FACEBOOKの友達の森田さんという方のブログがとても面白いのでご紹介いたします。
「ネコメシCEOのブログ」(航空会社のサイトはどうして乗り方を説明していないのか?)
まあお読みになってみてください。
目からうろこの新鮮さです。
私が初めて飛行機に乗ったのは昭和50年4月。中学2年生から3年生になるときの春休みで14歳でした。
その年、日本で最後に残った蒸気機関車が消えるとあって、私はどうしても室蘭本線に行きたかったのですが、中学3年生と言えば悲しい受験生。特に私たちは偏差値世代ですから、同級生は皆講習会に通っているわけで、とてもじゃないけど北海道に行きたいなどと言える状況ではありませんでした。
だって、北海道旅行へ行こうと思へば往路に2日、復路に2日かかっていた時代ですから、現地滞在1日としたって最低5日間はかかります。春休みとはいえ、5日間も家を空けることなどとても無理だったのが受験生の悲しいところでした。
でも、私は何とか行きたかったので、一計を案じ、飛行機で日帰りしたわけです。
なぜ日帰りかというと、その理由は「親に内緒」で行くからで、それまでの電車の写真を撮りに朝早く出かけたり、夜遅く帰ってきたりということはありましたので、講習会が休みの1日を使って、親に内緒で、さりげなく北海道へ行こうというのが14歳の私の魂胆でした。
そのためには、飛行機がMUSTだったのです。
(この時の話は以前にもお話ししたと思いますので、ここでは先に進みます。)
その頃の私は、飛行機にはそれほど興味はなかったのですが、ちょうど田宮次郎主演の「白い滑走路」というテレビドラマをやっていて、学校に田宮次郎演じる杉山キャプテンになりきっている友達がいました。彼は飛行機が大好きで、飛行機のことなら何でも分かる人でしたので、私は、飛行機というのはどうやって乗るのかをいろいろ聞いたのです。
彼の口からは次のような言葉が発せられました。
・スカイメイトという空席待ち専用の安い航空券がある。それを利用すれば半額で乗ることができる。
・空席待ちというのは予約ができないので、締切時刻までチェックインカウンターで待たされる。
・出発の20分前になるとチェックインが終了するので、その時に予約を持っていても空港に来なかった人がいたら、その人の席をもらって乗ることができる。
・そうしたら搭乗券をもらえるので、その搭乗券を持って搭乗口へ行けば、飛行機に乗せてもらえる。
・スカイメイトになるには事前に航空会社の事務所に出かけて会員証を作らなければならない。
それを聞いて、私の頭の中は混乱しました。
正直、彼が何を言っているのか、確かに日本語だけど、何を言っているのかがわからないのです。
・空席待ち? 席が取れないんなら自由席じゃないの?
・チェックイン? 何それ? 予約した人が来ない? 乗り遅れ?
・航空券と搭乗券? どこが違うの?
・搭乗口? 改札口のこと? じゃあ、チェックインカウンターは駅の切符売り場と同じ?
・航空会社の事務所? 空港じゃないところに事務所があるの?
まあ、こんな感じで頭の中がグルグル状態。
まして、今のようにネットですぐに調べることができませんから、実に理解不能だったわけです。
教えてくれた彼が、「こいつ、かわいそうだなあ。」と私を見ていたのでした。
そして、彼は言うのです。
「お出かけダイヤルに毎日電話をしろ」と。
お出かけダイヤルというのは、当時リアルタイムで情報をゲットできる唯一の手段であったのが「電話」ですが、ある番号にかけると、テープで飛行機の空席情報を教えてくれるというもので、日本航空、全日空ともにそれぞれ番号があるわけです。
何番だったかは忘れましたが、局番が747で、当時ボーイング747が最新鋭機でしたから、「航空会社だから747の局番なのだろうか。」などと思ったことは記憶しています。
さて、このお出かけダイヤルに毎日電話をかける。
「日本航空、お出かけダイヤルでございます。3月10日、木曜日の空席情報をご案内いたします。札幌行は始発7時(ななじ)10分、8時10分、11時10分発に空席がございます。大阪行は・・・・・」
とまあこのような感じで音声が空席情報を教えてくれるわけです。
私たちの世代は「りかちゃん電話」や「GIジョー電話」に慣れ親しんでいましたから、このシステムは抵抗なく受け入れることができました。そして、毎日同じように電話をかけていると、ある法則に気付いたのです。
それはどういう法則かというと、「札幌行の便は、朝7時の始発便は毎日空席がある。」ということ。そして私は、午前7時の便なら絶対に空席待ちで乗れると判断したのです。
そこでもう一度、おさらいの意味を込めて彼に相談しました。
7時の便に乗ろうと思うのだが、何時に羽田に着いたらよいのか。
すると彼はどんなに遅くても30分前までには着いてなければというので、家を5時に出て板橋駅から赤羽線の始発に乗ったのでした。
彼が付け加えた言葉は、「ターミナルを間違えるなよ。国際線じゃなくて国内線だよ。日本航空と全日空じゃあ方角が違うからな」
これもまた不安材料でしたが、浜松町からモノレールの始発に乗って、6時25分に羽田空港に到着して、7時の飛行機はガラガラでしたので、チェックインカウンターで都内の営業所で作ってもらった会員証を見せてスカイメイト航空券を発券してもらい、その航空券を搭乗券に代えて、それを持って搭乗口へ行って、お姉さんにもぎってもらい、バスでスポットへ送られて、タラップで飛行機に乗ったのでした。
バスが飛行機の下について、タラップを上がる段になっても飛行機の機体にはサボ(行先表示板)がありませんから、私としては実に不安でしたが、とにかく離陸して1時間15分後には千歳空港に到着しました。
これが私の14の春でしたが、この時、
・航空券というのは有効期限はあるものの、便も座席も指定されていない金券のようなもので、
・予約を入れるというのは、その航空券に日付と便名を入れてもらうことで、
・チェックインというのは、日付と便名が入った航空券に座席を指定してもらうことで、
・座席を指定してもらった時にもらえるのが搭乗券で、
・搭乗券をもらって初めて搭乗口へ向かうことができて、飛行機に乗ることができる。
・一旦飛行機に乗ってしまえば、「乗車券、特急券を拝見」もないし、目的地へ着いても出口で切符を見せろとは言われない。まして、乗ってしまえば切符をなくしても「もう一度買え」などとは言われない。
・全体的に見て、国鉄に比べると航空会社の方が職員は皆ニコニコしていて、丁寧で優しい。
などということを、身を持って会得したのでありました。
さて、話は元に戻りますが、今日ご紹介した森田さんのブログを読んで、私は実にもっともだと思ったわけですが、同時に昔聞いたあることを思い出しました。
それは友人のお袋さんの話ですが、田舎から出てきて上野駅に着いたそのお袋さんは、東京駅へ行くのに必ず山手線に乗る。京浜東北線には絶対に乗らないそうで、その理由は「京浜東北線などに乗ったらどこへ連れて行かれるかわからない。山手線なら反対側に乗っても、乗り過ごしても、一周回って戻ってくるから、山手線じゃなければダメ。」ということ。
私は東京育ちですから、小学校1年生の時から電車を乗りこなしていますが、東京の電車の複雑な運行形態は、東京に不慣れな人から見たら、不安で不安でしょうがないんだろうなあ、と思います。
飛行機の乗り方がわからないとか、ターミナルって何? 札幌行って書いてあるけど、新千歳へ行くのであって、札幌じゃないでしょう、とまあ、こういうことを「航空会社は何て不親切だ」という人たちは、田舎から出てきて東京の電車が理解できないというのと同じことなんだろうなあと思います。
VHSのビデオデッキを買ってきて「接続がわからない」と言っていたのが20年前だとすると、今ならさしずめ「パソコンを買ってきてセットアップがわからない」ということになるのでしょうが、そういう人は昔なら町の電気屋さんで少々高いけどビデオデッキを購入すれば、持ってきて、接続してくれて、「ハイどうぞ」だったのですが、世の中が変わると、人が係わるシステムがなくなっていますから、パソコン量販店で「家まで来て接続してください。」と言ってもやってくれるところは少ないでしょう。
海外旅行だって、昔はどうやって行ったらよいかわからない人は、お金は多少かかるけど、添乗員さんに案内してもらうスタイルで旅行してたのが、今では格安航空券を買って自分でさっさと行ってしまう時代です。
航空会社のサイトが初心者にはよくわからないというのも同じことで、ここまで航空旅行が一般化すると、航空券も価格勝負ですからいちいちお客様のお世話を焼いていることができないわけで、「わからなければ聞けばいいじゃない。」と言ったところで、下手すれば聞く相手もいないというのが現状ですね。
で、私は思ったんです。
こういう不安というか、不満というのは、基本的には10代20代の若い人たちにはあまりいないんです。
彼らは、14歳の私がそうだったように、持ち前の柔軟性とチャレンジ精神で、世の中のシステムやしきたりのようなものを自然と身に着けて行くのです。小学生が取説も読まないのにパソコンを使えるようになるのと同じことで、彼らは実に柔軟に使いこなしていく。
これに対して、ある程度大人になってしまった人にとっては、新しいシステムというのが時としてとても高いハードルになる。
私は、20代前半で仕事上の必要性に駆られてまずワープロを覚え、その後、航空会社でコンピューターで仕事を覚え、使いこなせるようになった時期にパソコンというものが徐々に普及してきたので、すんなりとパソコンを受け入れることができましたので、とてもラッキーだったと思いますが、そうじゃなくて40代50代でパソコンを覚えなければならない人にとって見たら、サポートを受けたければネットでアクセスしなければならないし、電話対応がないなんて実に不親切でけしからんという話になるのでしょう。
そう考えると、人間というのはできるだけ早い段階で新しいことにチャレンジするべきだというのが第一。そして、年を取ってから新しいことを覚えるのであれば、できるだけ早い段階で、いろいろな人に聞いて教えてもらって、自分のものにしてしまわないと、あと後になってみると、「今さら人には聞けないこと」、「もう教えてほしいとは言えないこと。」というのが身の回りにどんどん増えていくということなのです。
田舎に住んでいて、東京の電車がわからないという人はたくさんいると思います。
でも、進学や就職で、若いうちに東京へ出てきた人たちは、あっという間に電車を使いこなすようになります。
それをしないでいて、40、50になってしまうと、上野から東京まで京浜東北線には絶対に乗らないということになるわけで、それをそのままにしておくと、習得した若い人たちに後からどんどん追いぬかれて、「絶滅危惧種」になっていくということなのです。
ブログを書かれた森田さんはCEOですから、きっとそういうところに取り残されてしまった人たちを相手にするビジネスチャンスがあることが見えているのだと思います。
50代半ばの私としては、絶滅危惧種にならないように、一生懸命「知らないこと」にチャレンジしていくしかないのですが、幸いなことにノー天気な私の性格上、知らないことがいっぱい出てくると、なんだかワクワクしてしまうので、これからもあちらこちらで躓いて、起き上がって、また躓いての人生なんだろうなと思うのでございます。
森田さん、面白いお話ありがとうございました。
続編もありますので、皆さんお読みになってFACEBOOKで感想を教えてください。
中学生の私が「解読」した航空時刻表です。
興味のある方はどうぞ。
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