私は30代のころから出張が多い仕事でした。
多い時にはなんだかんだで年間60日ぐらい出張していて、そのたびにホテル暮らしでした。
外国のこともあれば日本のこともある。
最初の頃はいろいろなところに泊まれるのを面白がっていましたが、そんな時代はすぐに過ぎ去って、そのうちどこにも繰り出さずに、ホテルの部屋でテレビを見たり本を読んだり、今ならばインターネットで時間をつぶして、早めに寝るのがパターンになりました。
実は今夜も関西の地方都市の駅前のホテルに泊まってこのブログを書いていますが、ホテルの部屋でシャワーを浴びるときにいつも思うことがあるのです。
それは、そよ風が吹いているということです。
カーテンを閉めてシャワーを浴びていると、いつも背中にそよ風を感じるんです。
もちろんバスルームのドアは閉まっています。
エアコンも基本止めています。
にもかかわらず、シャワーを浴びているときに背中をそよ風が通り過ぎて行くんです。
当時、相原コージという漫画家が描く「コージ苑」という漫画が流行っていて、その中で、寒いことが起きると「ヒュ~」と背中を冷たい風が吹いていくというシーンがありましたが、まさしくそんな感じで、背中をヒュ~と風が吹いていく。
まるで誰か後ろにいるみたいなんです。
その度に背筋が寒くなる思い。
誰かいる?
と震え上がるような感じです。
皆さんも知らないホテルの知らない部屋に泊まって、シャワーを浴びているときに背中をヒュ~っと風が吹いて行ったら、たぶん、「この部屋に何かいる。」とか「心霊現象だ。」なんて思うんじゃないでしょうか。
でも、私は、そういうことはもしかしたらあるかもしれないけれど、泊まる先々で同じ現象が起きるのですから、地場に土着した霊的現象ではないはずだと考えて、いったいどういうことなのか解明してみようという気持ちになったのです。
そして、いろいろ試してみたらわかったんです。
その時はちょうどロンドンでフライトプランの研修を受けていた時で、気象現象の講義があったんですが、教官が「tropopause」という話をしてくれました。
地表面や海面で暖められた空気が上昇します。上昇した空気が上空に上ると冷まされて、ある一定の高度に達するとそれ以上上には上がらなくなる。そして今度は下に向かって下りて行く。こういう大気の循環の話をしてくれたのです。
そして、部屋に帰ってシャワーを浴びたら、背中に風が吹いてくるのですから、私はこの狭いバスルームの中で何が起こっているのか、自分で見極めてみようと、シャワーを流しながら、バスタブから出て、全体を監視してみました。
すると、シャワーの水流が狭いバスルームの中の空気に対流を発生させていて、しばらく流していると結構な力の風になる。その風を背中に感じていたということがわかりました。
これがつまりバスルームの中のそよ風の正体だったのです。
別に心霊現象でもなんでもない。
ホテルのバスルームであれば、たいていのところでこういう現象が起きるということがわかって、それ以来私は安心して、ホテルの部屋でシャワーを浴びているわけです。
どんなにそよ風が尻の間から吹いてきても、「フンフン」と鼻歌を歌えるほどです。
そんなある時、いつものように出張先のホテルの部屋でシャワーを浴びていると、いつもとは違った感覚をお尻に感じました。
誰かにお尻をペロンと撫ぜられたんです。
もちろんシングルルームですよ。
私以外部屋の中にだれもいません。
これには驚きました。
ヒェ~ッ! というほどです。
私は恐る恐る後ろを振り向きました。
そうしたら
シャワールームの濡れたカーテンがお尻にペタッと貼り付いていたのでありました。
くわばらくわばら。
でも、たいていのことには科学で解明できる理由があるということですから、皆様どうぞご安心ください。
本日は、バスルームを渡るそよ風のお話でした。
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