昔から「袖すり合うも多生の縁」と言われます。
この多生というのが、実は多少ではなくて多生。
つまり、これだけたくさんの人間がいる中で、通りすがりに袖が触れ合うというのは、輪廻転生、前世からのご縁でありますという仏教の考え方をもとにした言葉です。
人は何度も生まれ変わる。
前世で何らかの関係があった人と、今世でまた近くを通り過ぎているのだろう。
だから、この出会いを大切にしましょうという意味ですね。
これに対して「一期一会」という言葉があります。
これは千利休の茶道から生まれた言葉のようですが、「あなたとこうして出会った時間は二度とは戻ってこない貴重な時間であるから、せいぜいこの出会いを大切にしましょう。」という意味のようです。
どちらにしても、知らない人と出会うということは貴重な体験であり、何かのご縁があってこそのことだと思いますし、ならばなおさら大切にしなければならないのではないかと思います。
私のような仕事をしていると、いろいろな方々に出会うチャンスがありますが、この間まで知らなかった人と、ふとしたことで出会い、中には懇意になっていく人もいますから、私は毎日ワクワクして仕事をしていますが、今週はこんな出会いがありました。
▲石川県議連の皆様がいすみ鉄道を視察にお見えになられました。
北陸新幹線が開業したばかりですが、「こういう人気は長くは続かない。しっかりと戦略を立てなければならないので、いすみ鉄道に勉強に来ました。」と恐縮するようなお言葉をいただきました。
実は、石川県議連の皆様方は、昨年11月1日に、石川県白山市で行われた地域交通に関するパネルディスカッションに私が呼ばれて参加させていただことがきっかけで、今回、実際にいすみ鉄道にいらしていただいたというわけでございます。何名かの皆様には昨年お会いしておりまして、懐かしいお顔を再度拝見させていただき嬉しく思いました。
▲昨年11月に白山市で行われたフォーラムのパンフレットです。
この時も地元の皆様方は「ポスト新幹線」をお考えになられていたのが印象に残っています。
こちらは長野県伊那市の市議の皆様方の視察。
飯田線というローカル線が走る伊那市の市議の皆様方が、いすみ鉄道の取り組みを勉強されにいらっしゃいました。
勉強なんて、うちでお教えするものなど何もありませんよと申し上げましたが、皆様たいへん熱心で、質疑応答が止まらなくなり、予定の1時間を大幅にオーバーし、お昼ご飯の時間も削って2時間近く滞在されました。
実は、この伊那市には私は今年の1月22日にシンポジウムにお邪魔していて、講演とパネルディスカッションに参加させていただきましたが、その時の私の話を聞いて、市議の皆様方が視察にいらしていただいたのです。
とても不思議なことなのですが、私が地域活性化やローカル線の使い方について講演の依頼を受けて出かけると、このように地元の皆様方が、必ずと言ってよいほど、いすみ鉄道に興味を持っていただいて、地域のリーダーの皆様方が実際にいらしていただくのです。
だから、なんだか、「袖すり合うも多生の縁」を感じる次第でございます。
こちらはNTT東日本千葉支店の鳥越支店長様。
実は今、NTTの光フレッツを使ったローカル線の活性化プロジェクトをNTTさんと進めているのですが、幕張のビルにお邪魔してご挨拶させていただいた時の1枚です。
鳥越支店長さんは鹿児島県のご出身で、お父様は鶴が飛来することで有名な出水から船で渡った長島の出だということで、「長島と言えば、私が大好きな芋焼酎、さつま島美人のところですね。」と申し上げましたところ、初対面にもかかわらず意気投合していただきました。
本当に不思議なご縁を感じますねえ。
で、こちらはタイから「a day」という雑誌の取材でやってきたソンクロさん(男性)とバームさん(女性)。
いすみ鉄道の田中さんが、「社長、大変です。通訳なしで取材に来ました。どうしますか?」というので、「困ったなあ、タイ語できないし。」と一瞬頭の中が真っ白になりましたが、二人ともふつうに英語を話してくれましたので、意気投合して2時間以上インタビューを受けてしまいました。
実は、ソンクロさんはタイでは有名な鉄道ジャーナリストらしく、JR九州の観光列車などのガイドブックをすでに出版されている方ですから、日本の鉄道にはとても詳しくて、そんな方がどうしていすみ鉄道に取材に来たのかと聞いたところ、古いディーゼルカーを大した改造もせずにそのまま使っているのに、どうして観光客が来るのか、不思議だったからということ。
文化というのは、文明が発達しきったところで理解されるものです。
経済発展が続いている段階では文化的なものはなかなか生まれません。
新しいものを次から次へ欲しがっている地域や国の人たちには古い物の良さがわかりません。
日本の、特に東京など都市部に住んでいる人たちは、一通り物質では満たされていますから、そういう段階になったところで初めて古い物が理解されるのです。
いすみ鉄道のキハは文化財的な車両ですから、私はこのことを理解していただける都会の方々へ向けてメッセージを発信していますし、そういう文化財的な車両を改造するようなことはしないのです。
とまあ、このぐらいのことは6年7年ブランクがあっても英語でしっかりと伝えられますよ。
と、ここまで話したところで、女性のバームさんが、「社長さん、あなたの夢は何ですか?」と質問されました。
まさか、こんなかわいい女性の前で、「私の夢は南の海でクルーザーに乗って美女を侍らせてうまい酒を飲むこと。」などとは言えませんから、「私の仕事は皆様の夢をかなえることです。この昭和のディーゼルカーを走らせるように、皆様が持っている夢を現実にすることが私の仕事です。だから、皆様方が夢をかなえられて、現実になって走っている国鉄の車両を見て幸せそうな顔をするところを見てみたい。それが私の夢です。」とまあ、こんなキザなセリフを述べてしまいました。
今週はいつになく、いろいろな方にお会いすることができましたが、これも多生のご縁なんでしょうね、きっと。
さあ、明日はどんなことがありますでしょうか。
来週も全力で頑張りましょう。
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