資金作り

以前に私の著書の中でも書いたことがありますが、私は小学校1年生の時にお金を稼ぐことを知りました。
近所の悪ガキに教わって、公園に落ちているコーラやジュースの空き瓶を拾い集めて酒屋さんに持っていくと、コーラやジュースの瓶は1本10円、ビール瓶は1本5円で引き取ってくれることを覚えたのです。
当時の私は電車が大好きで、学校から帰ると東上線の下板橋や赤羽線(現埼京線)の板橋駅へ行って、「乗りたいなあ」と思って指をくわえて電車を見ていたのですが、公園で瓶を拾って酒屋さんへ持っていくと10円が手に入るので、1日10円だったお小遣いが倍になるわけです。
当時電車の初乗り運賃が子供10円でしたから、10円区間を往復できるわけで、東上線なら下板橋から池袋へ行って、池袋の地下街から丸ノ内線のホームを覗き込んで、電車の姿は見えなくても下から吹いてくる地下鉄の風の独特の臭いを嗅いで帰ってくるなんてことが遊びになりました。
帰りの池袋駅で下板橋までの切符を買うと、「常盤台まで」と書かれています。小学校1年生の私は、池袋から下板橋へ行くのも常盤台まで行くのも同じ金額だと知りました。
そこで下板橋駅に帰って改札口で運賃表を見上げると、下板橋からは10円で上板橋まで行かれることがわかりました。
今度は大山へ行くと、初乗り運賃で東武練馬まで行かれます。
小学校1年生でまだ時刻表など読み始める前でしたが、なんとなく、距離制運賃を学習したことを今でもはっきりと覚えています。
そのうち、片道運賃だけ持って、行った先で瓶を拾って帰りの切符代を現地で稼ぐなんていう冒険を初めて、志木や鶴瀬まで行きましたが、ある時、西武線の豊島園駅で降りたところ、駅前は遊園地の入口で空き瓶など落ちているはずもなく、帰りの電車賃を手に入れることができずに、線路伝いに歩いて戻ってくるという恐怖感を味わって、この遊びを終えることになったわけですが、今思い出しても、ずいぶん恐ろしい遊びをしていたんだということがわかります。
さて、そんな私が、今、集めているのはアルミ缶。
数年前に家内が小学校の役員をしていて、学校でアルミ缶を集めていることを知り、学校の役員さんたちが町内会のおじさんたちに声をかけて、我が家は近隣の人たちが飲み終わったビールの空き缶の集積場になっているのです。
今日は久しぶりに家にいて、良い天気でしたので、貯まったアルミ缶を車に積んで、家内と一緒に小学校に持っていきました。


それにしても地域のおじさんたちは何と良くビールを飲むことでしょう。
学校ではこれで原資を作り、観劇などの学校行事の足しにするそうで、飲み終わったビールの空き缶が、資源になるのですから、私にはぴったりの仕事だと思いませんか。
50年近く前に空き瓶を拾って資金を作って電車遊びをしていた悪ガキの成れの果てが、少しは子供たちの未来に貢献できていれば幸いなのです。