のど元過ぎれば何とやらにならないように、気を引き締めなければなりませんね。

 

もちろん、お客様も含めての話でありますよ。