職業に対する誇り

子供のころ、蒸気機関車の機関士(運転士)さんやブルートレインの機関士さんを見て、カッコイイと思いました。
きびきびとした動作。安全運行、定時運行、そしてスムーズな運行。
蒸気機関車やブルートレインの機関士さんたちは、後ろのお客様に気を遣いながら連結作業や加速減速操作を行っていて、そういう姿が子供心にカッコイイと思ったわけです。
今のJRや私鉄の運転士さん、車掌さんたちも、年々厳しくなる運転取扱い上の制約の中、きびきびとした動作で、一生懸命乗務している姿は美しいと私は思います。
子供たちが、そういう姿を見て、「大きくなったら運転士になりたい。」と思うとしたら、それは、自分の働く姿が人々に夢を与えているということですから、私は素晴らしいことだと思います。

いすみ鉄道のキハ28の運転席です。
最新型の車両に比べると計器やスイッチ類が多くてなんだか雑然としていますが、よく見ると白い紙に何か書かれています。

レストラン・キハの時は特にスムーズな運転をするように。
私の指示ではありません。
運輸課長が乗務員に出している指示です。
キハ28やキハ52は、最新型の車両に比べると運転が難しいと言われています。
加速や減速がスムーズに行かないと経験者は言うのですが、その難しい加速や減速を、さらにスムーズにという指示。
これを行うのは至難の業のはずです。
でも、今、いすみ鉄道の運転士たちは、このレストラン・キハに乗務するのが誇りなんです。
自社養成の人たちでもこのキハに乗務できるのは僅かの人たち。
運転がうまいとか、そういう技術的なことはもちろんですが、それだけではありません。
記念撮影に笑顔で応じたり、お客様に喜んでいただけるようなことを自ら率先して行うなど、サービスマンとしての人間性も求められるわけですから、選ばれた人は誇りを持って乗務していますし、選ばれない人はさらに精進を積む必要がある。
これがいすみ鉄道のキハ乗務なのです。
いつ廃止になるかわからないようなローカル線ではありますが、働いている人には誇りを持ってもらいたい。
これが、子供のころに蒸気機関車の機関士にあこがれた少年のなれの果ての社長が考えていることなのです。