東京は一つ、田舎は無数

新幹線が金沢まで伸びるということで、それと引き換えに消える列車も合わせて世の中フィーバーしていますね。
これは鉄道会社が主催する国を挙げてのキャンペーンのような気がしますが、いかがなものでしょうか。
何も喜びに沸いている地元の皆様方の気持ちに水を差すわけではありませんが、新幹線待望論というのは基本的には地方のことであって、首都圏の人にしてみたら、金沢まで新幹線が伸びることにそれほど大きな喜びも感じなければ、新幹線ができたらから便利になるというわけでもありません。
どうしてかというと、例えば新幹線が延伸開業する地域の人にしてみたら、東京に行くのが便利になることは喜ばしいことだと思いますが、それは、その地域の人が東京へ行くというのは、東京に用があるからであって、東京に用があるというのは、銀座であったり霞が関であったり、新宿、渋谷、池袋、あとは観光でいえば浅草にスカイツリー、そしてディズニーランドぐらいでしょうか。
つまり、地方の人が東京に来る場合、だいたい都内23区の中でも中心部に用があることが多く、そういう人は、上野や東京で降りればすぐ目の前が目的地ですから、新幹線ができればとても便利になるわけです。
ところが、逆の場合はどうでしょうか。
逆とは東京の人が富山や金沢に行く場合です。
東京の人は、東京と言ってもたいていは神奈川や埼玉、千葉、茨城、または東京都下に住んでいます。そういう人は東京駅へ出るまでも一苦労ですが、地域によってはバスで羽田空港に出た方がはるかに便利なところも多くあります。
私が育った東京の城北地区や埼玉都民と言われる方々は、上野や大宮にアクセスしやすいですから、富山や金沢へは確かに便利になるとは思いますが、東京南部や多摩地区、神奈川県、千葉県湾岸地域などの住民は、何も新幹線ができたからと言って、東京駅が近くならない限り、自分の生活に便利になるとも思えないし、飛行機で1時間という時間は、空港へのアクセスや搭乗手続きのための待ち時間を考えなければ、いくら新幹線が頑張っても勝ち目はないわけです。
昨日もお話ししましたが、私のように、東京駅へ出るよりも羽田空港へ出る方が便利な人は首都圏には千数百万人もいるわけですから、新幹線は単なるチョイスの一つなわけです。
ここが、地方から東京へ来る場合の便利さと東京から地方へ行く場合の便利さの違いです。
金沢も富山も空港が市内中心部から20~30分程度と比較的近いところにありますから、自宅から羽田空港にアクセスしやすいところの方は、今後も飛行機が便利だということになると思います。
それよりも私が心配しているのは、新幹線ができて飛行機の利用者が減ると、石川県の場合はただでさえ2つの空港を維持するのに必死になっているのに、どうするんだろうとか、空港から市内までのシャトルバスのお客さんが減れば、その会社が運行している地方鉄道が生き残れなくなるんじゃないだろうかということで、新幹線というのは決してバラ色ではないし、ポスト新幹線開業のこともしっかり視野に入れておかなければならないということです。
これは何も来月開業する新幹線の沿線だけじゃなくて、だいたい地方の人というのは皆さん東京を見ています。東京は1つしかなくて、全国の皆さんは東京を向いている。
でも、東京から見たら地方というのは1つじゃなくて、四方八方に無数にあるのです。
だから、例えば北海道や九州の人が東京を意識しているのと同じように東京の人は北海道や九州を意識しているかというと絶対にそんなことはなくて、四方八方に広がるその先の一つでしかないわけです。
そして、その東京の人に、例えば観光で来てもらおうと思ったら、それぞれの地域で、できることをいろいろ一生懸命やっているかもしれませんが、東京から見たら、どれも似たようなものにしか見えませんよ、というのも現実なんですね。
とは言え、新幹線ができれば、当面の間はまず新幹線に軍配が上がるでしょう。
そうなれば航空会社は飛行機の便数を減らします。羽田空港の発着枠が限られているわけですから、当然のようにそうなるでしょう。
その時、金沢や富山の皆様方はどうするのでしょうか。
そういうことを今から考えておかないと、いけないんじゃないかなあと、私は考えますが、いかがでしょうか。
東北でもそうですが、新幹線の各駅に無料や格安で利用できる駐車場を設置して、一生懸命新幹線の利用客の利便性を高めているところがあります。でも、それは地元の利用者の利便性であって、東京からの新幹線利用を促進するものではありません。今はまだそれでよいかもしれませんが、大量に存在する昭和21年から23年ごろに生まれた年代の国民が、あと10年もすれば旅行世代じゃなくなりますから、私は東京駅にも気軽に利用できるリーズナブルな料金の駐車場ぐらいないといかがなものでしょうか、と思うのであります。
なぜならば、コンペティターである飛行場には駐車場が完備されているのですからね。
もっとも、いすみ鉄道で走っているキハ52のふるさとである糸魚川のような位置にあるところは、もともと飛行機とは対抗してませんでしたから、間違いなく便利になるでしょう。
市長さんが頑張って素晴らしい設備を完成させてくれたようですから、新幹線が開通したら、私もすぐに大糸線に乗りに行こうと思っています。