私のコントリビューションについて

いすみ鉄道がこれだけ地域や千葉県に貢献するようになったというのに、私のコントリビューションに対する評価が低いと数日前のブログで申し上げました。
そういうことを言うと、「結局はお金の話ですか?」と短絡的にしか物事を考えられない人がいるものですから、誤解の無いようにはっきりさせた方が良いと思います。
私はいすみ鉄道から報酬としてのお金をこれ以上もらおうとは思っていませんし、第一、払う金などないのは私が一番よく知っているわけです。
お金だったら、別なところで稼いで、それをいすみ鉄道にブチ込んだ方が早いし、事実、過去4年間というもの、なんだかんだ言って相当な私財を投入してきましたので、我が家ではカミさんから、「いい加減にしたらどう?」と言われている状況です。
私が言いたいのは、そういう報酬としてのお金の話じゃなくて、もっと大きな話です。
私は公募社長です。
公募社長というのは、火付け役というか、きっかけを作る人間というか、とにかく、流れを変えるのが仕事だと思っています。
今までやり方で結果が出ていないのであれば、別の方法をやらないと、別の結果は出ませんよ。
というのが、公募社長としての私のポリシーです。
ひとことで簡単に言えば、いすみ鉄道というローカル線は4年前までは「湿った薪」でした。
薪というのは火をつけるためのものですから、湿っていては役に立ちません。
ふつうの人なら、こんな薪は役に立たないから捨ててしまおう!
そうなります。
事実、いすみ鉄道は地域のお荷物で、湿った薪状態。
こんなローカル線なんて、何の役にも立たないから捨ててしまおう!
そう地元が思っていたところへ、「まあ、待ちなさい。捨てる前にまだやることがあるでしょう。」と私がやってきたわけです。
そして、わずか2~3年でその湿った薪であるいすみ鉄道に見事に火がついて、赤々と燃え始めたわけです。
これが私のコントリビューションです。
誰も火をつけることができなかった湿った薪。
おそらく日本中にそういう湿った薪がたくさんあって、誰もがお荷物に思っていたところへ、私が火をつけたもんだから日本中が大騒ぎになった。
それが、今、いすみ鉄道がマスコミであちらこちらで取り上げられているという状況です。
そして、「何だ、ああやってやれば湿った薪にも火がつくんだ。」と日本中の人たちが気づいて、各地で同じことをやり始めている。
これが私が言う「私のコントリビューション」です。
つまり、私は公募社長として立派に責務を果たしたし、おそらく120%、150%の仕事をしているわけです。
さて、私は今まで誰も火をつけることができなかったローカル線という湿った薪に火をつけたわけですが、私が問題としているのは、せっかくつけた火に、誰も新しい薪を追加で投入してくれないということです。
いすみ鉄道はわずか2~3年で観光鉄道として日本中にその名をとどろかせたわけです。
今や観光客がたくさん来るようになって、地域にも貢献するようになってきた。
薪に火がついて赤々と燃えている状況です。
このまま行けば、房総半島の東の部分が活気づいて、観光地として定着するようになる。かつての海水浴時代はもう戻ってこないけれど、別の種類の観光地となることができるわけです。
だから、ここで、今やらなければならないのは新しい薪を見つけてきて、どんどんくべること。
せっかくついた火を消さないように、火を燃やし続けられるように、どんどん薪を探してきてくべなければならないのに、誰も新しい薪を持ってこようとしないのです。
せっかく地域が観光地として注目を集め、脱皮できるかどうか、一番大切な時期に差し掛かっている。
そういう時は、追加で薪を入れて、火を絶やさないようにするのはもちろんだけど、もっと大きくしていかなければならないのです。
でも、そんな話は一つもない。
それどころか、いすみ鉄道が利益を出したら、線路の路盤維持のために市町が出しているお金をどうやって削ろうかという算段をしている声が聞こえてくる。
路盤の維持管理は安全性の問題ですから、しっかりお金を出して継続していかなければならない。
もし事故が起こったら、「家族を返してくれ!」と何年も言われることになるのは、航空会社出身の私は嫌というほど知っている。
だからきちんと路盤維持をしながら安全性の確保を怠らないのはもちろん、それとは別に、観光資源としてのローカル線を確実なものにするために、新しい薪を追加しなければならないのは、民間企業の人ならだれでも理解できることなのに、一切そういう話は出てこないわけです。
それどころか、安全のための路盤維持費用まで、どうやったら削れるかを考え始めているわけです。
お金を節約をして得をするのは私じゃないけど、事故が起きた時、「家族を返してくれ!」と詰め寄られ、責任を追及されるのは私なわけですから、就任から丸4年を迎えるにあたり、「なるほど、これが第3セクターの無責任というやつか。」と痛切に感じているわけです。
つまり、湿った薪にやっと火をつけた私に向かって、
「おまえ、薪を大事にしろよ。あんまりぼうぼう燃やさないで、節約するんだぞ。」
というような感じなわけですから、私のコントリビューションに対する評価が全くされてませんね。
と、こうなるわけです。
2010年8月にいすみ鉄道が存続してからもうじき丸3年です。
ビジネスというのは3年が1サイクルです。
ということは、この3年の間に出た結果に基づいて、次の3年に向かって新しい策を打ち出さなければならない時期なわけです。
ムーミン列車と昭和のキハで良い結果が出ているのだから、その路線にもっと力を入れなければならない。でも、そういうことを言う気にもならない気配が漂っている。
「お前、税金をなんだと思っているのか?」と。
今のまま何の策も打たない状態で行ったら、今期、平成25年度は対前年比マイナスになり、もしかしたら来年は赤字に転落するかもしれません。
ムーミン列車も、キハも3年も経てばテコ入れが必要で、そのためにはお金がかかるわけです。
でも、観光資源であるということは、地域にお客様を呼んでくるツールであり看板であるわけですから、しっかり育てていかなければなりません。
人間も動物も、植物だって、大きくするには栄養をやらなければならないのは小学生だってわかるわけですが、疲弊が進んでいる地域では、長年のデフレの弊害として、必要な栄養まで「税金の無駄使い」と判断して、栄養を与えないのが「美徳」だと思ってしまっていることも無きにしも非ず。
生きたお金の使い方すら忘れてしまっているのかもしれません。
いすみ鉄道は、今のままで行くと、湿った薪に私がせっかく火をつけたのに、追加の薪を誰も入れてくれないものだから、そのうち薪が燃え尽きて、火が消えて、おしまいになる。
その時に皆はこう言うのです。
「あの社長、頑張ったけど、結局はダメだったねえ。」
私のコントリビューションに対する評価はそうじゃないでしょう。
ということを私は言っているわけであります。
そんな私にわずかな希望の光が。
いすみ鉄道の会長である大多喜町の飯島町長さんが、「今のうちに何か別のビジネスを始めなければだめだぞ。そして次につないでいくんだぞ。」と、私の顔を見るたびにこうおっしゃってくれています。
町長さんはもちろん公人ですが、自分で会社を経営する民間人ですし、大多喜町の経営者でもありますから、そういうことがよくわかっているわけです。
だから、私は、さらに沿線に人が来るような仕掛けをしながら、いすみ市をそうしたように、大多喜町も全国区にする。
そのために新しいビジネスを考えているわけなのです。
この夏休みに向けて、新しい薪は用意してくれないけれど、無ければ無いなりに前進していかなければならない。
それが、経営者なのだ、と自分自身を奮い立たせて、覚悟を決めているわけです。
「おら、東京さ行くだ!」
これが今期の目標です。