静岡県の富士市に岳南電車という私鉄が走っています。
東海道線の吉原駅から分岐する距離わずか9.1kmの短路線です。
工業地帯の中を走る印象の路線で、基本1両編成の列車が日中30分に1本走るのんびりとした路線です。
日本最大の経済動脈と言われる東海道ベルト地帯で、人口25万人の富士市にあって、この岳南電車は廃止の危機にありました。
数年前に沿線の工場からの貨物列車が廃止されて、旅客輸送だけではどうにもこうにもならなくなったからです。
ところが、この岳南電車、今、とても面白くなっています。
先日乗りに行きましたところ、こんなパンフレットを見つけました。
スイーツ、ワイン電車です。
わずか9.1㎞、20分ほどで到着してしまう鉄道で、列車の中で飲食をするというのです。
それも、地元のソムリエの方に乗っていただいたり、地元の洋菓子店のコラボした富士ブランドのオリジナル和洋菓子ですよ。
鉄道があれば、いろいろ活性化できて、地域の宣伝になるのではないかと、地元の商工会議所と岳南電車が一緒になって楽しんでいる様子がうかがえます。
なぜなら、鉄道会社だけではこんなことできませんからね。
いすみ鉄道のレストラン列車もそうですが、地元の協力があるからこそできるわけです。
ところで、「スイーツ・ワイン電車」って、どこかで聞いたことありませんか?
そうです。いすみ鉄道と同じです。
その答えは、岳南電車の上原社長さんと私は仲良しだからです。
▲岳南電車の本社にて会議中。
右から富士市商工会議所会員の鷲見さん、中央奥が上原社長さんです。
なんとなく悪がきが3人集まって、悪だくみしているような感じですね。
岳南電車がとてもうらやましいと思うのは、富士山に一番近い鉄道で、実はどの駅からも富士山が良く見えるのです。
そこで、岳南電車は全部の駅に「富士山ビュースポット」というポイントを設置しました。
たったこれだけのことなんですが、この表示を付けたことにより、岳南電車は世界でたった一つ、「全部の駅から富士山が見える鉄道路線」になったのです。
なんだかワクワクしませんか?
そして、今、この岳南電車を行政である富士市がバックアップしています。
その理由はなぜか?
岳南電車が観光資源として使えるということを地元の人たちが気付いたということです。
私が駅でカメラを電車に向けていたら、花壇の手入れをしている84歳のお爺さんが話しかけてきました。
「あんたもそうだけど、最近はよく写真を撮っている人を見かけるよ。この電車のどこが良いんだい?」
「この電車は東京で走っていた車両ですから、東京の人は皆さん懐かしく思いますよ。それに、この路線は全部の駅から富士山が見えますから。」
「一時はねえ、廃線になるかと思ったけど、岳南電車も頑張ってるからねえ。」
そんな会話をしていると、お年寄りたちが数人駅に集まってきて、ちょうどやってきた電車に乗り込んでいきました。
工業地帯で、人口が多い富士市でも、観光がいかに大切かということを考えているようですが、富士山とローカル鉄道という2つの物を組み合わせることで、化学反応が起き始めているんですね。
ちなみに、富士市はあの有名なかぐや姫のお話の伝説が残る場所です。
そしてそのお話は岳南電車沿線の比奈という駅があるところだと言われています。
でも、かぐや姫の話はみんな知っているけど、それが富士市にあるってことは誰も知らない。
だから、とりあえず富士山と岳南電車と、おいしいお茶で話題になって、やってきたお客様に「実は、ここ、かぐや姫伝説の場所なんですよ。」ってPRしています。
そうすることで、観光でいらしたお客様がサプライズするという仕掛けのようです。
さすが商工会議所チーム。
上手ですよねえ。
いすみ鉄道と岳南電車のコラボはまだまだ続きますよ。
▲古い電気機関車も残っているし。
これ、使いませんか?
「ここにはお金が落ちている」岳南電車です。
皆さんもぜひ出かけてみてください。
ものすごい発見がありますよ。
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