現代版航空旅行用心集

今日は朝から津波警報や津波注意報で大騒ぎでしたが、房総半島では警戒していたものの、大きな被害も出ずにホッとしました。

皆様のお住まいの地域はいかがでしたでしょうか?

 

このところ、いつ、どこで何があるかわからない時代になって来たなあと感じています。

 

何が起こるかわからないと言えば、本日、台湾の復興航空(トランスアジア航空)が突然会社解散を発表しました。

つまり、倒産ということですが、航空会社が倒産するっていうのは、いったいどういうことなのでしょうか?

 

なかなか想像できないと思いますが、実は過去にも意外にもあるもので、アメリカの航空会社はいくつもつぶれていますし、ヨーロッパの大手でもスイス航空なども一度つぶれていますし、記憶に新しいところとしては日本航空もスカイマークそういう状況に陥った経緯があります。

倒産するとどうなるかと言えば、簡単に言うと、燃料を入れてもらうことができなくなります。

例えば外国から成田空港に飛んできた飛行機があって、その会社が倒産すると、その時点で成田空港の燃料屋さんが燃料を補給してくれなくなりますから、飛び立つことができず、休養で滞在している乗務員もホテルにいられなくなります。

つまり、支払いの信用保証ができないから、サービスを提供してもらえなくなります。

お客様も全く同じで、その会社に支払って航空券を購入していたとしても、その航空会社が飛ばないわけですから、乗ることができません。

例えば、正規運賃を支払っていれば、その航空券でどの航空会社の飛行機でも乗ることができますが、払い込みをした航空会社が倒産してしまえば、支払い不履行になるのが目に見えていますから、たとえ正規運賃の航空券を所持していたとしても、どこの航空会社もその航空券で輸送を引き受けてくれることはしません。

Aという会社の航空券でBという会社に乗ると、B社はA社に切符の精算を求めることになりますが、A社が倒産してしまっていては、支払いを求めることができなくなるから、乗せないのです。

 

航空券は有価証券だという論があるようですが、商法的に考えると有価証券は権利の移転を定義とする考え方があるようで、航空券や乗車券類はサービスの提供を受けるための引換票であるから、権利の行使に当たるため、有価証券ではないと考える人もいるようで、私が学生の頃教わった商法の先生はそう言う論を唱えていらしたことを、今、うろ覚えに思い出しますが、いずれにしても、支払った会社が倒産してしまえば、サービスの提供を受けることができなくなりますから、「無価値」になるということで、有価証券ではなくなってしまいます。

つまり紙切れ同然というわけですが、昨今では紙の航空券はすっかり影をひそめてしまい、E-TKTと呼ばれる電子航空券が主流ですから、つまりは紙切れにすらならないということなのです。

 

ずっと以前の話ですが、スイス航空が倒産した翌朝、私は会社に出勤してメールを開けると、「スイス航空が倒産したので、ついてはスイス航空の航空券を一切受け取ってはならない。」というメッセージが本社から入っていました。

まだインターネットなど普及していない時代でしたが、航空会社ですから比較的早く管理者にはメールが与えられて、本社からの連絡はそのメールで入ってくることが多かったのですが、何しろ時差があるわけで、夜中に寝ている間にヨーロッパの会社が倒産しているのですが、そんなことは朝のNHKのニュースでもやりません。つまり誰も知らないわけですから、そういう切符を持っているお客様が私の会社のカウンターにいらして、私から「実はあなたは乗れません。その切符は紙切れです。」などといわれようものなら、まさに青天の霹靂で、お客様は途方に暮れてしまいます。

他社の航空券で搭乗されるお客様というのは、どの会社にでも乗れる正規運賃のお客様で、ファーストクラスやビジネスクラスの上顧客でありますが、そういうお客様に失礼のないような対応をしなければなりません。

今日の今日、今、これから乗ろうとする飛行機で、ちゃんと切符を買っているにもかかわらず、航空会社の職員から「その切符は紙切れだからもう乗れないよ。」と言われたらどういう思いをするのかと考えると、心が痛みましたが、私の対応したお客様は、「そうか、そんなことがあったのか。わかった。」と言って、クレジットカードでその場で片道切符を買って乗られていきました。でも、そういうことができる人はごくわずかなはずで、普通の人は、どうして良いかわかりませんよね。

特にすでに旅行を開始している人の場合は、行った先から帰れなくなるわけですから、旅行保険に頼るかして、何とか自分でサバイバルしなければならないのではないでしょうか。

 

中にはひどい話もあって、ある航空会社では労使関係が大もめにもめていて、収拾がつかなくなったことから、いったん解雇して別の雇用契約を結ぶために会社を解散してしまうなんてことも過去にはありましたが、今回の復興航空の場合は、連続事故でお客様が減ったことが最大の原因のようですから、私から見たら、お客様はもちろんですが、かわいそうなのは従業員ということになると思います。

 

復興航空は台湾の国内線で何度か乗ったことがありますが、私の乗った機体はその後墜落してしまって、今はもうありません。

そんな状態の会社だとすれば、輸送の責務を全うすることができないということになりますから、存在そのものを否定されても何も言えない、というのが世の常なのかもしれません。

 

今回の復興航空の場合は、すでに航空券を買われているお客様に対しては、会社が誠意的に対応してくれる方針のようですが、現場出身の私としては、何とか早く混乱が収まることを望みたいものです。